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2011年04月19日(火)
「ダメなリーダー」を見分けるためのキーワード

『無趣味のすすめ 拡大決定版』(村上龍著・幻冬舎文庫)より。

(「リーダーの役割」という項から)

【人望があるとか、剛胆であるとか、忍耐強いとか、リーダーとしての資質が話題になることが多い。だが、わたしはリーダーの「資質」などどうでもいいと思う。どんなに優れた資質があっても、「何をすればいいのかわからない」リーダーは組織を危うくする。リーダーは、「どこに問題があるのか」「何をすればいいのか」わかっている人でなければならない。映画『硫黄島からの手紙』で名将として描かれた栗林忠道大将にしても「何をすればいいか」をまず把握し、海岸線の陣地を捨て山中に無数のトンネルと地下壕を掘り持久戦に持ち込んで敵を苦しめた。
「何をすればいいか」を把握したあとは、戦術の細かな優先順位を考え、組織を団結させ、リスク要因を取り除き、ひたすらゴールを目指す。相変わらずリーダーの資質が話題になることが多いのは、近代化という大きな共通のゴールがあった時代の名残りだろう。何をすればいいかが社会全体で共有されていたから、単に資質を語るのが好まれてきたのだ。「わたしはこの会社を変えます」みたいなことを言う経営者はだいたいダメな人が多い。「わたしが日本を変えます」という政治家に対し、いつもわたしは「まずお前が変われ(代われ)」と思う。どう変えるのか、そのために何をするのか、優先順位はどうなっているのか、結果が出なければどう責任をとるのか、そういった具体的なことを言わないリーダーは信頼できない。
 ダメなリーダーに共通する特徴がある。訓辞や演説や会見において主語と述語がはっきりせず修飾語を多用するのもその一つで、最近だと、「命がけで」「しっかりと」「きちんと」「粛々と」などが流行っているようだ。】

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 ああ、これはあの人のことでは……と考えてしまう話なのですが、この文章は、東日本大震災以前に書かれたものです。

 こうして言われてみると、確かに「リーダーの資質」として、まず人格を語るのは、間違っているのかもしれません。
 「リーダー向きの性格の人」というのは、たしかに、「何をすればいいのか決断する能力」を持っているのでしょうけど、どんなに「決断力」があったとしても、その人に知識がなく、まともな選択肢を持たない場合は、どうしようもありません。
 間違った方向に「決断力」だけがある人が突撃していくのは、まさに悲劇。

 「いい人なんだけど、知識や決断力がないリーダー」よりも、「人格的には問題があるんだけど、とりあえず、『みんながやるべきこと』を具体的に示してくれるリーダー」のほうが、現場としては、はるかにやりやすいのは事実です。
 「あの人、けっこう人づかいが荒いんだよなあ……」なんて愚痴りつつも、その人がいないと困る状況というのはしばしばみられます。
 『カンブリア宮殿』や『プロフェッショナル〜仕事の流儀』に出てくる「リーダー」なんて、「この人の下で働くのは、しんどいだろうなあ」という人のほうが多いくらいですし。

 もちろん、性格が良くて、「やるべきこと」もちゃんと見えている人がリーダーであれば、それがベストではあるのですが、「リーダー」を選ぶときには、性格や言葉よりも、行動を重視すべきなのかもしれません。
 とくに、みんなが何をすべきか話からくなっている「有事」の際には。

 しかしながら、村上龍さんが指摘している「ダメなリーダーを見分けるためのキーワード」にあてはめてみると、いまの日本の政治家って、ほぼ全滅なのでは……