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2007年07月13日(金)
『ジャパネットたかた』高田明社長の「視聴者に訴える、注目されるMCのコツ」

『ダ・カーポ』610号(マガジンハウス)の特集記事「通販業界バカ売れの秘密」の「『ジャパネットたかた』高田明社長インタビュー」より。

【インタビュアー:視聴者に訴える、注目されるMCのコツとは。

高田:やはり分かりやすいことが大切です。その商品の魅力がたくさんあったとしてもそれらを全部言うのではなく、大切な一つを選んできちんと伝える。そのほかの特徴もせいぜい5項目以内にしぼって話します。また、専門用語を避けて、かんたんな言葉を使って話します。これは、英語から学んだんですよ。
 私は学生時代にほとんど勉強をしなかったけれど、英語だけは好きでした。卒業後も、最初は機械メーカーでヨーロッパを回りながら英語で商談をしていました。でね、あるとき気づいたんですよ。本当に大切な英単語は1000くらいしかないと。ごくわずかな基本的な単語だけで話したほうが、相手に大切なことが伝わりやすいんです。英語はね、上達すればするほどかんたんな単語だけでしゃべるようになります。この原理原則は、私たちがふだん使う日本語でも同じ。テレビショッピングのMCでも同じです。

インタビュアー:高田さんは商品のどんなところに魅力を感じ、MCのときに重要視するのでしょう。

高田:私はお客さまの立場で商品をチェックして、話すポイントを決めます。けっしてカタログの通りには伝えません。カタログで強調されている商品の魅力は、ほとんどの場合、メーカー側の都合です。メーカーはね、商品の性能をお客さまだけでなく競合他社にもアピールしています。でも、お客さまにとって、競合他社は関係ありません。
 例えば1200万画素の非常に性能に優れたデジタルカメラがあります。高感度高画質という意味では素晴らしい。だから、カタログにはそれが強調されています。では、使いやすさはどうか? そこに私は注目します。お客さまの立場になると、どんなに高画質でも、手ブレしやすかったり、再生に手間や時間がかかったら、いいカメラとはいえないんですよ。多くの人にとっては、900万画素であっても、使いやすくて安いカメラのほうがありがたいわけです。
 私どもが行っているショッピングは、店舗販売とは違い、お客さまにたくさんの商品から選んでもらうことができません。その分、私たちは責任を持って商品を選定しなくちゃダメです。よく検討して自信を持って選定した商品を売るからこそMCにも力が入るわけです。】

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 「ジャパネットたかた」の高田明社長は、1948年生まれで現在58歳。大学卒業後の1974年にお父さんが経営されていた「カメラのたかた」に入社し、'86年に独立し「たかた」を創業。'90年にラジオショッピング、'94年にテレビショッピングを開始。「たかた」は、'99年に「ジャパネットたかた」と社名を変更し、現在は売り上げ1000億円を超える企業に成長しています。

 僕は通販をあまり利用しないのですが、この高田社長の話を読んで「ジャパネットたかた」の人気の理由が少しわかったような気がしました。売れ残りの商品をメディアへの露出とか、高田社長のテレビ番組でのパフォーマンスで売りさばいているのだろうというイメージがあったのですけど、そういう「目に見える部分」だけが「『ジャパネットたかた』の成功の理由」ではなかったみたいです。
 凝った言い回しではなく、分かりやすい言葉で、その商品の最も魅力的なところをアピールすること。そして、「カタログ上のスペックの高さ」に頼らないこと。さらに、「どの商品を売るか」をあらかじめよく検討しておくこと。
 今の世の中、『ジャパネットたかた』を選ばなくても、ネットショッピングでさまざまな商品が手に入りますし、ちょっと電器店まで足を運べば、自分の目でそれぞれの商品を比較することができます。
 しかしながら、多くの「お客さん」は、「どれを買ったらいいか自分ではよくわからない人たち」なのかもしれません。
 パソコンやデジカメなんていうのはその際たるもので、僕のようにカタログ上のスペックにこだわりがちな人間からすれば「どうしてコストパフォーマンスの高い特定のパソコンだけが『一人勝ち』しないのだろう?」と疑問だったのですが、パソコンを買う多くの人たちにとっては、「CPUの性能」とか「ディスプレイの解像度」なんていうのは、あくまでも「たくさんある選択基準のひとつでしかない」のです。パソコン雑誌なんて買ったこともなく、「数字であらわされた性能」より、「デザイン」とか「キーボードの手触り」のほうを重視する人だって、少なからずいるんですよね。でも、電器店のスタッフの多くは、専門知識が豊富なだけに、つい、「スペック」で語りたくなってしまうのでしょう。そのほうが「詳しそうに見えるはず」だと思い込んで。

「多くの人にとっては、900万画素であっても、使いやすくて安いカメラのほうがありがたいわけです。」
 確かにその通りで、画素数が多いデジカメでも、それをフルに利用する機会っていうのはそんなに無いんですよね。メモリーカード1枚で何枚分かしか保存できなくなったり、データとしてやりとりするには重くなりすぎたりしますし。

 まあ、こうして高田社長がさまざまなメディアで「お客さまの立場になって」とアピールすることそのものが、『ジャパネットたかた』の最高の宣伝であるというのも間違いないのでしょうけど。