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2008年06月13日(金)
『全日本仮装大賞』の驚くべき舞台裏

『人に好かれる笑いの技術』(鶴間政行著・アスキー新書)より。

(『欽ドン! 良い子悪い子普通の子』『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』『笑っていいとも!』『オレたちひょうきん族』『SMAP×SMAP』『王様のブランチ』『はなまるカフェ』『コサキンでワァオ!』など、多くの人気テレビ、ラジオ番組に参加されている放送作家・鶴間政行さんの著書の一部です)

【『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』で、番組の方針として行っていることなのですが、地方予選の時に落ちてしまった人(チーム)全員に、スタッフが時間を割いて次回も予選に来ていただくようにアドバイスをするようにしています。番組に最初から携わっている元日本テレビの神戸文彦さんが、その習慣を作りました。
 それは、司会の萩本(欽一)さんのスピリットの一つでもあります。「今回、なぜ落ちてしまったのか」「いい線をいっていたが、アイデアがもう一つ足りなかった」「ここを改良するといいかもしれない」「チームワークは良かったけど、参加人数が多過ぎたかもしれない」「参加人数が多かったら、その3倍の人数がいるかのように見せる努力をした方がいい」……といったことを、お話します。
 私はスタッフは、参加者の皆さんに予選に来ていただいたという気持ちを忘れません。正直、『仮装大賞』は、一般の方が出場するには、かなりハードルの高い番組なのです。アフターケアによって、出場者との絆ができて、出場者の意欲につながりどんどんと良い作品を生み出すきっかけになればと思っています。
 ちなみにアフターケアのおかげか再挑戦してくれえる方も多く、なかには見事、予選を突破し、本選でも合格する方もいて、その時は我が事のように嬉しいものです。
 よく放送中に合格のファンファーレを聞いて、メイクで黒くした顔から涙を流し、互いに喜び合う女の子のグループがありますが、あの涙は何回も予選にチャレンジして、練習に練習を重ねた結果、勝ち取った合格の涙のメダルなのです。
 私は裏方として見ていて、そんなシーンに思わず涙を滲ませたこともあります。】

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 2008年5月3日の放送で、80回目を迎えた『仮装大賞』。僕自身は最初の何回かはまだ子供だったこともあり、大喜びしながら観ていたのですが、最近はすっかり観なくなってしまいました。
 子供心に、「お情けで合格させてもらって涙を流す参加者」を「何がそんなに嬉しいんだろう……」と冷ややかな目で観ていた僕としては、この鶴間さんの文章を読んで、ようやく「合点がいった」ような気分になりました。

 Wikipediaの記述によると、『仮装大賞』は、【第80回まで、欽ちゃんの仮装大賞には応募総数延べ482373組の中から3532組の作品が登場している】そうです。平均すると各回6000組が予選に参加し、本選に出場できるのは、その1%にも満たないのです。これは、僕が考えていたよりもはるかに「狭き門」です。
 昔の『仮装大賞』には、「なんでこんなのが予選を通ったんだ?」と言いたくなるような作品もあったのですが、回数を重ねるにつれて常連出場者にはどんどん「予選通過のためのノウハウ」が蓄積されているでしょうから、鶴間さんが書かれているように、「一般の方が出場するには、かなりハードルの高い番組」になってきているのでしょうね。
 「一部のクイズマニア」しか勝てなくなった「視聴者参加クイズ番組」みたいなものかもしれません。

 それにしても、ここに書かれている「すべての参加者にアフターケアをしている」という話に、僕は驚いてしまいました。全国で6000組、中には、「箸にも棒にもかからない」レベルのものもたくさんあるはずです。にもかかわらず、ここまでのことをやっているとは……
 傍からみれば、かなりマンネリ化してしまった番組のようにも思われるのですが、こういう「地道なアフターケア」こそが、この番組の根強い人気を支えているのでしょうね。ここまでのことをされれば、落ちた人たちも再挑戦する気にはならなくても、番組に対して悪い感情は抱かないでしょうし。

 あの番組の「お情け合格」って、観ているとちょっと苛立たしいときもあるのですが、視聴者にとっては「たかが合格」でも、参加者にとっては、「栄光のゴール」なのか……