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2006年07月18日(火)
「どうのつるぎ」を売れない男

「勝つために戦え!」(押井守著・エンターブレイン)より。

(『ドラゴンクエスト』の勝敗論についての押井守さんと野田真外さんのやりとりの一部です)

【押井:じゃあ『ドラクエ』の話でもしようか。

野田:お願いします。

押井:言ってみればゲームだって勝負なんだから、『ドラクエ』の勝敗論も当然あるんだよ。ただね。僕は麻雀も勝つまでやめないから嫌がられてるんだけど(笑)。それはちゃんと自分の資本を投下してる。コンシューマーゲームの場合は初期投資以外に資本投下する必要もないから、つまり何回負けても痛くも痒くもないから、勝つまで続けることが可能なんだよ。
 それでもない、『ドラクエ』をいかに勝つか? という勝敗がある。何のためにゲームをするかはそれぞれ違う。じゃあどういう方法で勝つかにこだわる人間とこだわらない人間のどちらがTVゲームをやることに即しているか。例えば一番典型的なところで言うと、アイテムを売るか売らないか。いつも悩むんだよね。店で買えない装備に高い値段がつくことがあるけど、それを絶対売らないってヤツがいてさ。最初に買ったどうのつるぎだのひのきのぼうだの絶対売らないで、最後まで全部持ってるんだよ。苦労して買ったんだから俺のものんだってさ。更新したら普通前の装備売るだろうって思うけど、彼にとってはそういうゲームなの。それは獲得する形式なんだよ。僕はありとあらゆる物を売る。できるだけ身軽でいたいから薬草なんか買ったこと1回もない。

野田:それじゃすぐ死んじゃうじゃないですか(笑)。

押井:「ホイミ」を覚えるまでとにかく鍛える。手に入れた薬草はすべて売り飛ばす。そういう意味ではドラクエVで仲間にした連中をどう選抜したかも実に明快でさ。前衛4人とホイミ系4人。しかも前衛はひたすら殴り系だけで魔法系はほとんど使わなかった。最後まで殴るだけ(笑)

野田:とにかく殴り倒すと(笑)。

押井:殴りで勝ち上がる最強の兵站部隊と呼ばれてたね。1回フィールドに出ると、ホイミを全部消費するまで3時間以上かかるんだよ。そうすると街に帰る頃にはレベル2つぐらい上がるわゴールドは3万〜4万たまるわで。その金で最強の装備を追求して使わなくなったものは速やかに売ると

野田:押井さんは『ウィザードリィ』から入ってるからそういう癖がついているんじゃないですか。

押井:いや、なぜそうするかってことなんだよね。ある知り合いの小学生が、奴隷に売り飛ばされた先の洞くつで延々と石を押してたんだって。これはそういうゲームじゃなくて、ここから逃げだそうとしないとゲームは進まないんだよって教えてあげても延々と石を運んでいる。彼にとってはそういうゲームだったんだよ、それが面白いから。それは昔さ『夢工場』でさ延々と大根ぶっこ抜いて遊んでたのと同じなの
 自分の望むやり方で勝ちたいと思うか思わないか。もちろん前者のほうがゲームを楽しめる。『ドラクエ』はその幅を見越して自由度をあげているんだからね。だからこそオバサンから小学生まで楽しく遊べる不朽のシリーズなんだよ。それぞれの遊び方を許容しているから。勝つための選択肢が1つじゃないんだよね。他は細かいことをもって良さとするゲームが多いけど、敢えて『ドラクエ』みたいな自由度の高いゲームだからこそ、自分で規制するわけ。余計な装備を持たない、アイテムに頼らないって。】

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 確かに、ゲームの「遊びかた」って、けっこうその人のキャラクターが出るような気がします。そして、ゲーム好きの人ほど、そういう「自分ルール」にこだわることが多いようです。
 僕はもちろんゲーム好きではあるのですが、そんな僕から観ても「武器も防具も全くつけずに『ドラクエ』をクリア!」とか、「全アイテムを集めて、すべての敵に遭わないと、自分基準では『クリア』じゃない!」というような「こだわり派ゲーマー」には、やっぱりかなわないなあ、と脱帽するばかりでした。「そんなレベル上げとかする時間があるのなら、他の新しいゲームをやればいいのに…」とか、つい考えてしまうんですよね。そういう意味では、僕は単なる「ゲームコレクター」であって、真の「ゲーマー」ではないのかもしれません。「とりあえずエンディング観られたら十分」なんですよね基本的には。
 いや、僕だって、ずーっとちまちまとスライムばっかり倒して、全然先に進まない女の子には、「そんなチンタラやってて、何が楽しいの?」とか、つい言いたくなってしまうのですけど、それこそ、相手にとっては、「自分はこれが楽しいんだから、ゴチャゴチャ言わないで!」という気分なのでしょう。遊んでいる本人が楽しければ、それがいちばん良い「遊び方」のはずなのです。

 ところで、これを読んでいて思ったのですが、僕はゲーム内でも「捨てられない人間」なんですよね。例えば、主人公が最初に装備していた「ぬののふく」とかを、「これは最初に着ていた思い出の品だから…」というふうに考えてしまって、なかなか売れないし、捨てられない。洞くつで拾った、明らかに自分が装備しているものより弱いけど店では売ってない武器とかも、「ここで僕がこれを売ったら、世界からこの武器は永久に無くなってしまうのか…」と思うと、やっぱり捨てられない。結局、「どうぐあずかり所」はいつもギュウギュウ詰めで、周りの人に「なんでそれ売らないの?」なんて呆れられています。でも、これって僕の部屋も同じ状態なんですよね。ほんと、物が捨てられないっていう性格は、ゲームでもやっぱり変えられないみたいで。
 いっそのこと、実生活のほうに「荷物預かり所」があればいいのになあ、なんて、つい考えてしまうのですけど。