ヲトナの普段着

2005年05月22日(日) 異性を理解するということ

 人はなにかを判断する際、常に自分の価値観や感性を拠り所にする。考えるのは自分で、感じるのも自分であることを思えば、それは至極当然のことなんだけど、異なる性を理解しようとするときに、それら己の価値観や感性が適切な判断を邪魔してしまうことが少なくない。そう、ライブチャットに集う人たちが男と女という異なる性であることも、忘れてはいけないのだろう。
 
 
 その言葉、誤解されるかもしれないよ
 その言葉、鵜呑みにしないほうがいいよ
 
 賢明な読者諸氏であればもうお気づきだろうけど、上はチャトレに向けたもので下は男性客に向けたもの。ここで読み違えないで欲しいのは、僕は「言葉の使い方の難しさ」をいいたいのではなく、「男と女とでは、同じ言葉でも受け止め方が異なる場合が少なくない」ということね。
 
 例えば「好き」という言葉を、みなさんはどう使いどう受け止めてるのだろうか。僕はわりとこの言葉は「普段使い」している。だって、好きなもんは好きなんだもん。という、わけのわからない言い訳してるけど、「好き」という気持ちがある以上は、僕はそれを素直に伝えるようにしている。けれど、それを相手がどう受け止めるかは、相手によって異なるのだと思える。だから僕は、「好き」の前後にいろんな言葉をオマケとしてくっつける。そうやって僕の「好き」を、相手に伝えるように心がけている。
 
 それでもときどき、僕の真意がうまく相手に伝わっていないと感じることがある。「口が達者」と言われるヒロイさんですらそうなのだから、そうでない人たちはもしかすると、さんざんな目にあっているのかも……しれない。
 
 
 そもそも、誤解や鵜呑みはどうして生じるのだろうか。ひとつの拠り所として、いま「スタンス」というものを考えてみよう。「姿勢」と解釈していいだろうね。チャトレがチャットする際にお客さんに対して抱いている心理的な姿勢。そして、客がチャトレと相対するときに心に抱くもの。それらの違いを考えると、誤解と鵜呑みの仕掛けが見えてくるような気がするんだ。
 
 チャトレにとって客は大勢いる。「いや、おれはあの子にとって一番の客に違いない」ときみが思い込んだところで、そんなことは何の根拠もない。たしかに大勢の男を相手にしていれば、そのなかで自然と「序列」はできてくるかと推察している。けれど、それらの序列は「仲良し」の序列であることが多いような気がする。男が期待してるような序列ではないということだ。
 
 一方客にとってチャトレはそう多くはいない。現実には数百人いたとしても、そこで言葉を交わし「好き」になっちゃうチャトレとなると、極めて数は限られてくるだろう。おそらく多くの男たちが、チャトレを恋愛の対象としてみているとも思う。仮想と現実との住み分けが下手な男という生き物にとっては、チャトレとの関係は「一対一」が理想系なのである。
 
 この違いはとても大きい。一方は「お友だちとして」と思いつつ他方は「恋人として」向き合っているのだから、それらを双方が理解しない限りは、誤解と鵜呑みは堂々巡りをするようにも僕には思える。
 
 
 チャトレは多くのリスクを背負ってその場にいる。これも理解しなければいけない客との違いだろうと僕は思う。現住所や電話番号を明記はしてないものの、ネットという公の場で顔を出しているということは、一歩間違えると色々な危険が身に降りかかってくる可能性だってあるからだ。当然のことながら、普段以上に相手に対して距離を置くこととなる。その気持ちを、男は察してあげないといけない。
 
 チャトレ側も、客である男衆が自分のそういう立場を理解してくれているかを、そっと推し量る必要はあるだろう。言い換えると、そういうリスクを負う立場を理解しきれずにチャットルームに来ているお客さんも、ことのほか多いかもしれないということになる。立場を理解してもらうということではなく、相手がそれを理解してないということを、チャトレであるなら前提に把握して会話に臨むべきかもしれないということだ。
 
 
 こんなことを書くと元も子もなくなってしまうんだけど、常々僕は「所詮、男と女は理解しあえない間柄にある」と思っている。なんか投げやりな物言いに聞こえるかもしれないけど、理解しあえないから理解しようとしても無意味だということではないよ。
 
 男である僕がいくら女の立場を考え論じたところで、それは男である僕の言葉でしかない。理解したつもりではいても、自分が本当に女になってその立場を経験しない限りは、それは「本当の理解」とはいえないような気がするんだ。だから、理解しあえない間柄なのかな、と思う。
 
 大切なのは、「理解しきれないのなら、謙虚に思いやりを持とう」ということではなかろうか。自分の考えや行動に、ほんの少しでもいいから疑問符を投げかけ、相手を認める努力をしてみることではないだろうか。チャトレと客との間には、そういう関係があって欲しいなと、僕はそう思っている。


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ヒロイ