初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2006年05月25日(木)
大学入試センターは、「優しい」のか、「甘い」のか?

読売新聞の記事より。

【毎春の大学入試センター試験では、解答用紙のマークシートに受験番号をマークし忘れたり、誤記したりするミスが絶えないが、センターは1984年度入試以降、これら“うっかり受験者”を全員割り出し、「0点」にせずに通常通り採点していたことがわかった。

 今春のセンター試験でも約7000件のミスがあったが全員救済された。ミスをしたことや救済については受験生本人に知らせていない。共通一次試験が始まった1979年度入試から5年間は一律0点にしていたが、「あまりに気の毒」と方針を変えた。学力とは無関係のミスを救う「配慮」なのか、それとも「過保護」なのか。文部科学省も「難しいところ」と話す。

 今春のセンター試験は約50万人が受験し、5教科で計約350万枚のマークシートを回収した。うち0・2%にあたる約7000枚で受験番号のマーク漏れ・誤記などが見つかった。昨年度も同様のミスが約6000件あった。

 受験番号のマーク漏れなどがあると、電算処理でエラーが出て採点できない。このためセンターでは、解答用紙に記入された名前や、座席順などから受験生を割り出し、手作業で受験番号を入力してきた。

 マークミスがあったことや救済については、受験生には知らせておらず、本人は何も知らないまま2次試験に進むことになる。

 受験番号のマークミスなどがあった際の措置について、センターのホームページ(HP)のQ&Aでは「個人が特定できた場合に限り、採点します」と説明していたが、実際には全員を救済してきた。一方、受験案内では「受験番号が正しくマークされていない場合は、採点できないことがあります」とだけ記している。

 同じマークミスでも0点になるケースもある。例えば「地理歴史」の試験で、「日本史A」「世界史B」など6科目のどれを選んだかをマークし忘れると、一律0点となる。「実際の選択科目がどれか、判別不可能だから」という。英語以外の受験希望者を事前申告させている「外国語」を除いて同じ扱いで、今春入試でも5教科で計54人が0点として処理された。このミスについては「0点」になることをHPと受験案内で明言している。

 共通一次試験は当初、受験番号の記入ミスを一律0点にしていた。だが、「一発勝負の重要な試験で、あまりに酷だ」との声が上がり、センター内に委員会を設けて検討した結果、救済することを決めた。センターでは「高校3年間の学習到達度を測るという趣旨も考慮し、解答とは異なる部分のミスに限定して、教育的配慮をした」と説明している。

 一方、文科省は「大学受験生を大人とみて自己責任を負わせるべきなのか、それとも子どもと見て手を差しのべるべきなのか、判断が難しい」と話す。】

〜〜〜〜〜〜〜

 僕は朝のワイドショーでこのニュースを知ったのですが、そこでのコメンテーターたちの反応も「なんだかこれはコメントしにくいなあ…」というものでした。
 「大学入試センターも、けっこう優しいところがあるんだねえ」と感心してしまいますし、その反面、「マークミスや書き忘れというのも、本人の『実力』のうちなのでは?」という気もするんですよね。これはもう、どちらが正しいか、なんて言いきれるようなものではありません。このシステムに「救済」された人にとっては、「入試センター、ありがとう!」という感じでしょうし、逆に試験に落ちてしまった人にとっては、「もし、その人たちが切り捨てられていたら、自分が受かっていたかも…」なんていうような憤りを感じる話かもしれないし。
 それにしても、この全体の0.2%という数字は、果たして、多いのか少ないのか。僕がセンター試験を受けたときには、先生たちは、「とにかくまず先に名前を書いて、受験番号をマークして、それをしっかり確認するように」とそれこそ耳にタコができるくらいに何度も繰り返していました。たぶん、多くの受験生は、そのアドバイスを遵守していたはずです。それが正しくないと、回答の内容にかかわらず、問答無用で「0点」のはずだったのですから。
 にもかかわらず、やっぱり「受験番号のマークミス」をする人っていうのは、500人に1人くらいはいるみたいです。まあ、実際に僕が試験を受けたときの感想としては、試験中もかなり緊張していて、試験が終わってしばらく「あの答案用紙の受験番号、間違っていないだろうか…」なんて心配になっていましたから、あのときのことを思い出すと、不注意というより、緊張のあまり忘れたり、勘違いしたりしてしまう人がいるのは、けっして不思議なことではなさそうです。そして、入試センターの人たちが、人情として、こういう受験生たちを「0点」にするのに忍びないというのもよくわかるのです。
 僕個人としては、なにかと「自己責任」な世の中で、そのくらいの「甘さ」があってもいいのではないか、と思えるのです。いや、これって「生徒への救済」というのと同時に、「入試センターの職員の精神の救済」でもありそうだし。やっぱり、3年間(あるいはそれ以上)努力してきた若者たちの希望を「自己責任」で切り捨ててしまうというのは、切り捨てる側にとっても、あまり気持ちの良いものではないはずです。好きでマークミスする受験生なんて、いるわけないんだしね。

 しかし、こういう発想を突き詰めていけば、「寝坊して遅刻した受験生」だって、「解答とは異なる部分のミス」なのではないかと言われそうではあるのですけど。