初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2005年03月13日(日)
ある「書店員」たちの、憂鬱な日常

「本の雑誌」(本の雑誌社)2005年4月号の記事「☆書店員ガス抜き座談会〜ささやかなドリームを見せてくれ!」より。

【<コミック試し読み問題>
A:コミックの帯に「試し読み歓迎作品です。ビニールパックをかけないでください」とあるのも腹立つね。ほっとけっての。
C:『団地ともお』でしょ。うちはかけてるよ。
B:直接書店に言ってほしいよね。帯に書いたら、お客さんに「この店パックかけてるよ、ひどいなあ」と思われる。別に意地悪でやってるんじゃないのに。
C:あんたたちが読んで汚して買わないからかけてるんだよっ。
A:汚す奴に限って神経質で、下から取ったりするんだよね。うちのコミック担当なんて、指紋の跡をつけてしまってすみませんって謝ってたよ。指紋一個で取り替えてって言う人もいるんだって。
B:パックのかけ方にうるさいお客さんもいますね。綺麗にかかってないと売り上げが落ちる。
C:角がきっちりしてないとか、本が波打ってるとか。
A:機械があったまってないと綺麗にできないんだよね。なんか焦げ臭いと思ったら、ビニールが丸焦げになってたって話も(笑)。

(中略)

<書店は広告展示場じゃないぞ!>
A:私が腹立つのはチラシだね。広告会社が健康飲料とかのチラシを置いてくれって来るんだよ。女性誌や健康雑誌の前に専用の什器をセットして、「ご自由にお持ちください」とやるわけ。
B:それ、お金もらえるんですか。
A:二万三万くれるんだよ。場所切り売りしたと割り切ればいいんだけど、全然関係ない商品っていうのがなあ。本の広告ならまだしも、なんかムッとする。
B:書店全体が広告スペースになってるんですよね。英会話の勧誘と一緒。嫌だけど、その料金より儲かる本があるのかって言われると、反対するのも難しい。】

〜〜〜〜〜〜〜

 本好きにとっては、憧れの職業である書店員なのですが、「好きな本を売っていればいい、気楽な商売」ではないということが、この座談会では延々と語られています。ほんと、イメージほどラクな商売じゃないことだけは間違いなさそう。
 最初の「コミック試し読み問題」なのですが、僕も「本にビニールがかかっているなんてつまらない!」と思いつつも、自分が買うとしたら、やはりビニールがかかっている本の、さらに積まれている下のほうから取ってしまうんですよね。そこまでして大事に手に入れた本を、そんなに汚さないように読んでいるのか?と言われると、ものをこぼしたり、すぐに折り曲げてしまったりするのだから、そんなにこだわる必要なんてないのかもしれませんが。よく「どんな新品でも自分で1回触ればもう中古なんだから…」と言われるのですが、それでもやっぱり「せっかく買うんだから、綺麗なものを」とつい考えてしまうのです。こだわるほど、僕そのものが清潔な存在ではなさそうなものなのですが。
 それにしても、ここに書かれているような「指紋をつけたという理由で謝った」という店員さんになると、ちょっとかわいそうだな、と思います。たぶん「保存用」として買うつもりだったのでしょうけど、そうやって保管されて、読まれない本というのも、それはそれで哀しいような気もします。それこそ、無菌室に保存されて、手袋・ピンセットで取り扱わなければならないのか、とか。
 本というのは、それだけ「人の(極端すぎるものも含めて)愛情を呼び覚ます存在である」ということなのですねえ。でもほんと、店員さんは大変。
 以前コンビニで、ビールを袋に詰めていて、お客のオッサンに「こら、ビールを揺らすな!」と怒られていた店員さんに激しく同情したことがあったのですが(だって、袋に入れるときに、ちょっと他のものにあたって傾いたくらいだったのに)、ほんと、客商売というのはレジひとつとっても侮れません。いくら「お客様は神様」と言っても……

 そして、<書店は広告展示場じゃないぞ!>の話なのですが、僕は以前から、大型書店に行くと英会話の勧誘とかの女性がいるのが、ものすごく嫌だったのです。だって、本を買いにきたのに、いろいろ話しかけられたりするのって面倒だし、ああいうのは断るのもちょっとしたパワーと罪悪感を要するので。エスカレーターを降りたところにそういう勧誘の人がいたりすると、それだけで「書店としてのプライドはどこへ行った!」とか内心思ったりしていたのです。だって、僕としては、「本屋で知らない人に話しかけられる」というのは、「そんなつもりで来たんじゃない」という気持ちだから。
 でも、ここでBさんが言っている【嫌だけど、その料金より儲かる本があるのかって言われると、反対するのも難しい。】というのを読むと、書店業界の現状が伝わってきます。実際、書店というのは、そんなに儲からない(というか、利益率が低い)商売みたいなので、それこそ、「本を売るだけではやっていけない」という面もあるみたい。人が集まる場所として、広告スペース化するのも「生き残るための手段」なわけで、書店員の人たちも内心では「本を売りたいのに…」と思っているようです。確かに「同じだけのスペースに置いて、3万円の利益をあげられる本」というのは、かなり厳しそう。客としては、甘んじてああいう広告スペースの存在を受け入れさるをえないのかもしれません。本屋がなくなるくらいなら、ねえ。
 でも、ほとんど勧誘と広告スペースの本屋なんて、絶対嫌だ…

 いずれの話にしても、書店員というのは、「本を置いて、レジでお客が来るのを待っているだけ」というような簡単な仕事ではないことだけは確かなようです。最近は、コンビニと超大型書店の板ばさみにあって、僕が昔行っていたような中小の書店は、ほとんど無くなってしまっていますし。正直、大型書店は本がたくさんあるのは嬉しいのだけど、人が多くて、なんだか落ち着かないような気もするんですけどね。本の種類がいくら多くても、いつもそんなに珍しい本ばっかり買うわけでもないんだけどなあ…