ヲトナの普段着

2005年05月15日(日) ブラインドタッチ/音声チャットについて

 べつに暗闇でアイマスクして女の子の体を追いかけるという話ではない。ブラインドタッチ、目を閉じていても触れる……もとい、文字が打てることをいう。昨今はタイピングソフトもゲーム感覚になってきたから、チャトレちゃんたちのなかにも「おまえは既に死んでいる」なんてタイピングしながら遊んだ子がいるかもしれないけど、ときどきタイピングが覚束ない子と出逢ったりすると、「いいんだよ、おじさん優しいから待ってあげちゃう」なんて言いながらマメに残ポイントを確認してしまうのであった。
 
 
 ブロードバンドってのはほんと便利なもんで、僕がネットをはじめた頃にはとっても大変だった双方向のテレビ電話なんてのも手軽にできるようになってきた。もちろん、チャットの世界でも音声チャットは当たり前のように使われてるわけだけど、やはりチャットの基本は文字を打つことであって、「文字打つの慣れてないから音声でね」というチャトレをみるにつけ、何考えてんだこいつはと眉をしかめてしまうのはおやじだからだろうか。
 
 実のところ、僕のネット時間というのはほぼ会社の営業時間内なのだ。自宅にもパソコンはあるけど、帰宅後に僕がそれに触れることはほとんどない。ましてやネットに繋ぐなどということもない。つまり夜間はネットしなーい。で、社内に自分ひとりしかいなければ音声も構わないとは思うんだけど、いつ誰が疾風の如く入ってくるかもわからないような場所で、のんびり音声チャットなんぞできよう道理がないでしょ。
 
 僕のデスクは、他の従業員のほうを向いている。僕がそうレイアウトした。だから僕のデスクのパソコン画面は、他の誰からも見えないということになる。建前上は「みんなの顔をみながら仕事したほうがいいでしょぉ」と健全なしゃちょーさんを気取ってはいるが、その実、怖い顔をしながらモニター見つめて心で大笑いしているのであった。器用な奴かもしれない。だから「爆笑」レベルの話になるとまじ困る。それまで背筋を伸ばして仕事(の振り)してたのが、突然モニターの影に顔を隠すのだから、怪しいことこの上ない……。
 
 
 まあ僕の事情はさておき、チャットにおける「文字の重要性」をくどくど書くには理由がある。それは「音声言葉より文字のほうが的確かつ修正がきく」からだ。そしておそらく「より考える」だろうとも想像している。
 
 かつての僕は、人と会話するときに「感覚」で喋っていた。口から出る言葉を論理的に選び出し組み立てるのではなく、それまでの経験に委ねた感覚で言葉を発していたような気がする。それが、ウェブで文章を書くようになってから変わってきた。それを「年をとったからだ」と言う人もいるだろうけど、年食っても感覚で喋る人はいる。やはり僕は、ひとつひとつの文字を組み立てる作業を身につけることで、「言葉」を脳で一旦整理してから排出するというプロセスを自然と覚えてきたのだと感じている。
 
 チャットというのは、メール等の文章と比べれば明らかに感覚的な会話となるだろう。しかしそれが音声でなく文字であるというだけで、人は文字を目でみて頭で読み解こうとする。返事の言葉も、顔文字びしばしで「これ何語?」というような文章は別として、普通に普通の日本語で会話をしているのなら、文字で打ち込みながらも「もっと別の表現方法があるかな」と、ふと指を止めた経験を持つ方は少なくないはずだ。
 
 耳だけでなく目を使うということが、人間の脳にとってどれだけ意味があるかは、僕にはちゃんと説明できないんだけど(おいおい)、たぶんプラス要因が多いんだろうなぁと想像しているのである。だから、音声チャットでなく文字チャットに励みましょうということになる。
 
 
 僕は趣味で書き物をしている。ネットで文章を公開しはじめたのがおよそ七年半ほど前。それ以前から、パソコンで文章は書いていた。僕がパソコンを手にした時代は、ウィンドウズなんて気の利いたものはなくて、まだまだDOSがはびこる世界でもあったのだ。いわばコマンドを文字で打ち込んでパソコンを動かす時代ね。だから、僕も初めはブラインドタッチのソフトを傍らに練習もした。しかし実際にブラインドタッチが本当に身についたのは、ネットをはじめ、チャットをはじめてからだったような気がする。
 
 いまブラインドタッチができないチャトレちゃんたちも、決して臆することはない。はじめは誰だって初心者だ。誰だって苦労して技術を身につけるのは、どの世界でも同じことなんだ。ただそこで分岐点となるのは、楽なほうへと足を向けてしまうのか、必要だからとそこで地道な鍛錬を受け入れるのかの違いだろう。冒頭で僕は、タイピングの覚束ないチャトレちゃんのことを書いたけど、一生懸命タイピングしようとしている姿を厭だと思ったことは一度もない。僕だって初めはそうだったんだから……。
 
 好きこそものの上手なれという。チャットが好きであるならば、いまは覚束ないタイピングであっても、日々頑張ってキーボードと向かい合っていけば、いつか必ず手元を見ずにキーが打てるようになる。ましてや好きなチャットという手段を利用しない手は無いだろう。おじさんも時には「声が聞いてみたいなぁ」と思うときはあるんだけど、まずは文字で、しっかりと言葉を交わしましょうね。


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ヒロイ