断罪の時間 〜Dance!な日常〜

2012年06月07日(木) 祈るよりも、考えるよりも

JR奈良線、プラットホームで場内アナウンスがかかりました。

 「乗客に急病人がでたため救護のため遅延到着いたします」

このままでは今日の寺巡礼ハードスケジュールにいきなり支障をきたしてしまう!
〜京都、寺巡りとはイギリス観光同様、17時には閉店です〜
今日は妙心寺の徹底踏破を予定しています。  あ、電車きた
京都駅でJR山陰線に乗り換えて数駅、途中の駅から目の前におじいさんが座りました。
わたしが座っていたのはプライオリティシートでしたからねw

 このときのわたしは、文章では元気そうに見えるでしょうが軽く廃人です

ダンスにはそれくらいの気力が必要ですから簡単に明け渡した末の顛末です。
京都には単に遊びにきたわけではありません。

 ダンスに戻るためには、一旦忘れることが必要でした

そうだ、妖怪人間の主題歌で例えるとわかりやすいかもしれませんね!
「はやく人間になりたい!」と「いったん人間になりたい!」の違いです。
さて昨日、ハルコさんとの会話中たいへん興味深い話がありました。
それは“通知表の五段階評価について”
ハルコさんはたいへんな人生の先輩、その知識は尊厳の域にまで達しています。

 秀・優・良・可・不可

これはそれ以前のお話です。
あなたはそれ以前の五段階評価がどんなものだったか、知っていますか??
この問いについてはハルコさんをもってしても解けないものでした―

 甲・乙・丙・丁…謎w

謎の部分がわたしたちの頭を、その頭脳を激しく悩ませたのでした。
誰だって甲乙丙丁くらいは言えましょう。
しかし、その後の時代の「不可」の過去がどうしても引き出せないのでした…
そんなときだったのです、JR山陰線でおじいさんが目の前に座ったのは!!
わたしは満を持しておじいさんに尋ねます。
目の前のおじいさん、それはもうなにかの御慈悲だと思ったのです。
まさかこのおじいさんが通知表五段階評価を訊ねられるなんて思ってもいないでしょう。
わたしは、しばらく世間話をしたあとに切り出しました。

 「失礼ですが御年を伺ってもよろしいですか?」

これは超最重要項目です。
この謎を解くためには80歳以上のリアル人生が必要だからです!

 「83じゃよ」

心の中でガッツポーズをしたのは言うまでもありません。
わたしは通知表について、五段階評価について聞きました。

 「あぁ、ええとたしか、甲乙丙丁…なんだっけ」

おおおおおお!! スゴイ、いける、いけるぞ 問題はその“なんだっけ”です!
おじいさんは唸りながら隣に座っている奥さんに助けを求めます。

 「わたしは秀優良可不可だから」

ダメでしたw
きっとおじいさんは秀優な方だったのでしょう。
不可は不可でなければ与えられない評価ですから、そもそも縁のないもののはずです。
おじいさんはわたしにあやまりながら目的地の駅で下車されました…
それはひどく罪悪感にかられる結末でした。
これはなにかの御慈悲に違いない、そのすべては勝手な思い込みだったんです―
病院に定期健診にいった帰りだったおじいさん。

 わたしはおじいさんがこれ以上悩まないことを痛切に祈りました

この事件でいよいよ寺巡りの意味が、ひとつのかたちある様相を為してきました。
わたしは楽になりたい一心でなんの罪もない人を悩ませた上、謝らせてしまったのです
もう自分だけの問題じゃあない  もっと大きなものに祈らなきゃ―

妙心寺に到着。 ここは以前、時間がたりなくて拝観できなかったお寺です。
受付兼御朱印を済ませると、場内案内のお姉さんが言いました。

 「妙心寺の敷地面積は甲子園球場7個ぶんです」

ここではどんなときも決して東京ドームが使われることはないでしょう。
ってデカッ!! このお寺、そんなに広いの?!
はっきり言いましょう、全く散歩レベルじゃない!!  境内は10万坪です…
最も有名なのは法堂の天井画、雲龍図。 狩野探幽筆。
これはもう天井を見上げなければわからないリアルです!!
角度によって印象がここまで違うとは思いませんでした。
お姉さんも、これでもかとばかりに、いちいち角度を強要するのでしたw
雲龍図の龍の姿についてお姉さんが語ります。

 「顔はワニ、角は鹿、体は蛇、爪は鷲、鱗は鯉、目は牛です」

牛かよ!!  龍の目は牛だったんですよ!!  し、知らんかった…
国宝は妙心寺鐘。 記年銘のあるものとしては日本最古のものらしい。
わたしたちは鐘の前に正座させられてその音色を聴きました。

 目の前に本物があるのに音色は録音ですw

神妙に聴いていた自分がバカらしくなりました!
テキトーに観光していたら一様に本物だと思うかもしれません。
しかしわたしは本物の鐘がどこから突かれているのかわからなかったのです。
お姉さんに問いただして音色が録音だと聞き出したのでした―
「ゴーン…」その録音はどこかで聴いたことのある音でした。
お姉さんは“ゆく年くる年”に使われていると親切に教えてくれました。

 たぶん録音です

妙心寺には重要文化財の浴室を見学できます。
その浴室は明智風呂と呼ばれていました。
風呂敷とは、和尚さんが風呂に入るときに脱衣する際、床に敷いた布が語源です!
は〜 そうなんだ〜 この世は知らないことばかり…っていうかそのままじゃんw
当時の密宗和尚が明智光秀の逆賊汚名を清めるために建てたのだそうです。
洒落?それ洒落じゃないの??  ブラックで笑えません!
浴槽は蒸風呂形式。 今見てもその機能には目を見張るものがありました!
塔頭寺院は46もある妙心寺。 半端ない数です  御朱印もね
日本庭園とか宿場とか、いろいろありました。
その最中、貼り紙で道が閉ざされた場所を発見します。

 「この時期はカラスが襲ってきますので、これより先には絶対に行かないで下さい」

わたしはもちろん先へ行こうとしましたw
でもカラスの叫び声&殺意にどうしてもその場から動けません。
ここの“絶対に”っていうのは本当に“絶対”のようです!!

その後、広隆寺に行きました。
聖徳太子が建立した日本七大寺の一つ広隆寺。
ここには国宝第一号がまつられています。
日本中でこの仏像を知らない人は一人もいないでしょう。

 ◎弥勒菩薩半跏思惟像◎

その姿はおどろくほど美しいものでした。  ※百済産
なによりもその空間に、崇高さを見たのです

 自分でも気づかないうちに手を合わせていました

この菩薩さまは「一切衆生をいかにして救おうかと考えている」お姿らしい。
きっと、考えているあいだに数えきれない命が失われていくのだと思いました。
その姿が美しければ美しいほどそう思ったのです。
わたしたちが生きる世界とは、決して美しいものではないからです。
祈ることも大事ですがいつも祈ってはいられません。
現実に立ち向かっていくことがわたしたちには課せられているからです。

その帰り道、わたしが通うカレー店のマスターから頼まれたものを買いにいきました。
【亀屋友永】 由緒正しき和菓子です
その松露はこれまで一度も食べたことがない食感逸品でした。 これが京菓子か!!
本店の壁には小学生からの寄せ書きがたくさん飾ってありました。

 「和菓子屋さんでくふうを感じました。
  だからわたしもくふうを感じてもっといろいろなことを知りたいです」

その他「美しさを感じました」など、素直で実直な感想ばかり。
その中でも「知恵を感じた」ということばに強い印象をうけました。

これはダンスも同じかもしれません。
今のわたしならこうでしょうか。

 「ダンスでくつうを感じました。
  だからくつうを感じてもっといろいろなことを伝えたいです」

そのくつうとは、ただのくつうじゃありません。
切実な鍛錬、知恵と工夫、自由、そして美しさ

 痛いのは生きている証です



長くなりましたが、いつまでもこのままではいられません。
現実に戻るときが近づいているのを感じました。
あの公演で、わたしが超えるべき壁を見つけたのです。
その壁を突き破ることが舞台に立つ工夫、そのものです

祈るより、多くに気づかされたのは子どもたちの寄せ書きでした


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