ぴんよろ日記
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きのう、これまで行った中でも、かなり上位のランクに入る「ナメた店」に行った。 あまりにも見事にナメていたので、これから数日間に渡り、 ナメた店、ダメな店とは何なのかを考えていきたいと思う。 私が今まで、曲がりなりにも雑誌やテレビを通じて飲食店を取材してきたり、 そもそも食いしん坊なので、いろんな店でいろいろ考えたりしたことも取り混ぜながら。 どんなふうに進むかは自分でもまだ分からないが、日記の一環なので気楽にやろう。
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まずは昨日の店の話から。 静かな海の見えるすばらしいロケーションにあり、 もとは喫茶店だったのだが、 どこぞのホテルのレストランにいたという兄ちゃんがやってきて、 料理をしているという。 テレビでも、話半分しか信じられない鉄則があるとはいえ、 けっこうおいしそうに見えた。 (ちっ、まだまだ修行が足りんじゃったわい) ハハと二人遠出して、 「ちゃんとおいしいものが食べたい」夕食のために車をとめると、 目の前には青く暮れゆく海。
店に入って…あぁ、ここでどうして気付かなかったんだろう。 もとの喫茶店と大して変わらない店であるということを。 そういえばもとの喫茶店を取材したことある。 ちょっと有名になったこともあるお店だったのだが、感じ悪かった。 「別にアンタに取材してもらわなくても、ウチには客が来る」 とでも言いたげな応対。
あぁ、初めから話はズレてしまうが、思いついたままに書くと、 取材する人間は、特に地元の雑誌だと、 またある時はお客さんになりうる人間だ。 別に特別大サービスしてほしいわけではないし、 そうされるとこんどは行きづらくなるんだけど、 とても横柄に受け答えされたりすると、 なんというか、ただ単純な問題として 「こんな人が作った料理は食べたくない」と思う。 もちろん取材する側にも問題があって、 どう見てもカメラの扱いが頼りないとか、 料理のことを知らなさ過ぎつつ取材してるとか、 取材する方が「取材してやってる」という態度を取ることもあるだろう。 不幸にしてこういう取材ばかりを受けた人が、 取材不信に陥ることも多いのかもしれない。 しかしそれを合わせて考えても、 「目の前の人間と気持ち良く渡りあう」というのは、 食べ物を出す店には必要な能力なんじゃないかと思う。
さて。 イスが安っぽい。 回転のいいリサイクルショップでもホコリをかぶっているような、 サエないラタンのイス。 バイトのねーちゃんがベタッとした声でイラッシャイマセーと発する。 そういえば「シェフ(あぁ、こんな店でもそう呼ばなくてはいけないのだろうか)」は、 入った時も帰る時も、いらっしゃいませどころか、 私たちを見もしなかった。 (こうなると、さっきの「目の前の人間と気持ち良く渡りあう」以前の問題)
それでもその時はまだおいしい店なんだと、 少々は期待しつつもメニューを待った。 窓際の席から見える景色だけは相変わらず美しい。 メニューが来た。 第一の不安が襲う。 「海のそばですてきな料理を」のはずの店のメニューが、 ぺなぺなのクリアーファイルでいいはずがない。いいはずがないんだ!
メニューは大事だ。 ずいぶん前にも 「線を引いたメニューがあまりにも多いメニューを出す店はダメだ」 と書いたことがあるが、 私はメニューで、文字通りその店を読もうと思う。 それは料理を出す側と出される側の、 大切なコミュニケーションの道具だから。 初対面の人に汚い名刺を出されたら「…?」と思うように、 メニューにはその店の美意識なりナメ具合なり、 現在の経済状況なり、能力が現れている。 不安な気持ちを増大させながら、ぺなぺなのメニューをめくる…。
以下次号
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