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2006年03月19日(日)
「カーリング娘。」にとっての「オリンピックの意味」

「Number.648」(文藝春秋)のトリノオリンピックの特集「日本女子カーリングチーム・小野寺歩〜心に響いた励まし。」(松原孝臣・文)より。

(トリノオリンピックでの大活躍で一躍時の人となった、日本女子カーリングチームの小野寺歩さんへのインタビュー記事の一部です)

【インタビュアー:メダルへの思いにあるものは。

小野寺「カーリングはすごくマイナーなスポーツで、『あんなのはスポーツじゃない』とか、中傷する話も耳にしていました。自分はプライドを持ってカーリングをやっている。そう言われるのが悔しかった。それには五輪でアピールするしかない、メダルを取ってカーリングの魅力を知ってもらおう、歴史を作りたいと思って臨みました」

インタビュアー:カーリングは頭脳とともに、実は体力面もきつい競技ですよね。

小野寺「見た目より全然ハードです。全身を使います。それに試合は2時間半以上。体力がなければ集中力も続かない。だから夏場は徹底的に体を鍛え上げます」】

〜〜〜〜〜〜〜

 小野寺さんは、北海道常呂町生まれで、13歳から競技を始められたそうです。カーリングができる環境を求めて2003年に青森に移住して「チーム青森」を結成した、というような話は、ここで書かなくても、もうみんな聞き飽きているかもしれません。
 トリノオリンピックでの大活躍で、カーリング教室は大盛況となり、「チーム青森」のメンバーも「カーリング娘。」なんて呼ばれたりして大人気なのですが、この小野寺さんのインタビューを読んでいると、これまでの彼女たちの道のりは、けっして平坦ではなかったということがよくわかります。 「カーリング」という競技は、「なんだか石みたいなやつを投げて、ホウキで床をゴシゴシするやつ」というのが世間的な認識で、学校のトイレ掃除をサボるときの遊びのネタにされるとか、「なんでこんな競技がオリンピックに?」と話題にされるとか、そういう語られ方しかしてこなかったような気がしますし。僕も内心「カーリングとかだったら、自分もオリンピックに出られるんじゃないか?」なんて思ったりもしていました。

 でも、実際のカーリングという競技は、小野寺さんがここで語っておられるように、けっこう体力的にもハードなようです。試合時間が2時間半以上というだけでも、それだけの長時間集中力を切らさないだけでもけっこう大変だし、あの重いストーンを「目標に確実に投げる」というのは、かなりの筋力と正確な投擲の技術が必要になるはずです。僕は昔弓道をやっていたことがあるのですが、あれも「弓を引くだけだから、そんなに体力は要らないはず」だと思い込んでいたのですが、確実に的に向けて矢を射るためには、けっこう体力・持久力が必要なものなのです。そもそも、重心がしっかりしていなければ狙いなんて定まるわけがないし、重心をしっかりさせるためには、ある程度の基礎体力が無いとダメなんですよね。そりゃあ、スピードスケートの選手たちほどのハードな体力トレーニングではないでしょうけど。

 それにしても、今回、小野寺さんたちは、他の競技の全般的な不振もあって、「カーリングの魅力」を日本中に伝えることができましたが、彼女の【五輪でアピールするしかない、メダルを取ってカーリングの魅力を知ってもらおう】という言葉の切実さには、なんだかすごく考えさせられました。マイナー競技であるがゆえに、4年に1度のオリンピックで、しかもメダルに絡むくらいでないと「世間にアピールする機会すらない」というのは、大きなプレッシャーだっただろうなあ、って。他の大会でどんなに活躍しても、オリンピック以外では、誰もカーリングに見向きもしてくれないのだから。
 小野寺さんは、このインタビューのなかで、【ソルトレイクが終わって4年間、五輪のことを考えない日は1日もありませんでした。この4年間を1週間のために費やしてきた。】と語っています。「じゃあ、Jリーグで頑張ろう」とか「ペナントレースで活躍すればいいや」なんて言うことができない、「マイナースポーツの悲哀」が。ここにはあるのです。自分で選んだ道とはいえ、本当に大変だったと思います。
 こういう話を聞くと、なんだか、「せっかく話題になっているんだから、もうちょっと頑張ればいいのに」とか言うのも、ちょっと申し訳ないような気もしなくはないですよね。