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2007年06月05日(火)
辛酸なめ子さんが、某大手英会話教室で「上のクラスにあがれなかった理由」

『自立日記』(辛酸なめ子著・文春文庫PLUS)より。

(辛酸なめ子さんの2000年9月16日の日記から。辛酸さんの某大手英会話教室での体験)

【英会話で、また激しい身振り手振りを強制されました。「I could read music when I was ten years old!」と叫ぶまで言わされました。かなり苦痛でした。まわりの人の笑い顔もひきつって、同情心が見え隠れしています。アメリカ人なんて全員死んじまえ(うそ)。
 クラスのあと、事務員に呼び止められ、残りポイントが少なくなっているけれど、更新はどうするかと問い詰められました、それなので「今のクラスのレベルではもうやるべきことは全部習ったし、もう限界を感じているので、一つ上のクラスになったら更新しようと思います」と言いました。
 すると、事務員はカルテを見て、「池松さんは文法や語彙には特に問題はないですが、積極性が足りませんね。これをクリアすれば上にあがれます」と言うのです。なので「日本語でも積極的に話せないのに、急に英語で積極的になどなれません。これは性格の問題なので仕方ないのですが」と言うと、「でも、英語という言語自体が、積極的な言葉なのです」と事務員は言いました。
 どうやらこのままだと、一生クラスの階層が上がることがなさそうです。絶望的になりました。】

〜〜〜〜〜〜〜

 僕は今までに何度も「英会話教室に通って、英語を身につけよう!」と決心してきたのですが、結局一度も体験入学すらしたことがありません。でも、この辛酸なめ子さんの「英会話教室での体験」を読むと、「どうせ僕に英会話教室は向いてなかったし、行ってみても続かなかっただろうな……」と諦めがついたような気がします。

 いや、確かに「会話」には「積極性」って大事だとは思うんですよね。何度か海外旅行をしてみて実感したのは、僕の「自信なさそうにボソボソと喋る、(たぶん)文法的に正しい英語」よりも、おばちゃんたちが大声で喋る単語だけの言葉のほうが、よっぽど「通じている」ということなのです。もちろん、重要な商談であるとか、学術的な話をしにいくのであれば、それなりに「正しい英語」を喋らないと相手にしてもらえないのでしょうが、「楽しく観光旅行をしたい」というレベルであれば、「ちょっとだけ正確な文法」よりも「積極性」のほうがはるかに「コミュニケーションに役立つ」のは間違いありません。

 でも、「あなたには積極性がない」という理由で英会話教室のクラスが上がらないというのは、なんだか腑に落ちない話です。僕のような「積極性のない人間」は、だからこそ、「文法や語彙」を身につけることによって、外国語でコミュニケーションするときの羞恥心を軽減しようとしているはずなのに。「英語という言語自体が、積極的な言葉なのです」って言われたら、僕などはどんなに勉強しても英語が上手になるわけがありません。学問には「積極性」が大事だっていうのは事実なんでしょうけど、真面目にやっている本人からすれば、「じゃあ、ここでは何を教えているんだ?」という気分にもなりますよね。

 そもそも、【「激しい身振り手振りを強制」されたり、「I could read music when I was ten years old!」と叫ぶまで言わされたり】することが、「積極性を向上させるためのトレーニングになる」とは、僕には全然思えないのです。こういうのって、多くの日本人生徒にとっては、むしろ英語に対する嫌悪感を助長するだけなのでは……

 ところで、「I could read music when I was ten years old!」って、いったいどう訳せばいいのでしょうか?