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2007年05月04日(金)
「エヴァンゲリオン文字」の秘密

『月刊・エヴァ3rd』(GAINAX監修・綜合図書)の連載コラム「もっと! エヴァンゲリオン」(GAINAXエヴァ主任 Y.K氏著)より。

(「エヴァンゲリオン文字」の秘密について)

【エヴァの魅力のひとつは、そのスタイリッシュさにあると言えるでしょう。たとえば、映像の構図だったり、音楽の使い方だったり、カット割りのテンポだったり、色んなことの細部まで「エヴァンゲリオン・スタイル」が貫かれています。なかでも一番判りやすいのが、「文字」の使い方。例えば、黒地に太い白抜きの文字で書かれたあのサブタイトル。TV画面に第一話の「使徒、襲来」という文字がバン!と現れたときには、「おお―、曲がってる!カッコいい!!」と、見た人みんなが痺れたもんです。
 あの文字は「明朝体(みんちょうたい)と呼ばれる書体で、正確には「マティス-EB」というフォント。ちょっと和風テイストで骨太な書体はなかなかハッタリが効きます。コントラストの強い白抜き文字をあのヘンテコな配列で並べれば、インパクトばっちりです。
 簡単に使える手法ですから、TV放映直後からいろんなメディアで太明朝体が大流行。新聞広告の見出しとか、バラエティ番組のテロップとかで「エヴァっぽい」文字デザインを見うけました。資生堂の化粧品広告にまで使われたのは、ちょっと驚きましたが。
 「簡単な手法」とは書きましたが、エヴァのサブタイトルはかなり綿密にデザインされています。文字の大きさだって一文字一文字それぞれ微妙に変えてあるし、縦横にも拡大縮小して比率が違う。トリッキーで乱暴な並べ方としているようでいて、文字間隔や全体のバランスにも気が使われてます。これは、監督のリテイク指示を何十回も受けた結果の産物。アニメ制作当時、ガイナックスの社内には印刷物を編集するセクションがあって、小規模ながら文字デザインをいじれる機材とスタッフが揃っていました。監督としては、本来アニメ担当ではない人手を使って(つまり、貴重なアニメーターの時間を使うことなく、)効果的に画面作りができたわけです。なにしろ庵野監督は「立ってる者は親でも使う」ってタイプですから…。】

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 ちなみに、『エヴァンゲリオン』のサブタイトルというのは、こんな感じです。 最近では、某資生堂「TSUBAKI」のCMで、この「エヴァンゲリオン文字」(ですよね、これはやっぱり)が使われていて、「オタク」の代名詞のような存在だった「エヴァ」の手法が、世間の「普通の女子」の流行を牽引するようなシャンプーのCMに使われるなんて、時代は変わったものだなあ、と驚いたものです。

 あの「エヴァンゲリオン文字」を最初に見たときには、確かにすごいインパクトがあったのですが、「まあ、思いつきをやってみたら流行ったって感じなんだろうな」と僕は想像していたのです。でも、こうして現場の人の話を読んでみると、あれは綿密な計算のもとに作り出されたものだったんですね……考えてみれば、「黒地に太い白抜きの文字」という条件が決まっていたとしても、その文字の大きさとか配置、フォントなど、決めなければならないことはたくさんあるわけで。あの「マティス-EB」っていうフォントじゃなかったら、あれほどのインパクトは無かったかもしれませんし。
 「黒地に白抜きの文字を並べだだけ」に見えるけれども、実際には、あのサブタイトルだけでも「何十回ものりテイク」が出されていたとのことなのです。しかも、「貴重なアニメーターの手を煩わせずに!」

 ちなみに、このコラムによると、【この折れ曲がった文字配置、実はエヴァが最初ではなく、日本映画の巨匠、市川昆監督が『女王蜂』などの映画で用いた手法がヒントらしい】とのことでした。「新しい!」って感じることも、実際は古典からヒントを得ている場合がけっこう多いみたいですね。