断罪の時間 〜Dance!な日常〜

2018年11月16日(金) 実録!世界の舞台裏 最終話

本番のベルが鳴る。
いよいよ本番の時間が来た。
一幕の準備は完璧だ。
しかし、リハーサルは全部削られていた…
統括バレエマスターによれば、
すべて重要なシーンの時間に取られたらしい。
従って、、わたしたちは、なんと一発勝負だw
エキストラとはいえ、ありえない。。

 俺たち どんだけ どうでもいいんだ―

とはいえ間違いなど決して起こせない。
なにしろ世界のバレエ団だぞ!!
それこそ失敗など「絶対に」ありえない。
不思議な話だが、どうでもいいような役でも
本番の重みは同じだ。
プレッシャーはかかる。
リハーサルさえやっていないのだ。
緊張しないわけがないw
これは、客席には決して届かないだろう。
だからこそ、文章にしよう☆
これこそが、大冒険の話そのものです 笑笑

 たとえどうでもよくても
 舞台に立つ以上 どんな舞台も同じ

わたしたちには、当日の
団員バーレッスン見学の許可が下りていた。
世界で活躍する団員たちのレッスンを眼前で見た。
むしろレッスンの方が貴重だ。
目の前で見れる機会なんて未来永劫ない。
しかし本番直前だからだろうか
バーレッスンはほとんど「流す」だけだった
目に見えるテンションをまったく感じない
わたしにはそう「見えた」だけかもしれないが
気迫がない
それだけ本番が「当たり前」なんだろうか
テンションがなくても確かにフツーに凄い。
そのフツーが既に凄いのだ。
でも、本番はこれじゃないのが見たいよな
自分の本意はこれだろうな
いつだってこれだ
湖畔のリハーサルも見ることができた
場当たりとキッカケの最終確認らしい
これが… 始まった瞬間に鳥肌がたった
白鳥群舞、、白鳥が一斉に並んだ瞬間だった
楽屋入りしてたくさんの団員とすれ違ったが

 とにかく脚が細い 《細すぎる》

自分よりちょっと低いくらいの身長なのに
足のほそ、細さが、、、尋常じゃあない。。
こんな細さでスタミナがあるとは到底思えない!!
なんなんだこの細さ!? 人体おかしいぞ
この感じは、、ルリさん以来だろう
「片手で完全に掴めるくらいに細い」
そんな団員たちが並んだ たったそれだけで、
ゾッとする美しさが現出した、してしまった。。
ある意味で、これは技術でもテンションでもない
ただ、、それだけで、ものすごかった

 なんてこった

これがひとつのバレエの到達点だろう
こんなのは日本人には到達できまい
なにしろ、カラダのつくりが… まるで違う
空気感がまったく違うのだ
特別な者たちの集団というだけですごい
彼らを眼前にしてあらためて痛感した
リハーサルはこの場面しか見ることができなかった
自分たちも衣装合わせ等、準備の時間だ
それでも 大きな発見をすることができた
もし出来るなら舞台裏を見た上で、
本番を客席から見たい
それができたらもっと何かがわかるはずだ


一幕 王子の城近く
王侯貴族一行は上手から出現。
下手前方へ斜めに歩く。
バレエマスターにバレエ歩きは禁じられている。
「フツーに歩いてね」
そのフツーが一番難しいんだけどね
王妃にお目通りする。
上手へ歩いて帰る。  おわり


三幕 玉座の間
つくられた居城セットの二階でスタンバイ。
賑やかな所作が求められた。
王妃の前で数々の踊りが披露される。
現れた王子や黒鳥に対してリアクションする。
王子が黒鳥にだまされる。
「なんてこった」  おわり


いやぁおわった あっという間におわったw
一体なんだったんだろう
本当にわたしたちは《必要》だったのか
まったくもって理解できない
世界一流のバレエ団だからこそ理解に苦しむ
自分が見に来たとしても
そんなのは省いてくれればいい、と思うはずだ
この答えは観客として来ていた大先生によって
後日もたらされることになる

「いやータイスケくんたち… 要らなかったわ」

バレエマスターの大先生に言われるんだから
本当に要らなかったんだろう。。
これがわたしたちエキストラの仕事だ。
そんなものに本気で挑んでいる
これは事実だ
直前まで王侯貴族の歩き方のことを考えたし、
帯剣してかっこよく歩くのも正直熟考を重ねた。
刀剣を所持すると壁なんかに当ててしまうのだ。
当ててしまうと「カチン」と音が鳴ってしまう。
少しでも本番を良くしたい
出来ることは少ないが
舞台人として全力を尽くすなんて
まったく当たり前のことだ


 今日、この日のために見に来た人たち
 その人たちに最高のものを見てもらいたい


この気持ちがなかったら舞台になんて立てない。
さあ、この日の世界最高のバレエ団の本番は、
どうだったんだろう??
実は、、あまり良い話は聞けなかった。
同業者先輩たち先生たち結構いたんだけど、、
どうやら物足りなかったらしい…
観客ならきっと実力以上のものを期待するはずだ
なんたって31年ぶりにやってきたバレエ団。
客席で見ることはできなかったけど、
舞台裏は至って「フツー」だった。
言葉にすると舞台人特有の気迫がなかった。
ここからは憶測だが、
きっと実力以上のものはアウェイでは来ない。
彼らは《毎週本番》なのだ。
プロとしてまずは《怪我しない》ことだろう。
アウェイでは事故が起こり得る。
劇場の勝手がまったく違うのに、
リスクを超えて実力以上なんて、、
失礼で期待しちゃいけない気さえするのだ。
それほどまでの技術を持っていて、
初めての劇場でなお失敗は許されない。

わたし自身もパリ・オペラ座に足を運んで
度肝を抜かれた人間です
本物の、本当の、彼らの実力が見られるのは
本拠地以外にはあり得ません
クラシックバレエは劇場も含んでいる気がします
もしかしたらこれもバレエの本懐かもしれない
毎週のように当たり前に本番が行われるのと、
わたしたちが準備に準備を重ねているのとは、
比べられないのも道理です

どちらが、というよりも
見せるものが違うのかもしれない

技術はすべてを肯定させるかもしれません
それでも技術を超えたものが見たい

わたしは《ダンス》が見たいんでしょう☆


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Taisuke [HOMEPAGE]