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2005年10月29日(土)
『パックマン』ができるまで

「CONTINUE Vol.24」(太田出版)のインタビュー記事「『パックマン』を創った男・岩谷徹」より。

(現在もナムコで教育現場でのクリエイター育成、新規事業のマネジメントを担当されている、『パックマン』の生みの親、岩谷徹さんのインタビュー記事の一部です。)

【インタビュアー:で、話をいよいよ『パックマン』に進めたいと思うのですが、まず最初にうかがいたいのは、本当に『パックマン』のアイディアは、ピザが元だったのかどうか、という(笑)。

岩谷:そうです。シェーキーズでピザを頼んで、そのときに「コレだ!」と。でも、まず”食べる”ってキーワードが先にあったんですよ。

インタビュアー:ああ、そうなんですか!

岩谷:最初に女性をターゲットにしようと決めてて、女性ならファッションとか男の子の話とかかかなあ、と。でもファッションじゃゲームにならないなあって考えつつ、「女の子って、ケーキとかデザートとか好きだよなあ」と。じゃあ、”食べる”ことが、なんかゲームにならないかなっていう。そのときにたまたまピザを頼んで、1辺取ったら、パックマンのような形になった。その瞬間に「あ、コレでいいじゃないか」と。キャラクターの動きが見えたんですよ。それで家に帰って、頭の中でばーっとシミュレーションしたのを紙に書いて。

インタビュアー:そこから一気にアイディアが固まる?

岩谷:自由に動いちゃうと操作しづらいな、とか。自由度が高いというのは、難しさに直結しちゃうんですよね。じゃあ、そこからもう制限をつけちゃえ、と。ターゲットが女性ですから、4方向にしか行けません。で、レバー1本。そうなると、当然迷路の組み合わせも決まってくるんで、だいたい構造ができあがった。あとは、ただ食ってるだけじゃダメなんで、追いかけてくる敵を配置して。

インタビュアー:もう、そこはたたみかけるように。

岩谷:一気ですね。アイディアはけっこう一気にできるんですよ。『リブルラブル』のときも、そうでしたし。

(中略)

インタビュアー:海外からの反響というのは、どうでしたか?作った本人としては。

岩谷:いや、どこが面白くてやってくれてるのか、正直よくわからないんです。『パックマン』をやってて「面白い!」と思ったことはない。1面クリアするまでは遊びますけど、次の面の途中くらいで飽きるんです。これでいいやって(笑)。

インタビュアー:それはやっぱり中身がわかってるから飽きるんでしょうか?

岩谷:(小声で)というか、そんなに面白いゲームだとは思わないんだよなあ……。

インタビュアー:いまの発言はすごい!(笑)】

〜〜〜〜〜〜〜

 『パックマン』は、今年、「世界で最も成功した業務用ゲーム機」として、ギネスブックに載ったそうです。日本でも大ヒットしたゲームなのですが、とくに海外では人気が高くて、アニメ化されたり、キャラクターグッズの売り上げも凄かったのだとか。
 そういえば、僕が小学校の頃にはじめて「ゲームセンターでテレビゲームをやっている女の人」を見たとき、その人がやっていたのが、この『パックマン』だったんですよね。当時は、「女性がゲームセンターにいる」ということ自体がけっこう珍しかったので、今でも覚えているのです。
 『パックマン』のモデルが「一辺を取ったあとのピザ」だというのは、このインタビューではじめて知りました。当時はまだピザという食べ物そのものが、田舎では珍しい食べ物だったし、たぶん、あのころの僕が「ピザ」とか言われても、今ひとつイメージできなかったかもしれませんけど。
 それにしても、あの時代に「女性をターゲットに」ゲームを作るというのは、けっこう冒険だったのではないでしょうか。女性のゲーム人口は非常に少ない時代だったしね。しかしながら、あの「レバー1本」という簡単な操作系は、ゲームに慣れていない女性に対する間口を広くするための戦略で、あのドットやパワーエサ、モンスターを”食べる”ということも、それなりの戦略があったようです。確かにあの頃は、「ゲームってなんだか破壊的」「野蛮」「不良製造機」というようなイメージを持っている人が多かったのですが、そんな中、「わかりやすくて殺伐としていない世界観」を持っていた『パックマン』は、女性たちにとっても、受け入れやすいゲームだったのでしょう。
 しかし、あらためて「本当に面白い?」と言われてみると、僕も昔は、「同じような面ばっかりで飽きるなあ」と感じていたことを思い出しました。でも、ゲーマーにとってはそのくらいの難易度のほうが、きっと一般ウケするゲームになるんだろうなあ。
 もちろん、【そんなに面白いゲームだとは思わないんだよなあ…】なんて言えるのは、みんなが「面白い」と言ってくれて、大ヒットしたからこそ言える「問題発言」なのですが。