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2010年01月05日(火)
「ロースかヒレか、どちらかひとつを選択するなら、迷わずロースを選ぶ男と結婚しなさい」

あけましておめでとうございます。
2010年が、皆様にとって良い年になりますように。


『本の雑誌』2010年1月号(本の雑誌社)の東川端参丁目さんの「本ととんかつ」というエッセイの一部です。

【とんかつは、ロースに限る。
 平松洋子『おんなのひとりごはん』(筑摩書房)によれば、<ヒレは淡々としていて、途中で飽きてくる>けれど、<ロースかつときたら脂が甘くてとろっととろけて、まるで熱くて甘いソースみたいにふわあっと肉にからまる。ひとくちひとくち、食べ心地も歯ごたえも脂と肉のからまり具合も微妙に違うので、おいしさに展開があるといったらよいか>。
 そう、ロースは「おいしさに展開がある」のだ。何もかけずにそのままでもよし、レモンを絞ってから塩やソースをかければ、さらに楽しめる。そして、何よりも魅力的なのは、サシといわれる脂肪である。脂身を味わわないのは、焼き魚の身だけ食べて皮を残すのと同様、非常にもったいない。
 ちなみに「成城のとんかつやさん」だったか、ある店主は娘に「ロースかヒレか、どちらかひとつを選択するなら、迷わずロースを選ぶ男と結婚しなさい」と常々いっていたらしい。けだし至言である。どちらを選ぶかでその男の食に関する来歴、好みやスタンスが露呈してしまうといっても過言ではない。】

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 『成城のとんかつやさん』は新潮文庫に収められている宮尾登美子さんのエッセイだそうです。
 この文章、読んでいるだけで、とんかつが食べたくなってきますよね。
 僕もとんかつは大好きなのですが、「ロースかヒレか?」と問われたら、その日の体調や空腹度によりますが、ロースを選ぶことが6割、ヒレが4割というところでしょう。「ロースとヒレが半分ずつで、両方とも味わえるメニュー」があれば、そちらを注文するかもしれません。

 このなかで、とくに僕の印象に残ったのは、
【ある店主は娘に「ロースかヒレか、どちらかひとつを選択するなら、迷わずロースを選ぶ男と結婚しなさい」と常々いっていたらしい。】
というエピソードでした。
 「ロースのほうが旨いんだから、味のわかる男を選べ」というだけの意味ではないですよね、たぶん。ロースのほうが確実に安いってわけでもないし。

 僕はこの話を「味覚」に限定したものではなく、「ヒレのような堅実だけれど単調な男よりも、長く付き合っていくのであれば、ロースのような、いろんな面がある男(そして、その多様性を楽しむ感性を持っている男)のほうが退屈しないで済む」と解釈しているのですが、それはちょっと「考えすぎ」なのかなあ。

 僕は男なので、相手が女性の場合はどうだろう?とも思うのですが、「迷わずロースを選ぶ女性」というのは、なんとなく引いてしまうような気もするんですよね。「ロースの脂は健康に悪いから、絶対にヒレ!」という女性は、もっと苦手ですけど。

 とりあえず、結婚を考える際には、ぜひ一度その相手ととんかつを食べに行ってみてはいかがでしょうか。

まあ、そういうときに限って、
「じゃあ……チキンカツ定食!」
とか言われてしまうものではありますが。