ヲトナの普段着

2003年12月08日(月) 恋愛における倦怠期

 恋人であれ夫婦であれ、倦怠期というのは訪れるものです。なかにはそういう時期を経ずに長年連れ添う方もいるでしょうが、倦怠期というものには、人の心のさまざまな性質が見え隠れする気がします。そしてそれは、ネットにおける儚い縁にも繋がっているように思えるんです。
 
 
 ネットという世界では、人と人とが日々天文学的数字で出逢い、そして別れてもいます。ここで出逢うと、実生活での縁より遥かに短い時間で親密になり、じつに些細なことで縁遠くもなります。仮想空間だからとか、うわべだけの関係だからとか、理屈は色々取り沙汰もされるところでしょうが、ひとつには、やはり短時間に構築された関係の希薄さが、別れの背景にあるのではないでしょうか。
 
 別れられるか否か、その判断基準も人それぞれかと推察しますが、別れられない要因の多くは、過去の経緯というものだと僕には思えます。夫婦にとって「子はかすがい」といいます。離婚に悩む人たちのなかには、子供がいることで離婚に踏み切れないという方も少なくないでしょう。それも過去の経緯です。情を交わしてきた年月が長ければ長いほど、相手との関係に終止符を打つのは難しいものです。やはり過去の経緯ですよね。
 
 ネットで男女が急速に親密になるのは、いわずと知れた「匿名性の世界であってしがらみがないから」だと僕は思うわけですが、反面、急速に親しくなった相手との間には、じっくりと時間という流れのなかで温めてきたものが少なく、それ故に別れに際してそれを引き止める要因となるべき過去の経緯も希薄だという論理になろうかと思えます。
 
 そのようなネットにおける希薄な関係の背景には、じつは恋愛における倦怠期に対する上手な処し方のヒントが隠されているように、僕には感じられるんです。
 
 
 倦怠期というものを考えるときに、まず前提としておきたいのが、気持ちが離れている状態は倦怠期とは異なるということです。ここを取り違えては話がややっこしくなってきます。されどそれを倦怠期と勘違いしている人も、意外と少なくないかもしれませんね。その辺をまずはしっかりと見極めてください。
 
 倦怠とは、文字通り飽きたりだらけたりすることです。恋愛に限らずさまざまな場面で、人の心には「慣れ」という感覚が沸き起こります。仕事もそうですし、日々の生活もそうでしょう。それらはよく「新たな刺激がないから」というニュアンスで原因を取り沙汰されるものですが、悲しいかな人生には、そうそう次から次へと新たな刺激など登場しないものなんです。倦怠期には、ある意味「ないものねだり」的な要素もあるように思えます。
 
 現在もしくは「これから」の自分を思うとき、出逢った頃に感じた燃え上がるような情感を再び得られるのだろうか。馴れ合いとなりつつある状況下で、相手は果たして本当に自分のことを想いつづけてくれているのだろうか。そのような不安や疑念が、人の心に影を落とし、倦怠期の悪い側面を見せつけようとします。どうにか事態を打開したくとも、切っ掛けも手立てもなく、悶々としたなかで空気だけが濁っていく……それが倦怠期でしょう。
 
 
 ここまで書けば、勘の良い方ならお分かりかと思います。倦怠期の背景には、過去の「良かった瞬間」のみを強調して思い出す心があって、それを未来に望もうとする願いがあるんです。そしてそこには、ふたりの関係において最も大切であるべき「過去の経緯」が、とかく忘れられがちだということです。もちろん「良かった瞬間」も過去の経緯には違いありませんが、それは一部分に過ぎないでしょう。それ以外の、いわば地道に積み重ねた関係、言い換えれば絆の深さに、意外と倦怠期においては気づかないもののように僕には思えます。
 
 人は残念ながら、常に同じテンションで未来永劫活動しつづける生き物ではありません。時に沈み、時に浮かびあがりつつ、それを繰り返して生きていくものでしょう。恋愛関係も然りです。「付かず離れず」が理想だともききますが、なかなかそういう関係を構築するのも難しく、実際は微妙にくっついたり離れたりを繰り返すものでもあると思われます。
 
 だからこそ、そのくっついたり離れたりしつつも関係が継続してきた理由を、倦怠期という時期にこそ考えるべきではないでしょうか。過去の良い瞬間だけをみず、苦楽をともに過ごした時間の流れを、じっくりと振り返る良い機会だとすら思います。慌ててはいけません、ないものねだりもいけません、自分にできること、相手がしてくれたこと、それらをゆっくりと自分のペースで熟考して、自分がいま置かれている状況を再確認してみることです。
 
 倦怠期って、意外と幸せな瞬間かも……しれませんよ。
 
 
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 次回木曜日の更新より、四回にわたって今年を振り返ることにしたいと思います。方法をあれこれ考えたのですが、手許に日々のカウント集計がありますので、それに基づき、反響が大きかったものから四つを選び出し、現在思うところを番外編としてまとめてみることにします(準備の都合上、集計は11月末日現在で行いました)。
 
 それを前に、総括を少々……。
 
 ヲトナごっこで現在公開されているコラム総数は242篇。うち、昨年著したものが154篇ありますので、今年は88篇を公開したことになります。週に二回の更新頻度で、連休等を考慮しても、90篇以上は書けるかと思ったのですが届きませんでした。それでもまずまずの数字かと自分では感じています。
 
 恋愛コラムとセックスコラムを、後半はできるだけバランスよく出したつもりなのですが、やはり前半に恋愛コラムに偏ったせいか、比率で恋愛コラムが半数に対し、セックスコラムは三割強ということになりました。
 
 ところが、反響をランキングにしてみますと、上位20のなかで恋愛コラムは4篇に留まります。これは、単純にセックスコラムのほうがタイトルからくるアクセスが多いという理由であって、コラムのテーマや内容そのものを反映しているのではない気もするのですが、読者が関心を抱いている分野という点では、やはり重要な資料であろうと思っています。
 
 されど僕としては、やはり恋愛コラムとセックスコラムのバランスをとりたいので(頑固ですみません)、ランキング上位4つということでなく、恋愛コラムから上位2つ、セックスコラムから上位2つを選び出すこととしました。
 
 今年のヲトナごっこを振り返りつつ、ご高覧下さると嬉しく思います。


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ヒロイ