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2006年10月28日(土)
「カップヌードル」のロゴに隠された「配慮」

「オトナファミ」2006・AUTUMN(エンターブレイン)の記事「ブランドマネージャーが語る、カップヌードルの現在・過去・未来」より。

(日清食品のカップヌードル部ブランドマネージャー・脇坂直樹さんへのインタビュー記事の一部です)

【インタビュアー:カップヌードルを思いついた原点は何だったんですか?

脇坂:世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発明し、1958年に発売した当初から日清食品の創業者である安藤百福には「インスタントラーメンを世界の食品にしたい」という志がありました。実際、チキンラーメンは海外でテスト販売していたんですが、その合理性から期待以上の評価を受けました。そこで夢を実現するために、1966年頃に安藤が欧米に視察旅行に行き、そこで見た光景がカップヌードルの原点になっています。今でこそ当たり前ですが、向こうではコーヒーや水のディスペンサーがオフィスに置いてあり、使用済みの紙コップを捨てていたんですね。どんぶりと箸がないと食べられないチキンラーメンと、欧米の生活スタイルの簡便性との差に安藤はカルチャーショックを受けたそうです。そんなとき、アメリカ人のバイヤーがチキンラーメンを半分に割り、紙コップに入れてフォークで食べる姿に衝撃を受け、容器入り即席麺というアイデアを思いついたんです。

インタビュアー:35年間、愛され続けている最大の理由は何だと思いますか?

脇坂:商品の完成度が高いことだと思います。包装も調理器も食器も容器が兼ねていて、お湯を注ぐだけの究極の加工食品。発売からスタイルが完成されていた商品はないんじゃないでしょうか。

(中略)

インタビュアー:カップヌードルの生みの親である安藤創業者会長ってどんな人?

脇坂:現在96歳なんですが、とてもお元気です。チキンラーメンを発売したのは昭和33年、48歳のとき。開発当時は、朝5時から夜中まで研究に没頭し、平均睡眠時間は4時間だったそうです。こんな生活を丸1年間も続けてチキンラーメンを開発したバイタリティの塊のような人です。以前、世界ラーメンサミットの記者会見で「インスタントラーメンって体によくないのでは?」という意地悪な質問が出たんですが、「私は創業以来、インスタントラーメンを毎日食べてきましたが、90いくつになってもこんなに健康です」と(笑)。

(中略)

インタビュアー:(安藤会長は)まさに、ラーメンを創るために生まれてきたような人ですね!?

脇坂:現在、インスタントラーメン業界は、全世界857億食もの大産業になりました。「即席麺の歴史=安藤百福の人生」と世界中で認識されていますし、”ファーザー・オブ・ラーメン”と呼ばれています。それというのも安藤は戦後の闇市で、1杯のラーメンを求めて長蛇の列になっている光景を目の当たりにしています。事業に失敗し、無一文になったとき、その光景を思い出して、安くておいしく、手軽に食べられるラーメンを作る決意を固めた。ラーメンが食生活を新しくすることを確信して開発にとりかかったんです。

(中略)

インタビュアー:なるほど〜。これからも新商品期待してます! ……ところで、脇坂ブランドマネージャーは何味が好きですか?

脇坂:う〜ん。やっぱりレギュラーが一番。どうしてもあの味に帰ってきちゃうんだよなぁ〜。】

〜〜〜〜〜〜〜

 あまりに「あたりまえの存在」になりすぎて日頃意識することはなかったのですが、あらためて考えてみると「カップヌードル」というのは、確かに「完成された究極の加工食品」ですよね。「カップヌードル」とお湯(と箸かフォーク)があれば、世界中どこにいても同じ味のラーメンが食べられるのだから。しかも、長期間の保存が可能。

 カップヌードルが発売されたのは、1971年ですから、今年ちょうど発売35周年にあたります。ちなみに、世界初のカップラーメンである「チキンラーメン」が発売されたのが1958年ですから、袋入りで丼を用意しなければならなかった「チキンラーメン」から、容器付きの「カップヌードル」のあいだには、13年もの月日が流れています。たぶん、この13年間で、技術革新が進んでいったのと同時に「容器を使い捨てにするというのを受け入れられるくらいには、日本が豊かになった」という面もあるのでしょう。

 発売以降35年間に、さまざまな「新製品」が登場してきましたが、結局、カップ麺の世界での「カップヌードル」の地位が大きく揺らぐことはありませんでした。そういえば、僕は高校時代寮に入っていたのですが、他の寮生たちと寮監に隠れてカップラーメンを食べるとき、文句なしの一番人気は、やっぱりのこの「カップヌードル・レギュラー」だったんですよね。その時点で、すでに発売から15年以上経っていたのに。この35年の間、日清食品自身からもさまざまな「新しい味」が出ているにもかかわらず、結局、「レギュラー」が35年間ずっとこれだけのセールスを記録しているのですから、「カップヌードル」なかでも「レギュラー」は、本当に奇跡的な製品なのかもしれません。そのセールスの陰には、常に斬新なCMを送り続けるマーケティングの力も大きいのでしょうけど。

 ところで、この特集記事によると、「カップヌードル」のカップのロゴは、「ド」だけ他の文字より小さくされ、目立たなくされているそうです。これは、【発売当時の日本では「ヌードル」という言葉に馴染みがなく、消費者が「ヌード」と勘違いして敬遠しないよう、そっと配慮した】のだとか。現在の僕たちからすれば「そんなの勘違いするわけないだろ!」と笑ってしまうような話なのですが、そんなことを日清食品が本気で心配してしまうような時代からずっと売れ続けているというのは、本当にすごいことですね。