探偵さんの日常
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わがガルグループのBOSSの体験談を探偵ファイルより抜粋です。
「潜入」といえば、スパイの中でもそれなりの経験、見識を求められる難しい作業で ある。今は、スパイ気取りで社内の情報を収集し、それを2ちゃんねるなどに書き込 む「プチスパイ」もいるようだが、これはただの愉快犯。いろんな意味で、自分で自 分の首を絞めているだけなのがわかっていないだけである。
本物であれば、情報の入りと出の処理をネットで行うようなことはしない。もし、ス パイの自覚があって、情報を表に出すような奴は間違いなく3流スパイである。
山本氏。本名はもちろん出せないため、そう記しておこう。私が山本氏と知り合った のはいつになるだろうか。そう、某政治家の御庭番として活動をはじめた駆け出しの 頃、この人を知った。もう20年ほど前になる。
「○○省から来ました」
山本氏の最初の挨拶はこうだった。
当時、ある政策を実現させるためのプロジェクトに参加して、関係者を密かに監視す る活動を命じられた私は、プロジェクトの調整役としてその場にいた。調整役といっ ても、実態は使い走り。毎日雑用をやらされる中で、不審者や他のスパイがいないか 監視報告するのが、本来の任務である。
プロジェクトは大きな妨害はなく、終了した。ただ、懇意の政治家に情報を流す官僚 や、政策反対派のスパイがいるにはいたのだが、それも途中で発見し、無事始末する ことができた。
プロジェクトも役目を終えて解散を迎える頃、山本氏から呼び出しを受け、個室に赴 いた。
「所長が(政治家の○○先生のこと)が「よくやった」とおっしゃってましたよ」
いきなり切り出されて驚いた。実は、今回のプロジェクトには私だけではなく、山本 氏もスパイとして潜入していたのである。最後まで山本氏がスパイであることに気が つかない、という一生の不覚を覚えたが、駆け出しがどう動くかを監視する、という のはスパイを使うほうにしてみれば当たり前で、この時ばかりは自分の甘さをつくづ く感じたものである。
続けて山本氏は 「今後は、こういうこと(監視をつける)はないから。君ならば今後は一人で大丈夫 だろう。今後もっと力をつけてください(次からは一人でやらせるが、もっと努力し ろ)」
言葉を選んで話すあたりはプロである。もし他人に聞かれていても真意はわからな い。いずれにしろ、私のスパイ人生はここから幕を開けた。
それからしばらく、スパイとしての任務をこなしたが、日々の忙しさによって肉体も 精神も消耗し、山本氏のことなどすっかり忘れていたある日、○○先生から
「山本がよろしくといっていたぞ。」
と言われた。そのときは何のことかわからなかったが、その後の先生の話から察する に、山本氏はどうやら「スパイ」を廃業したようだった。○○省に所属しながらのス パイ活動は、先生の後ろ盾があったとはいえ相当大変な作業だったと思われる。スパ イに休日などはない。任務がないときは常に訓練、情報収集に努めなくてはならない のだ。
私は、政治活動や国家活動を行ううえで、スパイは必ずしも良いやり方だとは思って いないが、歴史の裏側には、このように滅私奉公で活動する人たちがいるのを忘れて はならない。 後でわかったことだが、山本氏は各国の情報部も一目置く、超一流スパイであったら しい。3カ国語を操り、頭脳明晰で柔剣道、逮捕術、射撃などのプロだった、とのこ と。山本氏は今はどこにいるのかわからないが、今日も世界のどこかで、活躍してい ることを祈る。
実は、今、スパイを1人、育成している。ただいまテスト潜入中。 私は、うちの社員が誰も知らない「スパイ」を数名、抱えているが、ただひとつ悩み がある。それは、一流スパイの育成は非常に難しく、なかなか有能な人材がいないと いうことだ。 もし上記に挙げるような才能があり、スパイになりたい人がいらっしゃいましたら、 そうっと応募してください(嘘)
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