| 2013年04月09日(火) |
「絶園のテンペスト」 |
『絶園のテンペスト』 (全24幕) 世の中の関節は外れてしまった。 ああ、なんと呪われた因果か、それを直すために生れついたとは!!
世界の命運を賭けたラブコメなのか!?
ちょっと待て。 そのふたつのキャッチフレーズ、差がありすぎだろ―
創造の力を司る“はじまりの樹”と、破壊の力を司る“絶園の樹”。 “はじまりの樹”の加護を受ける魔法使いの一族の姫宮にして、 最強の魔法使い鎖部葉風は、同族の左門の謀略により、 樽に詰められ絶海の孤島に置き去りにされていた。 一方、高校生 滝川吉野は失踪した親友の不破真広を追う謎の女と出会う。 真広は何者かに殺された妹の復讐をするために、 葉風と“ある取引”をしていた―
はじまりの樹と絶園の樹、人智を超えた人類への試練の物語。 葉風が樽から復活を遂げる三話は物凄く面白かったw 真広と左門と葉風に繰り広げる吉野の仮説熱血プレゼンテーション!! 鎖部左門が強烈な顔で「なにィィィ〜!?」とか叫びつづける三話ね。 あれほど歪んだ間抜け顔をつづけるロン毛イケメンキャラは見たことがないw たぶんねー、その台詞を載せても案外おもしろいかもw きっとわけわかんないでしょうけどいってみよう(爆
いや、待て、待て、待て、待てえええええええええええええええええ!! 我等は二年も姫様を眠らせるなどしておらん!! その骨も姫様のもので間違いない!! (冗談ではないぞ、そんなでたらめな理屈でマグを発動させられるなど! これは冤罪だ…偽証による冤罪だあ)
証拠がありますよ 葉風さんの時間感覚が信用できないとなれば、 時間がズレている証拠なんてありませんよ だいたいいくら魔法でも時間を超えて会話できるなんて非常識です それを信じるほうがどうかしてる
今さら常識もないだろう!!(魔法の話をしている時点で) 第一、現実に時を超えているんだ!!
真広、マグを発動させろ! それで葉風さんを救える! おまえの望みも叶う これ以上の悲劇は避けられるんだ!!
しまった、あの少年は間違っている… だが、それは関係ないのだ! マグを発動させられたら、わたしは姫様をここに… ここに戻せる、いや、戻さざるを得ない!! 理屈など出鱈目でもいい、彼に引き金を引かせさえすればあの少年の勝ち いや、姫様が勝つ… 出鱈目でも結果は同じなのだ なんと狡猾な。。 一族の総力を懸けた本物の時間の檻をそんな奇策で破ろうというのか!? ならん!ならんぞ!! だが、時間のズレをどうやって証明すれば…
よし、焦ってる。。 この間に真広と葉風さんが動いてくれれば、 また3人で力を合わせることができれば… 勝てる、勝てるはず!!
まどわされるな!! おまえの友人は時間がズレていないことを証明していない! マグを発動していい条件は、何ひとつ証明しておらんぞ!!
吉野の理屈はハッタリくさい、リスクもまだ高い だが、そいつにのれるだけの舞台はつくってやがる… 左門がこのまま手を打てないなら条件的には吉野のほうが。。
やはり時間のズレを証明せねば、押し切られかねん! 孤島とここに二年のずれがあるのは事実だというのに… 証明に苦しめられるとは。。 あの骨はたしかに島から持ち帰った姫様の。。 “一緒に持ち帰った”…!? はっ! 樽だ! その樽だあ!!
樽??
そうだ、姫様のそばに樽はあるな?あるはずだあ!!
(省略w)
吉野、頭きりかえろ! っていうかおまえ、最初からこうなるの狙ってたろ? 無茶な仮説をわざと左門にぶつけて動揺させ、 葉風を立ち直らせるきっかけにする ついでに俺もそんな気にさせる 狙ってなかったとは言わせねえぞ?
そ、そんな… 私はあの少年の思惑に嵌っていただけだというのか―?!
どんどん深みに落ちてゆく左門さんが愉快でたまりませんでしたねw さて、外せないのは“不破愛花”の現実離れした性格と思考。 過去における圧倒的な力の発露。 カラダ弱くて華奢な女子が実はおそろしく強かったのだ。 すべてのことを知っており“つまらない”とする達観。 (それ、想像力ありすぎて潰えてる系だろ!!) つじつまを簡単に合わせてしまう冷めた頭脳! そんで実行まで迷いなし。 あれには度肝抜かれたね、最終回なんかより遙かにおもしろかったよw
強いて言うなら、二人は特別なとき、特別な場所にいただけだ でもその過酷な場所から逃げなかったのは紛れもなく二人の意思よ そして、何をすべきか、何ができるか考え続けるのかもまた…
ほんとは特別じゃないとき、なんてのは無いんじゃないかな。。 どんな時間も 決して戻ってこないんだし。 何をすべきか、何ができるか、考え続けることが生きることなんじゃないかな
でも、おかしな人たちが近くにいるほうがいいのかもしれません どんな悲劇もきっと、 その人たちといれば喜劇に変わって見えるかもしれませんから
これはそうだよねw 俺がなによりもおかしいよね 悲劇だとしてもそこから学ぶことがあるのだし、喜劇に変えることもできる そんな人たちと“どんなときも”生きていることを謳歌したい!!
くそっ! 何かが足りない! 決定的な何かが!! …だったら、愛花ちゃんだったら、こんなとき何て言うかな。。 愛花、だったら…? 「足りないんです、率直に言ってこの本、つまらなかったです」 「なんだよお前… シェークスピアばっかりで。。 少しは他の本にも目を向けたほうがいいぞ」 「だってこの作品には“光”が存在しないんです」 「光?」 「ええ、光。 人と人の気持ちが重なる場所に生まれる“ささやかな光” その光は幸いも憎悪も罪も喜びも抱き、 強烈に輝いて全ての真実を照らし出す…」
この物語を通してたどりつくのは“ささやかな光”でした そして、その光は人と人の気持ちが重なる場所にうまれるということ ひとりでは重ねられないもの 気持ちが重なる瞬間なんてほんの点と点ですよね でも、できるならその点をよりたくさんつくっていたい 人と関わることはおおよそ“めんどう”なことです だけど、その面倒なことこそ たのしむべきところではないでしょうか
愛花、お前にとって人生は誰かに決められたシナリオ通りに演じ、 その通りに終わらせるもの だからシェークスピアの台詞をやたら口にしてたんだな でも愛花、オレはお前が間違っていたと言う お前はやっちゃいけないことをやったし、やるべきことをやらなかった 誰かのシナリオをなぞるしかできなかったからお前は間違ったんだ でも、お前は俺の妹だ お前の期待通り世界を救ってやるよ お前の彼氏は新しい恋人でもできりゃ完全に他人だが、 俺はずっとお前の兄だからな 愛花、俺は誰かの舞台劇をなぞるみたいな結末はつけねえ ハムレットでもテンペストでもねえ 何十年先になるかわからねえが、俺の言葉で俺の決めた結末を描いてやる!
真広くんの台詞はラブコメを終わらせるにあたって大変素晴らしいものでした だって、まったくその通りなんだものね 役割をそのまま受け容れることはある意味で“あきらめ”かもしれません 生きているかぎり、なにかできることがあるはず そういう意味で真広くんは登場人物の中で最も人間らしい性格じゃないかな 言葉使いは野卑ですけど、その決意は誰よりも強く好感がもてます!
そうだな、この世は夢か現(うつつ)かわからねえ これまで俺たちが見ていた世界は都合のいい偽物だって言ってるのかもな これで魔法もなくなるだろうよ 夢は終わりだ
ああ、夢みたいな力にたよらず、現実に立ち向かおうか!
|