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2007年08月02日(木)
優柔不断な人への「ひとりたび」のススメ

『ひとりたび1年生』(たかぎなおこ著・メディアファクトリー)の「あとがき」の一部です。

【こんな感じで1年間、いろんなところにひとりたびに行ってみました。さいしょのほうはひとりで乗り物に乗ったり、宿に泊まったりするだけでもドキドキしてましたが、それはおかげさまでだいぶ慣れてきました。「ひとりでさみし〜」と思われてないかというまわりの目はやっぱりまだ気になってしまうのですが、そういうのはひとりで行っても気にならない観光スポットやお店を選ぶコツというのがだんだんわかってきたし、まあ多少は「ひとりでも別にいいじゃん」と、開き直れるようにもなりました。

 そしてそれよりもわかってきたのは、自分の性格です。
 私は優柔不断で、あまり自分の意見が言えないため、何人かで旅行をしているとよく「どっちでもいいよ〜」とか「なんでもいい〜」「好きなほうに決めて〜」などなど、人まかせにしてしまうクセ、というのがありました。でも自分ひとりとなると、全部自分で決めなきゃいけない…。そういうときに自分なりに考え、その後の自分の行動をよくよく見てみると、だんだん自分の好みとか、行動パターンなんかが見えてくるのです。

 ひとりたびをはじめた頃は「これ、ひとりでできるかな」というチャレンジ精神のような気持ちが大きかったですが、だんだん自分の性格や好みがわかってくると、旅のプランを練るときにも、「自分って、意外とこういうとこ好きだよね〜」とか「こういうとこは行っても疲れちゃうだけだからやめておこう」とか「たまには思いきってこういう経験もさせてみよう」などなど、甘くも辛くも自分をもてなす「自分トラベル会社」のような気持ちになってきました。こういう風に旅プランを練るのは、けっこう楽しい作業です。】

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 たかぎさんは、この作品を描くまで「ひとりたび」をしたことがなかったそうです。この本では、京都のような「女性のひとりたびの定番スポット」が紹介されている一方で、沖縄にダイビングの免許を取りに行ったとか、長野の善光寺での「朝のおつとめ体験」のような、よくこんなことひとりでやったなあ、と感心してしまうような「ひとりたび」も描かれているのです。まあ、たかぎさんにとっては「取材」でもあり、「観察者としての自分と一緒に旅をしていた」のかもしれませんが。

 僕がこの「あとがき」を読んですごく印象に残ったのは、ここに書かれている「ひとりたびの魅力」というのは、僕が実際に「ひとりたび」をしてみて感じたこととすごく似ているな、と思ったからでした。
 いや、世の中には「ひとりで旅に出ても、現地の人と積極的に触れ合ったり、すぐに旅先で友達を作れてしまう」なんていう、「ナチュラル・ボーン・ひとりたび」な人もいるのでしょう。「ひとりたびのほうが、自由でいいじゃん!」って、リュックひとつしょって世界中を旅しちゃうような。

 でも、そんな「ひとりたび大好き!」じゃない人のほうが、むしろ、「ひとりたび」から受けるインパクトは大きいような気が僕にはするのです。

 たかぎさんと同じように「誰かと一緒に旅をしていると、何でも相手任せにしがちで、ただついていくだけになりがちな人間」である僕にとっては、「ひとりたび」っていうのは、ものすごく淋しくて、不安で、恥ずかしかったのです。観光地に行っても、わき目もふらずに観光し、誰かに声をかけられたり「あの人、ひとりで来てるの?」なんて思われたくないばっかりに、顔の筋肉をひきつらせて、ただひたすらぐるぐると歩き回るばかりでした。
 ところが、ひとりでそうやって外界にさらされてみると、孤独感にさいなまれる一方で、なんというか、いままで目にも留めなかった風景や他の人の仕草に気づいてみたり、確かに「自分が本当に何がしたいのか?」というのを再発見したりすることもできるんですよね。

 だって、ひとりで旅をしていたら、自分で行き先を決めないと、何も始まらないのだから。

 誰も知っている人がいない場所にひとりきりなら、「友達が喜びそうな場所にしなきゃ」、なんて遠慮することもなく、「自分がいちばん行きたい場所」に行くんですよね、結果的に。もちろん、「どうしてもひとりじゃ行きにくい場所」なんていうのも世の中には厳然と存在していて、「ひとりでディズニーランド」なんていうのは、いくら好きでもなかなか難しいのではないかと思うのですけど。

 「ひとりたび」っていうのは、「自分はひとりでもこんなことができるんだ!」と自信をつける機会にもなりますしね。僕は大学生のとき、普段ひとりでは外食すらほとんどしなかったのに、ひとりで地元の人しか行かないような小さな居酒屋に入れてしまった自分に、自分自身で驚いたことがあります。「ひとりたび」の舞台というのは、僕のような人見知り&引きこもりな人間にも、生き延びるためにいろんな隠れた能力を発揮させるものなのでしょう。

 しかし、僕の場合は、そうして選んだ「いちばん行きたい場所」がパチンコ屋とか競馬場だったりして、後で自己嫌悪に陥ったりすることも多々あるんですけどね。交通費以上にお金遣っちゃったりして……