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2005年06月20日(月)
「宇宙旅行」の値段

「週刊アスキー・2005.6.21号」の連載コラム「仮想報道 Vol.389〜『日本にもあった宇宙客船計画』」(歌田明弘・著)より。

【宇宙旅行に行くためにいくらだったら払ってもいいと思いますか。『マイボイスコム』という会社がやった昨年末のネット調査では、宇宙旅行に行きたい人と行きたくない人は半々だが、行きたい人のうち100万円以上出してもいいと答えた人は33パーセント、つまり、3人に1人もいたそうだ。500万円以上となるとさすがに5パーセントに減るが、宇宙旅行にいけるのなら、かなりの額のお金を出してもいいと考えている人が相当いることになる。
 どれぐらいの期間行きたいかという質問には、数日間と答えた人が約44パーセント、1週間程度が31パーセント。もっとも短い選択肢はどうやら1日程度というものだったらしいが、そう答えた人は9パーセントしかいない。宇宙で行きたいところも宇宙ホテルとか宇宙ステーション、月と答えた人が多く、宇宙空間まで行ってすぐに帰ってくると答えた人は7パーセントにすぎない。
 前回書いたように、いま1000万円から2000万円の価格で参加者の募集がはじまっているのはまさにこの最後のパターン、宇宙空間に行ってすぐ戻ってくる弾道飛行と呼ばれるもの。’08年の開始予定でいま募集しているヴァージン・ギャラクティックの宇宙ツアーでは、飛び立つ前にホテルに泊まって雰囲気を盛り上げたりといったことはするものの、フライト全部で2時間半から3時間、宇宙空間にいるのは25分、無重力状態はわずか4,5分とのことだった。もっとも、あまり長く無重力状態でいると宇宙酔いになる心配が出てくるから、「誰でも行ける宇宙旅行」ということだと、これぐらいの時間のほうがじつは無難なのかもしれない。料金のほうも、宇宙ステーション滞在となるとさらに高くて、これまでに行った2人の民間人は日本円にして20数億円も払っている。】

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 「宇宙に行きたいですか?」
 今から25年前に、そう聞かれたら、「行きたい!」と僕は即答していたと思います。そのころは、「宇宙」という存在には、問答無用の「夢」みたいなものがあったし、「21世紀になったら、人類はみんな宇宙コロニーで生活する」なんていうことをみんな当然の未来像として受け入れていましたから。まあ、こういう発想には、「機動戦士ガンダム」とかの影響もあったのですけど。
 それにしても、大人になって、ここ十数年くらいは、「宇宙に行く」なんてことを真面目に考えたこともありませんでした。このコラムを読んで、「そういえば、昔は宇宙に行きたかったよなあ」なんて、まるで「宇宙」が「ハトヤ」であるかのような感慨に浸ってしまったくらいです。
 昔の僕は、かなり本気に「宇宙に行きたい」と思っていたんですけどね。
 その理由は、高校時代に読んだ、立花隆さんの「宇宙からの帰還」で、宇宙飛行士たちが「宇宙」を体験し、「地球」という星を外部から見ることによって、その美しさに魅せられるのと同時に、それぞれの人生観すら変わってしまった、というのを読んだからでもあるし(だって、宇宙飛行士という心の平静を保つトレーニングを受けているはずのエリートたちが、キリスト教の伝道師になってしまうようなインパクトがどんなものかって、興味がありませんか?)、「ライトスタッフ」とか「スペースキャンプ」というような映画の影響もありました。逆に、「アポロ13」を観たときには、「宇宙には、しばらく行かなくていいなあ」とも思ったのですが。

 皮肉なもので、「宇宙に行って、地球を外から見る」という体験は、現在では「常人には不可能なこと」ではなくなりつつあります。たとえ、【飛び立つ前にホテルに泊まって雰囲気を盛り上げたりといったことはするものの、フライト全部で2時間半から3時間、宇宙空間にいるのは25分、無重力状態はわずか4,5分】であっても、「宇宙体験」には違いないし、1000万から2000万というのは、「人生で他のいろんなものを犠牲にすれば、絶対に手が届かない金額ではない」のです。でも、今の僕は、1000万円あったら、オーストラリアに30回くらい行けるよなあ、とか、つい考えてしまうのです。もちろん、30回も行くわけがないとしても。

 所詮、宇宙というのは、「遠くにありて想うもの」なのかもしれません。しかし、行かなかったら行かなかったで、死ぬ直前とかに「やっぱり、宇宙に行っておけばよかった……」なんて、ちょっと後悔しそうな気もするのですが。