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| 2005年04月13日(水) ■ |
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| 「火垂るの墓」と赦されない「被害者意識」 |
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西日本新聞の記事より。
【韓国で年内に公開予定だった日本のアニメ映画「火垂(ほた)るの墓」(スタジオジブリ制作、高畑勲監督)の上映が無期限延期されたことが十二日、分かった。対日感情の悪化を考慮し、韓国のPR担当会社が決めた。韓国の日本文化開放政策によって公開されてきた日本映画は、日韓関係に比較的かかわりなく好評を博してきたとされるが、公開そのものが無期限延期されるのは今回が初めて。 作家・野坂昭如氏の原作による同作品は、終戦前後の神戸で、両親をなくした十四歳少年と四歳の妹が懸命に生きていく物語。三月末に韓国映像物等級委員会(映倫に相当)が「作品全体の公開可」とし、年内上映に向けた準備が進んでいたが、一部から「日本人を戦争被害者として描写している」との反発があったという。 一方、日韓両政府が国交正常化四十周年の今年を「日韓友情年2005」として企画した記念交流事業のうち、歌舞伎公演は今月上旬にソウル、釜山で予定通り開かれたものの、今月六日の光州公演は中止に。同事業中、最大規模の音楽イベントとして五月にソウルと大田市で開催予定だったNHK交響楽団の韓国公演は、来年六月に延期された。ただ、四百六十件以上の同事業でこれまでに中止されたのは十件にとどまっている。】
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日本では何度もテレビ放映されていますから、この「火垂るの墓」を御覧になったことがある方は非常に多いと思います。僕は正直、この作品を観るとなんとも言いようのないいたたまれなさを感じてしまうので、もう自分から進んで観たいという気にはならないのですけど。 でも、自分の子供には、一度は観せておかなくてはならない作品だと思っているのです。 映画「火垂るの墓」を観たことがある方にはわかっていただけると思うのですが、この作品は「戦争の犠牲になった、14歳の兄と幼い妹の物語」であり、特定の国に対する批判やプロパガンダではなく、「戦争」という人間の愚行の虚しさをむしろ淡々と描いています。「戦争が悪い」のはもちろんなのですが、彼らを苦しめるのはアメリカ軍だけではなく、周囲の余裕のない、冷たい人々でもあるのです。そして「戦時下」では、誰でもそういう「被害者」や「加害者」になってしまう可能性があるわけで。 例の竹島問題などもあって、【日本人を戦争被害者として描写している】なんてバカバカしい批判をする人が出てきたのでしょうが、実際に「戦争」という状況下では、ある国民がすべて「加害者」だったり「被害者」だったりするわけではない、と僕は認識していますし、それは、多くの日本人にとっての共通概念だと思うのです。そして、「被害者」というのは、特定の国民すべてがそうなのではなく、多くの場合、双方の当事国の市井の人々なのに。そもそも、まだ4歳の女の子が「日本人である」というだけで「一方的な加害者」として描かれるとしたら、そんなバカな話はないでしょう。
でもね、考えてみれば、僕たちが大好きなアメリカだって、自国内の博物館で行われるはずだった「原爆展」を「国民感情を傷つけるおそれがある」ということで中止しているのです。実は「国民に反戦感情を植え付けようとしている国」よりも、「国の都合のために死んでくれる人を増やそうとしている国」のほうが、はるかに多いのかもしれません。そういう意味では、この「火垂るの墓」という作品は、そもそも「国益にそぐわない」のかもしれないし、戦後の(現在は、残念ながらちょっと違うかな)日本というのは、歴史上類をみないほどの「反戦国家」だったでも言えそうです。 それにしても「日本にだって(もちろん、勝ったはずのアメリカやイギリスでさえ)、戦争の「被害者」はたくさんいたのだ」という事実のほうが、「日本人はみんな戦争の犬だ」という刷り込みより、よっぽど「正しい歴史認識」なのじゃないかなあ……
ああ、僕は電波ジャックをしてでも、「火垂るの墓」を世界中の人々に観てもらいたい。文句があるなら、観終わってから言ってくれ。
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