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2006年04月17日(月)
エキストラ魂!

日刊スポーツ4月15日号の記事「週刊テレビライフ」(中野由喜・著)より。

【「功名が辻」のエキストラとして活躍する黒木利徳さん(43)は、俳優を目指して大学を中退し、芸能事務所のエキストラ派遣要員に登録した。これまで、約20年もエキストラ人生を歩んできた。大河ドラマでは、’01年「北条時宗」から今作まで6作連続で出演した。大河ドラマの仕事の魅力と特徴を「レギュラー出演者と違って、ある時は商人、ある時は農民、また、ある時は落ち武者や死体と、1つの作品の中でいろんな役で何度も出演できる。上を目指す私にはいい経験になり、大きな夢を見ることができる」と説明した。「功名が辻」ではこれまで、商人と武士、忍者として出演した。
 死体の役を演じる時は、腹部に息を吸い込み、まばたき1つしないように1分以上は息を止める。「理由は分からないけど、仲間の間では、死体を演じると、長生きすると言われていて、私は縁起がいいと喜んでやってます」。仏壇の遺影の写真も同様という。わらじをはいて、砂利道を歩く時は痛い顔をしない。氷点下のロケで、水が凍った川で死ぬシーンでも、寒そうな顔をしない。真夏に、重さ約20キロの鎧を着けた合戦シーンでは、暑がったりしてはいけない。どんな過酷な役でも収入に変わりはない。それでも「つらいと思ったことがない。腐らない、あきらめない。どんな状況でも明るく元気に仕事をこなす」と、画面の片隅のシーンに全力を注いでいる。】

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 こういう無名のエキストラの人たちがいればこそ、テレビドラマや映画というのは、成り立っているんですよね。それにしても、この「エキストラ魂」というのは、本当にすごいなあ。いや、主役級で高額のギャラでも貰っていれば、多少過酷な撮影だってしょうがなくやるかもしれませんが、このエキストラの人たちの収入なんて、そんなたいした額ではないはずです。有名俳優みたいに、辛いシーンの撮影のあとはみんなにねぎらってもらえる、なんてこともないでしょうし。
 この「死体を演じると長生きする」なんていう「伝説」は、ものすごくよくできた話だなあ、という気がします。いくらなんでも、「1分間もまばたきひとつしないで息を止めておく」なんていう役が「縁起が悪い」とか「早死にする」なんて言われていては、誰もやりたがらないでしょうしね。でも、このポジティブさというのは、ちょっと仕事がキツくなっただけで逃げ出したくなる僕にとっては、まさに信じられないものなのです。エキストラって、そんなに楽しいのだろうか……

 主役級からエキストラまで、「演技の世界」というのは、本当に「一度ハマったら抜けられない」魅力があるようです。それにしても、20年間エキストラ人生を続けていながら、【上を目指す私にはいい経験になり、大きな夢を見ることができる】なんて言わせてしまう世界というのは、ある意味、ものすごく罪作りでもあるのかもしれませんね。