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2004年04月21日(水)
「友情」と「恋愛」と、もうひとつの「男女の関係性」

「わたくしだから改」(大槻ケンヂ著・集英社文庫)より。

【僕はサクラが好きだ。
 サクラもきっと僕を好きなのだ。
 お互いに「好きだぜ」「好きよ」と想いを告げたこともあったかもしれないが。いやあったな。あったあった。
 しかし、サクラと僕が恋人同士かと言えばそうではない。「好き」にもいろいろある。「いろいろ」それぞれに対応する言葉がないのが困ったところだ。特に男女の関係性を表す言葉の一つが、この世の中に決定的に欠けているのは大いに困る。
 お互いを想い合う気持ちが男同士に生まれた場合、二人がホモでなければ「友情」という言葉で言い表すことができる。
 ところが男と女の間に想い合う気持ちが生まれると、「それは恋だろう」ということになり、ワクワクしたりデレデレしたりヤキモキしたり、世間で言うところの「恋愛関係」に「ならねばならない」という義務感にかられたりして、すると恋愛関係というのは何かとややこしいものであるから、付きあったはいいが双方共に妖刀村正で果たし合ったかのごとく身も心もズタズタになって、結局、「俺たち、出会わなければよかったね」などと、鼻からタバコの煙プカプカはきまくる午前二時の失恋レストランby清水健太郎……ってな悲劇が生まれることも少なくない。
 これは、男女が想い合う関係性を表す言葉が、一つ、決定的に欠けているために起こる惨劇だと思うのだ。
 この世の中には、「友情」と「恋愛」の他にも、もう一つ、男女の関係性を表す言葉があってしかるべきだと思う。
 だって実際に、それは僕とサクラの間には存在しているのだから。】

〜〜〜〜〜〜〜

 「わたしたち友達。だからセックスしません」という衝撃的な(いや、当時は本当に「衝撃的」だったんだってば)キャッチコピーのメグ・ライアンの主演映画「恋人たちの予感」が公開されたのは、1989年でした。この文章を読んでいて、あの映画のことを思い出しました。もっとも、あの映画を観ても全然結論は出なかったのですけど。

 あれから15年経っているのですが、「男と女のあいだに『友情』は成立するのか?」というのは、永遠の課題なのかもしれません。極論すれば「まったく性的欲望のない男女関係というのは成立するのか?」と。

 僕はここ大槻さんが書いてある言葉の意味、なんとなくわかります。それは僕が「恋人たちの予感」を観た10代末期ではなく、30を超えたオジサンになってしまって、性欲が減退してしまったのかもしれないし、もともとそういう欲求が薄いタイプなのかもしれないけど。

 正直なところ、僕のようなインドア系の男にとって「男同士の友情」ってやつは、いささか手に余るものです。アウトドア系の人間なら、男同士で「じゃ、キャンプに」とか「野球でもやるか」とか「女の子のいる店にレッッゴー!」という「遊び場」があるのですが、インドア系の男にとっては、「男友達」というのは、いささか持て余してしまうというか、別に休みの日にいつも会わなくても、たまに飲みにでも行って「男同士ってのもいいもんだねえ、あはは」とかいう気分を味わえれば十分だったりするわけで。
お互い信頼していても、男2人で映画とか(そりゃ、一部の映画なら、そのほうが都合がいいかもしれんけど)美術館とか観劇とかは、やっぱりなんとなくしっくり来ないのです。インドア系の男同士って、本当にやることないんだよなあ…

 「それなら彼女と行けばいいじゃん」と言われるかもしれません。しかし、その行きたい対象に彼女がまったく興味を示さなかったり、彼女そのものが存在しなければどうでしょう?そして、自分の身の周りに、気が合って、自分が観たいものに興味がある女性がいたら…

 僕はときどき思います。恋人はひとりで十分だけど、友達は何人いてもいいのではないか、そして「恋愛感情や肉体関係をお互いに追求しないから、ずっと続けられる関係」というのも存在するのではないか?」って。大槻さんも書かれていますが、恋愛というのは、なんらかの「結論」を必要としてしまう関係ですから、そこには「〜しなければならない」という状況が、遅かれ早かれやってきます。
 でも、ずっと「恋人ではない、異性の友人」でいたい、というのが、お互いの気持ちであるとは誰にも保障できないし、そういった微妙なバランスというのは、非常に脆いものなのかもしれません。

 ムシのいい話かもしれませんが、僕には彼女がいますし、もう恋人は要りません。そりゃ、今後の人生の流れによっては必要となることもありえますが、とりあえず今は。
 でも、「たまに好きな映画を観に行ったり、遊んだりするのにつきあってくれる異性の友達」が、彼女以外にいてくれればいいなあ、とは思うのです。もちろん、肉体関係ナシで。「恋愛」でなければ、結婚しなくても、別れなくても、ずっと一緒にいなくてもいいわけですから。
 ただ、そういう場合に、どちらかが「その気」になった場合にどうするんだ?というのは、常についてまわる問題です。現実的に「キライでもない、気が合う異性」が相手であれば、その時限爆弾というのは、いつ爆発するかわからない。
 そもそも「全然性的対象にならない異性」と一緒にいて楽しいのか?と問われたら、男としてはちょっと考えます。やっぱり「恋愛」と「友情」の線引きというのは難しいのかも。
 
 「友情」と「恋愛」の他にも、「男女の関係性を表す言葉」が必要だ。
 そういうのって、いちばん「男にとって都合のいい話」なんだろうなあ、というのは、なんとなくわかるんですけどね。
 なんのかんの言っても、【ワクワクしたりデレデレしたりヤキモキしたり】するのが好きな人って、けっこう多いですし。

 それでも、そういう「もうひとつの男女関係」というのは、僕にとってはひとつの理想なのです。