断罪の時間 〜Dance!な日常〜

2017年11月22日(水) 「恋は雨上がりのように」

 『恋は雨上がりのように』 全10巻

 橘あきら17歳。高校2年生。
 感情表現が不器用な彼女が、
 密かに想いを寄せる相手は―
 バイト先のファミレス店長 近藤正巳45歳。
 青春の交差点で立ち止まったままの彼女と、
 人生の折り返し地点にさしかかった彼が
 織りなす 小さな恋ものがたり、開幕

はじめから。はじめから幻想でしたw
現実には到底ありえない展開です(爆)
ただ、あきらが。
度肝を超えてあきらがかわいい。
なんだろう、、
かわいくないと《ものがたり》は始まらないの??
少なくとも売り物には、、ならない気がする☆
(生きていく上での作品の所在だ!←メタ視点)

ただ。ただ、この作品は詩的でした
その点においてこの漫画は他を圧倒しています


《あきら》
あきらはかわいいというよりも一直線。
その一直線さが本当に「綺麗」で、、
美しさを感じずにいられません!
◎どう見ても邪な気持ちにならない◎
陸上短距離200m記録保持者だったあきらは
アキレス腱断裂→再建手術した経緯です。
物語後半、ドクターから切り出されます。
「今から始めれば来年の春頃には
 きっと走れるようになる」
走れなくなった自分に、憤りを超えた無気力を
感じながらも手を差し伸べてくれた近藤。
何気ないそのあたたかさに恋をしてしまいます
17歳の心情をよくもここまで描き切、、すごい!
不器用だからこそ、はち切れんばかりの純粋さが
あふれて、一言が痛々しいほど突き刺さった

「本当に好きな人がいるのに、あきらめて別の人の
 ところへ行くなんて…あたしには考えられない」

「これからハムスターのことは、
 全部あたしに聞いてください」

どんなセリフを差し置いても
1巻最後にたどり着いてしまう


「あなたのことが好きです」


年齢を重ねれば重ねるほど言えなくなる台詞。
特に本気は。。
素直に言えるのは若さそのものかもしれません。
そう思うのも自分が年を重ねたからでしょう。
純粋で眩しくて、、

 今まで当たり前にできていたことが
 とつぜん まったく 出来なくなった喪失感

この気持ちは、、思い返したくない
どれだけ程度の差があるのだとしても
自分自身が抱えるその時の
自分自身にしか抱えられないその気持ちは、、
きっとみんな一様に地獄だと思う
あきらもそうだとしたら、、
近藤のやさしさにイチコロだったことでしょう
やさしさだけで恋に落ちるとは言いませんが
この《やさしさ》というやつは
人間のあたたかさそのものだと思うのです
相手にどう受け取られるかわからない
それを飛び越えて
少しでも何かになったら、というささやかなもの
それを《あい》と呼ばずになんと呼べようか!!!
たったそれだけのこと、が
たったそれだけのことじゃないのが真実です
ところが、そういったやさしさがいつでもどこでも
誰にでもあるわけじゃないのはどうしてでしょう
たったそれだけのことをしないのは、出来ないのは
もしかしたらそれが通らないことに慣れてしまった
からかもしれません
しなくなるのが些細な日常の積み重ねだとしたら、
こんなにさみしい世界はありません

おそろしいのは、意識して通そうとした場合
相手が受け取ってくれるのを期待してしまうこと。
期待が先になってしまった瞬間、そのやさしさは
とつぜん打算的になってしまいます!!

もしかしたら
本物のやさしさは孤独と隣り合わせかもしれません

あきらは言葉数が少ない「天才」です。
小学生?時代の回想でこんな描写がありました。

 なんでいっつもどんどん走ってっちゃうの?

「え、だって… 気持ちいいんだもん。
 走ってると耳が風の音でいっぱいになって、
 空に とけてるみたいになる 」

あきらのその始まりはきっと喪失感
言葉にできないその気持ちが
近藤への気持ちにすり替わってしまっていた
その恋に嘘偽りがないからこそ
始まりに気づくものがたり


《近藤正巳》
正直言って近藤の対応は紳士のそれです。
そこらへんのおじさんじゃあまったくない。
(※見かけはまったくそこら辺のおじさん)
その結末を見届けなきゃいけない、って思った。
同性だしおじさんですからね!
現実にあきらが出てきて自分を抑えられる自信は
まったくありません。 そんな男子は現存しまい
近藤はあきらと出会うまでは《あきらめていた》
驚くべきは、、近藤が
輝きが見える男だとは到底思えなかったことです
10歳になる息子がおりバツイチの近藤は、
自分には「何もない」と思っていた
思い込んでいた
その思い込みを一直線なあきらが
変えていってしまいます。
「何もない」と思っている自分のことを、
好きだと言ってくれる女の子。
その一途さが近藤のかつての情熱を引き出します。
思慮深さ、これは近藤の才気だと思いました。
近藤に大それた結末はありませんが
その心がたしかに変化したものがたり


そのラスト。競技に復帰したあきらは走ります
ここの描写にどうしても涙が出てしまいます
涙が出ないわけにいかない!!
スタート地点。あきらの前に過去の幻影が現れます

 本当に走れるの? 本当はまだ怖いくせに。
 これからも、ずっと怖いよ。
 あなたに過去のあたしは追い越せない。

「…こわい。 けど…
 このまま走らなくなってしまうことのほうが
 もっと怖いから…
 あの人だって、同じはず 」


復帰は簡単なものじゃありません
どうしたって自分自身と向き合うほかないからです
いろんな人のたすけがなかったら
進めないくらいの苦しさがあります
なぜなら、痛い思いをしたくない
その感覚をカラダが覚えているからです

目には見えない変化
目には見えない強さ

そんなものがこの作品に見えた気がするのです


 < 過去  INDEX  未来 >


Taisuke [HOMEPAGE]