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2008年01月28日(月)
『魁!!男塾』の「壮絶なデモンストレーション」

『オトナファミ』2007・February(エンターブレイン)での『魁!!男塾』の作者・宮下あきら先生へのインタビュー記事の一部です。

【インタビュアー:漫画家になろうと思ったきっかけは?

宮下あきら:よく覚えてないけど、漫画以外にやれそうなことがなかったから。最初の漫画が、講談社でマガジンの新人賞とったんだよね。博打もので『サガ』っていう漫画だったかな。集英社で描くことになったのは、本宮ひろ志先生の紹介なんですよ。本宮先生と高橋よしひろ先生は、仕事場が同じだったから、両方手伝ってた。だから両先生のテイストを吸収できたね。小谷憲一も一緒にやってたかな。当時の月収は、6、7万だったけど住み込みで家賃もいらなかったしね。
 そのうち『極道高校』でジャンプデビューして、三回連続巻頭カラーって、派手に出してもらえた。本宮先生がプッシュしてくれて、トントン拍子だったね。いきなり連載を持たされたプレッシャーはあったけど、ガムシャラにやってたら20年間経ってた感じ。『男塾』でブレイクしたときも、あんまり実感なかったし。漫画に活気があった時代だから、自分の漫画だけ当たってるっていう感じじゃなかった。ジャンプが600万部刷ってて、コミックスも初版で100万部近く刷ったような時代だったからね。

インタビュアー:『男塾』が男を磨くというシチュエーションから、バトルものになっていった経緯は?

宮下:その方が人気出るじゃん。ジャンプ全盛時代で、『北斗の拳』も『キン肉マン』にしても、みんなバトルだったから。

インタビュアー:先生が一番好きなキャラは?

宮下:塾長。大豪院邪鬼より強いし、大気圏でも生きてるから。人間レベルじゃないよ(笑)。

インタビュアー:そういえば、塾長のモデルは先生のお父様なんですよね?

宮下:俺、そんなの書いたかなあ(笑)?

インタビュアー:コミックス17巻に、書いてありましたよ……。『男塾』は、キャラの人気投票によって物語が動いていくライブ感も楽しかったです。

宮下:伊達や飛燕がいつも上位だったおかげで、傷も癒えてないのにすぐ戦わせたもんなあ。

インタビュアー:個人的には男爵ディーノが好きでした。

宮下:コアだね(笑)。人気投票には入ってないんじゃない? ディーノは俺も好き。人を食ったようなところがいいんだよね。ディーノのフンドシ姿、覚えてるもん(笑)。

インタビュアー:コアなキャラといえば、回想シーンに出てきた、Jの親父が忘れられません。

宮下:S・H・P(スパイラル・ハリケーン・パンチ)で火事からJを救助するシーンとかもうめちゃくちゃだよね。

インタビュアー:そこでもしJが死んでたとしても、生き還ったんじゃないですか? 『男塾』だし。

宮下:あんまり死んだヤツいないもんね? コイツ、描いちゃったけど生きてたっけ? みたいな(笑)。途中で、記憶も混乱しちゃってさあ。週刊プレイボーイで連載した『天より高く』に男塾メンバーを出したんだけど、死んだヤツも描いちゃって(笑)。

インタビュアー:結局誰も死んでなかったんですか?

宮下:そうなっちゃったんだよねえ(笑)。

インタビュアー:先生的にアニメ版はどうでしたか?

宮下:良かったと思うよ。軍国主義はダメとか制約が多かったみたいだけどね。

インタビュアー:男塾メンバーが動物に優しくなったのは、虐待が問題視されたからでしょうか?

宮下:そもそも虐待は好きじゃないんだよ。

インタビュアー:でも初期の頃は、溶岩にウサギを投げ入れたりしてましたよね?

宮下:あれは、デモンストレーション(笑)。

インタビュアー:漫画を描く上で、ストーリーはどのくらい先まで考えているのでしょう?

宮下:1ページ。その先はワカンナイ(笑)。頑張っても3ページが限界(笑)。1話先なんて、俺には塑像もつかないね。】

〜〜〜〜〜〜〜

 なんというか、このインタビューを読んでいると、「この作者にして、『男塾』あり」なんだな、妙に納得させられてしまいます。
 『魁!!男塾』が、「週刊少年ジャンプ」で連載されていたのは、1985年から1991年で、部数的にもジャンプの最盛期。
 あの頃を思い出してみると、宮下さんが仰っておられるように、『男塾』は確かに人気漫画のひとつではありましたが、『北斗の拳』『キン肉マン』『Dr.スランプ』などの「大エース級」に比べると、若干人気が落ちる「第2グループ」に含まれていたという印象です。本誌が週に600万部、コミックスが初版100万部って、あの頃はそれが当たり前のような気がしていたけれど、今から考えると、あれはまさに「黄金時代」だったんですね……

 当時僕たちは『ジャンプ』の漫画がみんな同じような「次から次へと強い敵が出てきて、前に戦った相手が仲間になって……」という「バトル漫画」ばかりになってしまっていることにけっこう食傷していた記憶があるのですが、ここまであっけらかんと「その方が人気出るじゃん」「『北斗の拳』も『キン肉マン』にしても、みんなバトルだったから」と言い放たれてしまうと、逆に清々しいくらいです。
 少年漫画全体としては、こういう「同じような展開のバトルもの」が飽和してしまったことはマイナスだったのではないかと思われるのですけど。  実際、『男塾』って、「小田島平八である!」意外には、あんまり記憶に残ってないものなあ。『キン肉マン』とか『北斗の拳』などは、ストーリーの概略はまだ覚えているんですけどねえ。

 このインタビューの内容のすべてが「事実」かどうかはさておき、現在の多くの漫画家が「作家性」を前面に出し、「他人と違う作品を描くこと」を目指しているのと比べると、同じ「漫画家」でも、いろんな人がいて、いろんな考え方があるものだなあ、と考えさせられます。
 まあ、読者としては、「頑張って『芸術』になろうとしている漫画」「価値観や道徳を押し付けようとしてい漫画」よりも、『男塾』のいいかげんさのほうが楽しかったりもするのです。連載の後半のほうなんか、主要キャラが死んでも、「どうせ死んでないんだろ…今度はどうやって生き返るのかな?」という感じでしたし、そういうところにツッコミを入れられるのも、『男塾』の魅力のひとつだったのです。
 これを読んでいると、宮下さん自身も、けっこうその場の勢いで描かれていたようですし、「読者にウケるためなら、なんでもアリ」だと思っておられたみたいですよね。

 それにしても、現在宮下さんが雑誌で連載中の作品は、『暁!!男塾』『天下無双 江田島平八伝』と、いずれも『男塾』のスピンオフ作品なのですから、『男塾』には根強い人気があるみたいです。

 しかし、「あれは、デモンストレーション(笑)」っていうのは、まさに「『男塾』だし」としか言いようはないよなあ……