断罪の時間 〜Dance!な日常〜

2015年12月11日(金) 「お祖母ちゃんのプリン」

第1話、その驚異的な推理演出にドン引きして
しまいました―  幻想的すぎだろッッ 笑笑

『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』

 北海道 旭川に暮らす平凡な高校生
 館脇正太郎には一風変わった知り合いがいる。
 九条櫻子さんだ!
 古い屋敷に婆やと暮らし、一見 非の打ち所の
 ないお嬢様に見える櫻子さんだが、
 その実体は… 三度の飯より《骨》が好き!
 趣味が高じて標本士になってしまったという
 残念美人である。
 そんな残念美人があらゆる難事件を推理解決。
 そういった主旨であった―

◎しかし第9話はおそろしく秀逸でした◎
せっかくですのでいきます(爆)
わたし自身のダンスに通じる、まさに
そのものだと言い切れるものだったんです

事故死で亡くなった祖母の月命日に御供物をする
百合子に連れられ祖母の家に向かう櫻子と正太郎。
その過去、百合子の祖母は百合子に言いました。
「ゆりちゃんがお嫁に行くときは―」
その絵が一体どれなのか、祖母亡きいま
櫻子に推理してもらおうとした百合子。
百合子が祖母に書いた過去の手紙から
それを読み解こうとする櫻子。
その最後に櫻子はこう言った。

「百合子、私は君を欺きたくない。
 だからはっきり言おう。
 私にその絵は見つけられない。
 君が祖母へ送った手紙の中にクリスマスプレ
 ゼントの感謝と喜びを綴ったものがあった。
 祖母からの贈り物、それは着せ替え人形だ」

「それは、中学1年のときの―」

「だが正直に答えてくれ。
 君は人形をもらって本当にうれしかったのか?
 真実、君がほしい物だったのか?」

「それは おばあちゃんのくれたものだから、、」

「つまり祖母からの贈り物でなければ
 嬉しくなかった、ということだな?
 当然だ。
 いまどき中学生に着せ替え人形もないだろう。
 だが手紙には不満らしい事は
 微塵も書いていなかった。
 あるのは喜びと感謝の言葉だけ。
 わかっていたんだよ、君は。
 自分の喜ぶ姿が祖母にとってのしあわせであり、
 また祖母の喜びが自分の喜びであること。
 それは、共に互いを思い 時を重ねた者にしか
 わからない優しい感情だ。
 そういうものを世間では愛情と呼ぶのだろう?
 だから私にはできない。
 これは君と君の祖母の秘密の約束だ。
 この謎は君にしか解けないし、
 君にならそれができると私は信じている」

正太郎「櫻子さんにも解けない謎 あるんですね」

「愛情などというものは実に非合理的だからな。
 私に言わせればくだらない感傷だ」

「くだらないから価値がある、
 っていうこともあるじゃないですか」


この会話には気付かされました
こういった気持ちのすれ違い。
実のところ罪悪感とも言えるような気持ち。
でも、その罪悪感と呼べるものが《愛情》と
呼べるものだとは考えたことがなかったのです
そのときのちょっとした罪悪感はもしかしたら
そのまま愛情と呼ぶことができるかもしれない、
そう思いました

小さな罪悪感と愛情が、
まさか同じものだなんて
思いもよらなかったのです

これはものすごい発見でしたw
なぜなら、これは 第三者を通してでしか
知ることができないからです!!


後半、正太郎少年の祖母の話へ進みます。
祖母のお墓にプリンを供えた少年。

「プリンは僕の大好物で、祖母はどちらかというと
 和食派でした。 母方の祖父はホテルのシェフを
 していたので僕が行くと、おやつによくプリンを
 つくってくれたんです。 だけどそのときも僕が
 食べているのを隣でニコニコ見ているだけで…」

「では、君の祖母は さほどプリンが好きでは
 なかった、ということだな」

「だと思いますw でも癌が見つかり入院して、
 骨まで転移した末期だと診断されたとき
 お見舞いに行く、って言うとなぜか必ずここの
 プリンをリクエストされたんです。
 食べるといってももうほとんど食べられなくて…
 それでもプリンを2つ買って、病室で一緒に
 食べるのが僕とおばあちゃんのお決まりでした―
 今思えば不思議なんです。
 どうして急に好みが変わったのか。。
 それに他の店のプリンは嫌だ、って言うんですよ。
 ここのでなければ、って」

櫻子「病気で味覚が変わるのはよくある話だがね」

◎櫻子の婆やがその答えを照らした◎

婆や「いいえ、お祖母様がこちらのプリンを
   ご所望になったのには深い理由がお有りに
   なったのだと思いますよ?」

「理由ですか!?」

「はい。
 その疑問に婆やはお答えできると思います。
 それではいくつかお伺いさせてください。
 お祖母様はいつお亡くなりに?」

「僕が小学4年のときです」

「入院先の病院は?」

「旭川医大です。
 いちばん家に近くて通いやすかったので」

「では、坊ちゃんは南方の御自宅から病院までは
 いつも自転車で?
 そのまま向かえばおよそ10分か15分といった
 ところでしょうか?
 お出かけになる前に病院に連絡は?」

「必ずしました!
 そうしてほしい、っておばあちゃんが。
 検査とかで病室にいないと気の毒だから、って」

「つまり、お見舞いの日時はまちまちで
 決まってなかったということですね?
 おそらく。それが理由だと思われます」

櫻子「まだわからないのか?
   婆やが言ってるのは時間のことだ。
   10分や15分では間に合わなかったんだよ」

婆や「ご明察です、お嬢さま」

少年「話が見えないんですけど、、」

櫻子「君は本当に愚かだな。
   君の祖母は癌で入院していたのだろう?
   それもかなり進行していた。
   骨にまで転移するというのが
   どういうことかわかるか?
   骨の内側から破壊されるということだ。。
   その痛みは耐えがたいものだよ」

婆や「深刻なご病状に反し、坊ちゃんがお話になる
   お祖母様のご様子はとっても穏やかなものに
   感じました。
   ですからわかったのです。
   お祖母様は坊ちゃんがいらっしゃる前に
   必ず痛み止めを打っていたのだと」

櫻子「だが薬が効くのには時間がかかる。
   だから君にプリンを買わせ、
   わざと病院まで遠回りするようにしたんだ。
   しかもたくさんの種類からたった二つを
   選ぶとなれば君のことだ、
   毎回あれこれと迷っただろう?」

少年「じゃあ、、おばあちゃんは
   時間稼ぎのためにプリンを、、」

婆や「はい。
   お祖母様はご自分が苦しむ姿を
   なんとしても坊ちゃんに
   お見せしたくなかったのです」

「そんな、、ただでさえつらいのに、
 僕が無理をさせていたなんて、、」

「坊ちゃんのお見舞いが、お祖母様にとっては
 何よりの薬だったのですよ?」

「でも、、僕がしたことなんて
 一緒にプリンを食べて話を、、
 今日なにがあったかとか昨日見たテレビの話とか
 そんな当たり前のくだらない話をするだけで―」

櫻子「くだらないから価値があるのだろう?」

婆や「わたくしにはお祖母様のお気持ちがわかる
   ような気がします。
   死に際してあの世に持っていけるものは
   お金や物ではありません。
   誰かを大切に思い、思われた記憶。
   それ以上に価値あるものがあるでしょうか?
   共に過ごした数々の時間。
   そんな当たり前のことが
   この歳になりますとね、
   ありがたく思えるのですよ?
   最後にもうひとつ。
   お祖母様がプリンを選ばれた理由ですが、
   それは、お祖母様は坊ちゃんの
   その笑顔をご覧になりたかったんですよ」


折しもわたしはちょうど祖母を亡くしたとき。
あらためて自分の後悔の在処を直視しました

くだらない毎日が
どれだけのしあわせを秘めているか

他人事ならそれを認められるのに、
自分の事となると途端に認められなくなります
これは、やはりわたしが《欲張り》だからだと
直感したのです
自分のことになると心の働きが違う現実。
自分が《できた》ことを疑うからです
もっとできた
あのときできたのにしなかった
日常こそが大事なのだとわたしたちはいつ気付くの
でしょうか
想像ではなく現実に感じられるとき
それはやはり命をおもうときだとおもうのです
目の前の人がいなくなってしまう
その喪失感がもっともおしえてくれるもの
かなしみを知っているぶんだけ毎日を毎日に
できなくなります
一日一日を精一杯に生きられるからです
生きようと努力できるのです
ほんとうはそれだけでいいのではないでしょうか
人間ってとっても欲張りなのだとおもいます
欲張りだからこそ見えなくなるのです

無欲になると途端に解決できてしまうことが
ほとんどではないでしょうか

わたしたちは無意識に周りを窺います。
自分がどうおもわれているのか不安だからです
今こそ それを取り払って、
自分の素直な気持ちをおそれずにぶつけたい
そんなダンスがおどりたい
そうおもったのです


 < 過去  INDEX  未来 >


Taisuke [HOMEPAGE]