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2006年09月22日(金)
幻になった、キンチョー「コックローチ」のCM

「休みの国」(中島らも著・講談社文庫)より。

(中島らもさんが、いろいろな「記念日」について書かれたエッセイから。「即席ラーメン記念日」の項の一部です)

【即席ラーメンの元祖は、言わずとしれた「チキンラーメン」である。チキンラーメンは日清食品の創業者の安藤百福氏が大阪府池田市にあった自宅で研究を始め、1958年8月25日、商品化に成功した。いろんなフォロワーの即席ラーメンが山のように出たが、その手軽さにおいて、うまさにおいて、チキンラーメンを抜くものはついに出現しなかった。
 日清食品は今や世界的大企業である。
 コピーライターをやっていた頃、友人のカメラマンからこんな話を聞いた。
 その人が芦原橋の中華屋でラーメンを食べていると、汁の中からゴキブリが出てきた。当然、店のおばはんに文句を言う。
「おばちゃん、ゴキブリ入ってるやないか」
 するとおばちゃんはその人の背中をどんと叩いて、「わっかい者が好き嫌い言うてどないすんねん」。
 ある日、電通の堀井さん(キンチョーのCMなどで有名なクリエイター)とバカ話をしていると、偶然この話が出た。堀井さんは呵々大笑して、
「その話、おもしろい。絵コンテにしてチキンラーメンに持っていこう」
「え。堀井さん、いくら何でも日清はこのCMは受けてくれませんよ」
 堀井さんはしばらく考えた後、
「そしたらキンチョーへ持っていこう」
 結果的に、この話はキンチョーの「コックローチ」のCMとして制作され、まず九州地方でオン・エアされた。
 途端に視聴者からクレームの山。
「ごはんを食べているときにこのCMを見て気分が悪くなった」
 という人たちが大量に出たのだ。結局このCMはお蔵入りとなった。でも、おれはギャラとして30万円もらった。】 

〜〜〜〜〜〜〜

 この「チキンラーメン」商品化成功の日にちなんで、8月25日が「即席ラーメンの日」とされているそうです。多少のマイナーチェンジはされているのでしょうが、50年近くもコンスタントに売れ続けている「チキンラーメン」というのは、ものすごい商品ですよね。この10年くらいの間だけでも、多くの即席ラーメンが発売されてはあっという間に消えていったというのに。

 ところで、らもさんの話は途中から脱線して「ラーメンの中にゴキブリが入っていた話」のCM化についての思い出を書かれているのですが、そういえば、僕の地元のラーメン屋でも「ラーメンのスープの中におばちゃんの親指がドップリと浸かっていて、それを指摘したら、『熱くないからだいじょうぶ』と言われた」なんていう伝説がありました。こういう話には、おばちゃんがよく似合うみたいです。

 しかし、いくらなんでも、このネタは、日清食品のCMには厳しいですよね。少なくとも商品のイメージアップにはつながらないし、ラーメンを食べる気が無くなってしまいそうですから。これを実際に制作してみたキンチョーは、現在のCM戦略からもわかるように、かなりCMに対して冒険心が強い会社だったに違いありません。
 まあ、ネタとしてはけっこう面白いと僕も思うのですけど、確かに、テレビを視ている人にも、それぞれのシチュエーションというのがありますし、ラーメンを食べている最中の人だって視ることはあるでしょうから、抗議が殺到するのもわかります。現在だったらどうだろう、と考えてもみるのですが、やっぱりこれはちょっと難しいかな。