断罪の時間 〜Dance!な日常〜

2013年02月19日(火) 裏切り者

 「僕はオアシスにずっといたいのです」と少年は答えた。
 「僕はファティマを見つけました。僕にとって、彼女の方が宝物よりも大切です」
 「ファティマは砂漠の女だ」錬金術師が言った。
 「彼女は、男は戻ってくるために遠くへ行かなければならないと知っている。
  それに、彼女はすでに自分の宝物を見つけたのだ。 それはおまえのことだ。
  だから、彼女はおまえにも、おまえが探しているものを見つけてほしいと
  思っているのだ」
 「では、もし僕がここにとどまったら、どうなるのですか?」
 「どうなるか教えよう。 おまえはオアシスの相談役になるだろう。
  たくさんの羊とたくさんのらくだを買うためのお金も、十分に持っている。
  ファティマと結婚して、二人とも一年間は幸せに過ごす。
  おまえは砂漠が好きになり、五万本のやしの木の一本いっぽんを知るだろう。
  それらは、世界が一刻一刻変わってゆくのを証明しながら育っていくだろう。
   二年目のいつ頃か、おまえは宝物のことを思い出す。
  前兆が執拗にそのことを語りかけ始めるが、おまえはそれを無視しようとする。
  おまえは自分の知識をオアシスとその住民の幸せのために使う。
  族長はおまえのすることに感謝する。
  そして、おまえのらくだはおまえに富と力をもたらす。
   三年目にも、前兆はおまえの宝物や運命について、語り続けるだろう。
  おまえは夜ごとにオアシスを歩き回り、
  ファティマは、自分がおまえの探究の邪魔をしたと思って、不幸になる。
  しかしおまえは彼女を愛し、彼女はおまえの愛にこたえる。
  おまえは、ここにいてくれと彼女が決して言わなかったことを思い出す。
  砂漠の女は、自分の男を待たなければならないと知っているからだ。
  だからおまえは彼女を責めはしない。
  しかし、おまえは砂漠の砂の上を歩きながら、
  “もしかして自分は行けたかもしれない…”
  “もっとファティマへの自分の愛を信じることができたかもしれない”
  と何度も考えてしまう。
  なぜなら、おまえをオアシスに引き止めたものは、
  二度と帰って来ないのではないかというおまえ自身の恐れだったからだ。
  その時、おまえの宝物は永久に埋もれてしまったと、前兆は語るだろう。
   そして四年目のいつか、前兆はおまえを見捨てるだろう。
  おまえがもう、それに耳を傾けるのを止めてしまうからだ。
  部族の長たちはそれを発見して、おまえは相談役の地位を解かれてしまう。
  しかし、その時にはおまえは金持ちの商人になっていて、
  多くのらくだや商品を持っている。
  おまえはその後の人生をずっと、自分は運命を探求しなかった、
  もうそうするには遅すぎると思って、暮すだろう。
   男が自分の運命を追求するのを、愛は決して引き止めはしないということを、
  おまえは理解しなければいけない。
  もし彼がその追求をやめたとしたら、それは真の愛ではないからだ…
  大いなることばを語る愛ではないからだ」

女子とは“何よりも自分が愛されたいとおもっている”ふしがありますよね。
そこに幸せを感じる女子がほとんどかもしれません。
理屈を度外視してぶつけてくることばがそれをおしえてくれます。
しかし、その“今”よりも先を見ているのがファティマです。
“今”をもっともっとたいせつにすることが大事。
“今”こそがわたしたちが生きるリアルだからです。
『アルケミスト』を読んでわかること。
それは、今をたいせつにするその方向を間違ってはいけないということです
未来へすすむために今を選択しているということでしょう

行き着くところは安易な選択じゃあないってこと
楽なことなんて簡単に択べてしまいます

そしてそれを男に諭すことが出来る女がいるということです
ファティマにも少年を見送らなければならない痛みがあります
そんなことができるのはどうしてでしょうか
目先のことを見越して、大きなしあわせがあることを信じることかもしれません
そうでなくちゃ常に目先のことに囚われることになります
きっといつまでも同じことで喧嘩したり、わだかまりはなくならないでしょう

 「背後に残してきたことを考えてはいけない」
 砂漠の砂を横断し始めた時、錬金術師は少年に言った。
 「すべては大いなる魂に書かれている。そして永遠に残っているのだ」
 「男は出ていくことよりも、家へ帰ることを夢見るものです」と少年が言った。
 彼はすでに砂漠の静寂に再び慣れ親しんでいた。
 「もしおまえが見つけたものが純粋なものから成っていれば、
  それは決して朽ちることはない。 そして、おまえは必ず戻ることができる。
  もしおまえが見つけたものが、星の爆発のように一瞬の光にすぎなければ、
  おまえは戻ったとしても何も見つけることはできないだろう」

わたしは、一介のダンサーとしてそのからだを求めています
そしてそれをドギツいことばで紡いでくる強大な先生に師事しています
その先生の前では決して姿勢を崩すことはゆるされません
いつも書いてるとおり、わたしなどその努力がたりていないと言われる部類
しかし、私たちは誠実に最高の姿勢をキープするために物凄い努力をしています
前に足を出すだけで汗がどっと吹き出す様相です

朝起きて家を出てもいないのに「帰りたい」と考えるくらいです

どうしてこんなキツイことを毎日しなくちゃいけないんだろう
脚が痛い、背筋が痛い、何よりも砕けた右半身はいつだって疼く
右はいつもお先真っ暗
なぜこんなツライことに自らを向かわせるんだろう
何度悩んでも答えは最初からでています

もっと踊れる未来を信じているからです

自分を奮い立たせるのは、すべては、自分自身を輝かせるためです
そんな先生のおかげでわたしのフィジカルはおそろしく変わりつつあります
ハートで踊るダンスとは真逆の、身体が織りなす神秘
身体の力って凄い  目に見えるその“厳しさ”はすなわち“美”です
この稽古場にいるひとはみんな、その努力は“あたりまえ”
やめようと思えばすぐにでもやめられます  簡単に選択できる
レッスン終わってみんなが言う 「あ〜もうやめたい」
って、誰もやめるひとはいませんw

きっとその誰もが“朽ちることのない何か”をもっているからですよね


 「おまえは、もうほとんど旅の終りにいる」

 「でも、この旅であなたは僕に何も教えてくれませんでしたね」と少年は言った。
 「僕は、あなたが知っていることを僕に教えてくれるものだと思っていました。
  少し前、僕は錬金術のことを書いた本を持っている人と一緒に、砂漠を渡って
  きました。でも、僕は本からは何も学ぶことができませんでした」
 「学ぶ方法は一つしかない」と錬金術師は答えた。
 「それは行動を通してだ。
  おまえは必要なことはすべて、おまえの旅を通して学んでしまった。
  おまえはあと一つだけ、学べばいいのだ」

 「おまえの心に耳を傾けるのだ。 心はすべてを知っている。
  それは大いなる魂から来て、いつか、そこへ戻ってゆくものだからだ」

 「僕の心は裏切り者です」少年は錬金術師に言った。
 「それはそうだ」錬金術師は答えた。
 「夢を追求してゆくと、おまえが今までに得たものをすべて失うかもしれないと、
  心は恐れているのだ」
 「それならば、なぜ、僕の心に耳を傾けなくてはならないのですか?」
 「なぜならば、心を黙らせることはできないからだ。
  たとえおまえが心の言うことを聞かなかった振りをしても、
  それはおまえの中にいつもいて、おまえが人生や世界をどう考えているか、
  くり返し言い続けるものだ」
 「たとえ、僕に反逆したとしても、聞かねばならないのですか?」
 「反逆とは、思いがけずやって来るものだ。
  もしおまえが自分の心をよく知っていれば、心はおまえに反逆することはできない。
  なぜならば、おまえは心の夢と望みを知り、それにどう対処すればいいか、
  知っているからだ。
  おまえは自分の心から、決して逃げることはできない。
  だから、心が言わねばならないことを聞いたほうがいい。
  そうすれば、不意の反逆を恐れずにすむ」

わたしは知らずにそれをしていました
読んでいてとても不思議な気持ちになったのをおぼえています
どうしてそんなことができるようになったのか
それは自分を取り戻した、あのときからだと感じます
自分と向き合うことしかできなかったあの日々が、わたしを今のわたしにしました

 少年は砂漠を横断しながら、自分の心の声を聞き続けた。
 すると、彼は、心のごまかしや企みがわかってきて、
 それをそのまま受け入れられるようになった。
 彼は恐れをなくし、オアシスに戻る必要を忘れた。
 ある日の午後、彼の心が自分は幸せだと言ったからだった。


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