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2006年02月09日(木)
ある「カウントダウンパーティー」の記憶

「日経エンタテインメント!2006.2月号」(日経BP社)の飯島愛さんの対談連載「お友だちになりたい!」第46回より。ゲストは、脚本家・映画監督の三谷幸喜さん。

(映画「有頂天ホテル」に対する飯島さんの感想について)

【飯島:テンポが早くてあっという間でした。クスっと笑えるところがたくさんありましたね。日本人ってあなりパーティーをしなくなってますよね。クリスマスは彼氏と過ごすとか、年末も自宅とか。ホテルでパーティーというのは外国の発想じゃないかなと。

三谷:今はどうかわからないけど、日本のホテルも、パーティーをやっていることはやっているんですよね。行ったことありますが、全然盛り上がらないですけどね。

飯島:何に行かれたんですか?

三谷:カウントダウンパーティーです。10年くらい前ですけど、原稿を書くために年末年始をホテルで過ごしたんです。大みそかなのに自分は何をやっているんだろうと思っていたら、案内が来たんですよ。ドアの下からすっと。そういうのを読むと、同じように1人で泊まっている女性がいて、運命的な出会いをして、と思うじゃないですか。

飯島:話しかけられないんでしょう。さっき、シャイって。

三谷:もちろん、その時はたまたまぶつかって、あ、すみませんみたいな、そういう出会い。それで行ってみたら、仮装パーティーで、目を隠すやつを渡されたんです。

飯島:何色でしたか。

三谷:赤でラメの入ったやつでした。しかも、大みそかのパーティーって、だいたいカップルか家族なんですね。1人なんていないわけですよ。パーティーといっても音楽が鳴っているだけで、みんなお酒を飲んでいるけど盛り上がらないし。途中でマジックショーが始まったんですが、チープな感じでどんどん気持ちが沈んでいって。

飯島:仮面をつけながらね。

三谷:むなしいわけですよ。僕はお酒を飲めないから、炭酸水とか飲みながら、もうここにはいられないと思って、年が明ける前に部屋に戻っちゃったんです。映画のパーティーはもっと華やかだけど、大みそかにホテルに泊まった経験は生かされてますね。大みそかはどこにいても年は越すわけで、そういう意味でみんな孤独だけど一体感は感じるという。】

〜〜〜〜〜〜〜

 映画「有頂天ホテル」を観たあとで、この三谷さんの話を読むと、確かに、その「経験」が生かされているなあ、と感じます。もっとも、「映画のパーティーはもっと華やか」ということは、この実際に体験された「カウントダウンパーティー」って、かなりこじんまりとしたものだったみたいですけど。
 それにしても、いくら原稿書きで煮詰まっていたとはいえ、そんなパーティーに独りで参加するなんて、けっこう勇気というか、行動力があるなあ、と思います。10年前の三谷さんなら、今ほど顔が売れていなかったでしょうから、いろんな人に寄ってこられて大変、なんてことはないでしょうが、そういう「知り合いのいない場所」に、ぽつんと独りでいるのって、けっこう辛いものですよね。そういう孤独感って、部屋に独りでいるより、ある意味、よっぽど切実なもののような気がします。さらに、よりによって、「紅いラメ入りの目を隠すやつ」なんて渡されたら、僕だったらもう、その場で部屋にUターン確実です。いくら、「偶然の出会い」が待っているかもしれないって思ってもねえ。
 だいたい、独りで旅行とかしていると、僕もこの「運命の出会い妄想」にとりつかれることがあるのですけど、本当にそんな「運命的の人」に出会ったことなど一度もありません。女の人が近づいてきたと思ったら、「すみません、写真撮ってください」とか、せいぜいそんなもの。写真じゃないと思ったら、幸せを祈られちゃったりなんかして。

 いやほんと、パーティーというのは、知り合いがいないと淋しくて手持ち無沙汰だし、逆に、知り合いが多いと落ち着かないし煩わしい。「オシャレに生きる」っていうのは、いろいろと大変なのだなあ、と思いつつ、手持ち無沙汰と緊張で飲みすぎて悪酔いしてしまったりもするのです。