初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2004年08月23日(月)
ムンクの本当の「叫び」は、誰にも聴こえない

読売新聞の記事より。

【オスロ市内のムンク美術館から、エドバルド・ムンクの代表作「叫び」など2作品が22日、強奪された事件で、犯行グループが作品を持ち去る姿が、偶然通りかかった目撃者に写真撮影されていた。
 ノルウェー警察の発表などによると、犯行グループは計3人で、覆面姿の2人が2作品を強奪、もう1人が運転する盗難車で逃走した。この車はその後、市内で乗り捨てられているのが発見された。市内の別の場所では、壊された額の破片などが散乱していた。
 美術専門家によると、「叫び」は6000万―7500万ドル(約66億―82億5000万円)の価値がある。美術館関係者は「有名すぎて売れないため、犯人は金を要求してくるのでは」と見ている。2作品は美術館の壁にワイヤでくくりつけられていただけで、非常ベルも鳴らず、犯人はやすやすと持ち去った。】

〜〜〜〜〜〜

皆様すでに御存知とは思いますが、「叫び」というのはこの絵(いちばん上、クリックすると拡大されます)です。
エドバルド・ムンクの略歴はこちらを御参照ください。

 有名な絵画を狙うというのは、アルセーヌ・ルパンからルパン3世、キャッツ・アイまで、東西の怪盗の十八番なのですが、まさか、「叫び」ほど有名な作品が、白昼堂々とこんなにアッサリ盗まれるなんて!何か裏でもあるんじゃないか?とすら勘繰りたくなるほどです。
 ノルウェーという国は、そういう点に関して良く言えばのどか、悪く言えば隙だらけなのかもしれませんが。
 おそらく、犯人たちは警備が杜撰なのを知って、この「叫び」を奪うことを思いついたのでしょうけど、この記事にもあるように、あまりに有名な絵画は、売り物にはならないですよね。もちろん絵画収集が趣味の好事家はいるとしても、誰にも見せびらかせないし(ヘタしたら、お縄ですから)、ひとりで眺めてニヤニヤするにはあまりにも暗い気分になりそうな、この「叫び」は、あまり欲しがらないかな、とも思います。
 ところで、ムンクの「叫び」というのは、美術に疎い僕ですら知っているくらい有名な作品なのですが、実際にこの絵が有名なのは、美術品として以上に、さまざまなマンガやパロディなどで、「ムンクの『叫び』のような」という比喩として、耳に手をあてて顔と体が歪んだイラストなどを見て知っている人が多いからなのではないでしょうか?「嘆き、落ちこんでいる人」の代名詞みたいな感じで、非常によく引用されている作品なのです。

 上記リンク先のムンクの略歴にもあるように、彼は【自らの絵が傷ついていくということに無頓着だった】と言われています。もちろん、それが本心だったのか、あるいは芸術家としての彼のポーズなのかは、僕には判断がつきかねますが。
 「盗まれるのも、作品の完成の一過程にすぎない」
 ムンクがもし生きていたら、そう言うかもしれませんね。

 でもね、正直なところ、この絵のことを調べていたら、僕はものすごく実物を観てみたくなったんです。今まで、ネタとしてのイメージしかなかった「狂人にしか書けない絵」の本物を。