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2009年03月07日(土)
三池崇史監督が『ヤッターマン』を選んだ理由

『オトナファミ』April 2009 No.17(エンターブレイン)での映画『ヤッターマン』の特集記事より。映画『ヤッターマン』の三池崇史監督へのインタビューの一部です。

【インタビュアー:『ヤッターマン』でなく『ガッチャマン』を映画化する話もあったそうですが?

三池崇史:まあどちらも候補の一つではあったんですが、順番ってあると思うんですよ。『ガッチャマン』を実写化しても絶対まだハリウッドに勝てない。日本の映画の環境でやったところで「よくがんばったね」という結果にしかならないでしょう。ただ『ヤッターマン』は、ハリウッドで作るより絶対面白いですよ。同じお金をかけるなら絶対にそっちのほうがいい。

インタビュアー:『ヤッターマン』ならではの魅力ってなんでしょうか?

三池:やっぱりスタッフの全員に『ヤッターマン』が宿っていて、それぞれがコダワリを持っているから、自然と『ヤッターマン』ができ上がるんですよ。僕らも含めて、子供の頃『ヤッターマン』にアタマをふにゃふにゃにされた人間が世界中にいる。改めてタツノコプロの作品を観てみると、ナンセンスな中にエッジが利いていて、そういう影響を受けた我々の世代が今映画作りなんかをしているわけで、勝手にですけれども、映画化の必然性は感じましたね。

インタビュアー:では実写化するに当たって、必ず外せないポイントはどこでしたか?

三池:あえて言うならワンパターンの繰り返し。映画は2時間弱だから、だいたいアニメの3本立てですね。最初は戦いのシーンなんで1話目の途中から始まって、30分番組をくっつけていく感じ。そうすると、こういうときに絶対指令がくるよねとか、展開もおのずと決まってくる(笑)。で、結局ドロンボーが負けるわけですが、敵なんだけど愛せるキャラになってる。映画が終わったときに誰も憎むべき人がいないというか、みんな一生懸命なんだよ、みたいな(笑)。ヒーローを作るために、憎むべき相手を作らない。ひどい人間を仕立てあげないことですかね。

インタビュアー:主題歌や挿入歌がどれもほぼフルコーラスで流れるのは監督の指示ですか?

三池:そうですね。ただドロンボーダンスなんかは実際3番まであるんですが、映画では2番まで。もちろんアニメ版だと1番だけだし、映画的流れから考えても1番だけでいいんだけど、撮っていたら「やっぱり2番も聴きたい」って思って(笑)。うまくいかなくても編集でカットできると思ったんですけど、今となっては3番までやっておけばよかったなって思っています。】

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 『ヤッターマン』のアニメが始まったのは1977年。僕がちょうど小学校に入学した年でした。『ヤッターマン』は土曜日の夕方に放送されていましたから、この番組を観ながら、明日は学校に行かなくてもいいという幸せに浸っていたんですよね。

 今回、『ヤッターマン』が実写映画化されるにあたって、三池崇史監督の起用が決まったとき、僕は正直、「『ヤッターマン』の知名度頼りの低予算・粗製乱造映画になるのでは……」と危惧していたのです。まあ、そういいうのもまた『ヤッターマン』らしいと言えなくはないのですけど。
 撮影中に伝わってくるニュースも「深田恭子のセクシーな衣装に注目!」みたいなものばっかりなので、公開前から、「映画館には行く必要なし。レンタルDVDになったら、一度は観て文句つける予定リスト」に入れてしまっていました。
 でも、実際に公開日になってみて、この三池崇史監督のインタビューを読むと、なんとなく「やっぱり映画館で観てみようかな……」という気分になってきたんですよね。
 1960年生まれの三池監督は、『ヤッターマン』にそんなに思い入れはなく、あくまでも「仕事」として監督をやっているのではないかと僕は想像していたのだけれども、このインタビューでの監督の言葉には、たしかに『ヤッターマン』への愛情を感じます。「ワンパターンであること」や「主題歌や挿入歌へのこだわり」を聞くと、「三池監督、けっこうファンの気持ちをわかってるなあ」と驚いてしまいました。

 日本で映画化するなら、日本人が映画化するなら、同じ予算で『ガッチャマン』をやるよりも『ヤッターマン』のほうが面白くなる、というのもすごく納得できましたし、僕もやっぱり『ヤッターマン』映画館で観てみようと思います。鳥山明先生すら歯切れの悪い『ドラゴンボール・エボリューション』に比べたら、はるかに原作への愛情がこもった作品みたいなので。
 まあ、『ヤッターマン』だったら、ものすごくダメな映画だったとしても、それはそれで話のタネにはなりそうですしね。