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2005年11月29日(火)
村上春樹さんの健康的な日常

「クーリエ・ジャポン」001.創刊号(講談社)より。

(NYタイムズに掲載された、村上春樹さんに関する記事の一部です)

【村上の生活は規則正しい。夜9時ごろに就寝し(彼は夢を見ることがない)、目覚まし時計なしに午前4時ごろに起きる。起床したらすぐに、マッキントッシュに向かって午前11時まで執筆する。1日の原稿料は、400字詰め原稿用紙10枚ほど。
 初稿執筆時は、まるで性格が変わってしまうみたいだと妻に言われるそうだ。文章を練っているときは、無口で気難しくなり、もの忘れも多くなる。

村上「毎日、決まった枚数を書きます。休みはとりません。一度書いた箇所に手を入れたり、物語の先を前もって書いたりすることは決してありません。ヘミングウェイもそうだったと聞いています」

 だが、ヘミングウェイと異なるのは、村上の生活が健康的な点だ。午後になると、執筆に必要なスタミナをつけるため、1〜2時間ほど体を動かす。また渋谷の古いレコード。ショップも訪れるという。ちなみに、渋谷が舞台だと思われる小説『アフターダーク』が昨秋に出版されている。
 英訳が待たれる『アフターダーク』は、カメラアイを通して、数名の登場人物たちの一夜を淡々と突き放すように語る作品である。村上のほかの作品と異なり、映画化に向いているかもしれない。自作の映画化に抵抗し続けてきた村上ではあるが、ウディー・アレンやデヴィッド・リンチが監督であれば、無条件で映画化を承諾するそうだ。】

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 いまや「日本でいちばんノーベル文学賞に近い作家」などと言われている村上春樹さん。この記事を読んで感じるのは、村上さんという人は、今まで僕がイメージしていた「作家」という人たちのイメージとは対極にあるような生活をされているのだな、ということでした。
 作家はみんな夜型で、締め切りに追われて朝まで机に向かい、夕方まで寝ている、というわけではないんですね。夜は文壇バーで飲み明かす、なんていうことも全然ないみたいだし、それどころか、この記事の中では、【「僕は日本のいわゆる文壇というところからは離れて仕事をしてきました。文壇づきあいは一切していません。今でもやはり、そういうものに対立する立場にいると思っています。】なんて仰っているくらいです。
 まあ、この村上さんの「健康的すぎる生活」というのは、少なくとも日本人作家としては稀有なものなのだろうとは思います。「いろんな人生経験を積むのが創作には必要」ということで、けっこう奔放な生活を送る作家が多いのに、【執筆に必要なスタミナをつけるため、1〜2時間ほど体を動かす。】なんていうストイックな生活は、あまりに「普通の作家」とはかけ離れている印象があるのです。「11時まで書く」っていうのを読んで、そのくらいで仕事は終わりなんて気楽な商売だなあ、と僕は一瞬思ったのですが
、朝4時から休みなしに7時間ですから、かなり集中して仕事をして、あとは頭を休めないと、身がもたないのかもしれません。
 しかし、村上さんは、こんな生活をしていて、いったいどこから小説のアイディアが浮かんでくるのでしょうか?もう、村上さんの頭の中には、「人生経験」で蓄積する必要がないほどのアイディアが満ち溢れているのかなあ…

 それにしても、僕はこの村上さんの「あまりに健康的な生活」に、「几帳面さ」と同時に「強迫観念的な、ある種の不健康さ」みたいなものを感じずにはいられないし、そういうところも含めて、やっぱりタダモノではないなあ、という気がするのですけどね。