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2005年03月01日(火)
他のパパさん達みたく、仲良くやれないの?

「御暖漫玉日記」(桜玉吉著・エンターブレイン)より。

(架空の漫画家・桜タモ吉さんと妻の会話の一部)

【タモ吉:(娘に)今度の日曜日、川原に行こう

妻:あ、日曜ダメだ!タニさんとこで一寸早いけど子供らのクリスマスパーティー

タモ吉:えー、そうなのかウイーンガシ!

妻:アナタもたまには参加しない?

タモ吉:……んーーー

妻:ハナパパは、絵がうまいから、子供らから尊敬されてるしー

タモ吉:チビどもの相手だけならいくらでもするけど

妻:田中さんとこも、小野寺さんとこも、小林さんとこも、いつもパパさん来るよ

タモ吉:その小林のオヤジと酒飲みたくないんだよ。

妻:……またそんな事言う

タモ吉:あの土建屋のオヤジとはウマが合わないんだよ。前、芋煮会の時に「マンガとか小説とか、虚業で人騙してエラソーに食ってるヤツは大っ嫌いだ!」って、面と向かって言いやがった。

妻:子供の為なんだしさあ、他のパパさん達みたく、仲良くやれないの?

タモ吉:あのへん、みんな小学校からの地元つながり。今度飲んだら、多分ケンカになるよ

妻:……
  あなたほんっと、ガンコになったよねー!昔イラスト描いてた頃とか、もっと柔軟に、いろんな人と付き合えてたじゃん?

タモ吉:ゲシシッ 虚業で食えちゃってドーモすいやせーんとへりくだれと言ってる?

妻:バカだね。そうじゃなくって、今この人達とどんな目的で集まってるかを考えれば?って言ってるの!仕事の場でそんな奴がいたらケンカすりゃいいさ。でも、これ、子供らの為の集まりでしょう?酒グセがちょっと悪い土建屋のオヤジから何言われようが、フフーンて軽く受け流しとけばいいじゃない!

タモ吉:うん。あなたの言っている事が、多分正しい。
 でも…悪い。無理。】

〜〜〜〜〜〜〜

 この文章を玉吉さんの絵と一緒に読むと、その「行き場のなさ」みたいなものが、ものすごく切実に伝わってきます。「結婚というのは、当人同士の問題ではなくて、家と家との問題だ」なんていうのを聞いて「まったくもって、前時代的な発想だなあ」と以前は僕も一笑に付していたのですが、最近は、それもやはり「歴史的真実」という一面があるのだと思いますし。さらに、子供がいるとなると、ここに書かれているような、新たな「つきあい」の必要も生じてくるのですよね。「公園デビュー」なんて言葉がちょっと前に流行りましたが、小さな子供同士の関係を円滑にするためには、やはり、親同士のつきあいというのも不可欠なのでしょう。
 僕がこの2人のやりとりを読んで思ったのは、「こういうシチュエーションになったときに、自分を殺して「フフーンて軽く受け流しとく」ことができるだろうか?ということでした。確かに、奥さんが言っていることは正論で、「子供のためには、その場ではガマンする」べきなのでしょうが、実際に自分がその状況下で、自分の仕事をバカにされたり、他の親たちから疎外されても耐えられるだろうか?と考えると、僕にはそういう「大人の対応」をとれる自信がありません。やっぱり、腹が立つものは腹が立つし、いちいちケンカしには行かなくても、そういう場に参加するのは避けるだろうなあ、という気はします。その場で相手に「そんな失礼なこと言うな!」と掴みかかるというわけにもいかないのでしょうし。僕の場合、地元といえるような地元もないし…
 こういう話を聞くと、「事情がわかっている同業者同士で集まってしまう」という理由もわからなくはないのです。特権階級のように思っている人も多いのかもしれませんが、ある種の人々にとっては、確実に「自衛」のために。
 それにしても、妻の実家に子供の友達の親……
 本当は「家族水入らず」なんて、どこにもないのかもしれませんね。