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2006年02月25日(土)
「ウチのしのぶじゃなければ長続きしたのに」

「阿川佐和子のワハハのハ〜この人に会いたい4」(文春文庫)より。

(阿川佐和子さんと大竹しのぶさんの対談記事の一部です。大竹さんが、明石家さんまさんと離婚したときのことを振り返って。ちなみにこの対談は、2001年に行われたものです)

【大竹:さんまさんとは1年以上かけて話をして結論を出したから、そんなに険悪じゃなかったかな。でも、ハッピーではないですよね。1年ぐらいは、ほんとにこれでよかったのかとか、私がもうちょっと我慢したほうがよかったんじゃないかとか、すごく悩んでました。でも、時間が経つにつれて、これでよかったんだって思うようになったし、よく会うようになると、余計に「あ、こういうところが嫌だったんだな」って(笑)。

阿川:どういうところが嫌なの?

大竹:たとえば、バイキングに一緒に行くと、子どもとかおかまいなしに、どんどん自分で好きなもの取って来て食べ始めちゃうんですよ。それにいっぱい取ってくるから、息子が(優しい声で)「そんなに食べられないでしょう?」って言うと、(さんまさんの口調で)「ええやん、タダなんやから」って。「あ、こういうところが嫌だったんだ」と思った(笑)。

阿川:いいじゃん、そのくらい(笑)。

大竹:子どもも最近は、「ボスって、けっこう人の話聞いてないよね」とか言うから、私も「でしょ、でしょ、でしょう」って(笑)。「ああ、やっと分かってきてくれた」と思って。

阿川:野田秀樹さんとは何で別れちゃったんですか? 嫌なとこがあったの?

大竹:う〜ん、さんまさんにしても、野田さんにしても、私を裏切るとか、ホントに嫌いなところはなかったと思うんですけど……、なんかそうなっちゃったんですね。

阿川:「なんか」、ねえ。】

〜〜〜〜〜〜〜〜

 ほんと、読んでいた僕も「いいじゃん、そのくらい」と思ってしまったこのエピソードなのですが、こういうことの積み重ねで愛情というのは揺らぐこともあるのだなあ、と考えると、おちおち、バイキング料理の店にも入れません。「元を取る」とか言って、高そうなものばっかり食べている姿がみっともない、とか思われるかもしれないし。
 確かに、この「ええやん、タダなんやから」というのは、「子どもみたい」だし、「人のことも自分のこともわかってない」し、「食べ物が勿体ない」のですけど、たぶん、さんまさん自身にはそんなに悪気はなくて、家族でバイキングに来たイキオイで、ついつい取りすぎてしまっただけのことなんですよね。せっかく「食べ放題」なんだから!という気持ちは僕にもよくわかるし、それこそ、最高級レストランですら、お会計を気にせずに好きなだけ食べられるはずのさんまさんが、こんなふうに「バイキングで太っ腹になっている姿」というのには、むしろ、親近感すら感じます。でも、「あなたのそういうところが嫌だった」と言われると、些細なことだけに、かえってその亀裂は決定的なもののようにも感じられるのですよね。
 もちろん、このエピソードだけが、別れの「原因」ではなくて、この件に象徴されるような、さまざまな「考え方、行動パターンの不一致」が積み重なったものなのだとは思いますが。
 ただ、少なくともこの対談が行われた2001年の時点では、大竹さんとさんまさんは時々会って、子どもたちと一緒に食事に行ったりもしていたようです(それが、今でも続いているかどうかはわかりません)。もし、本当に別れてしまう前に、この「嫌なところの正体」がわかっていたら、なんとかなったのだろうか?とか、僕はつい考えてしまうのです。考えてみたところで、当事者であるお二人にだって、わからないことなのだろうけど。

 ちなみに、お二人が別れた当時、大竹さんのお母さんは、「さんまさんはほんとにいい人で、ウチのしのぶじゃなければ長続きしたのに」とコメントされたそうです。
 それでも、あのときのさんまさんは大竹さんじゃなければダメだったわけですから、縁というのは不思議であり、残酷なものですよね……