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2003年10月25日(土)
「視聴率」とは、いったい何なのか?

毎日新聞の記事より。

【テレビ視聴率競争で9年連続首位を続ける日本テレビ(本社・東京都港区)の男性社員プロデューサー(41)が、視聴率調査会社「ビデオリサーチ」(本社・東京都中央区)のモニター世帯の住所を興信所を使って探し出し、昨年9月〜今年9月の間に4回、自分が制作した計6番組を見るよう依頼、承諾した世帯に謝礼として5000〜1万円の商品券や現金を支払っていたことが24日分かった。視聴率操作の背景にはテレビ各局の激しい競争があり、今後、業界全体に影響を及ぼしそうだ。

◇会社指示は否定

 ビデオリサーチはモニター世帯(関東地区は600世帯)の所在を一切秘密としているが、男性プロデューサーは「興信所がビデオリサーチの保守点検車を尾行して、モニター世帯を突き止めた」などと話しているという。萩原敏雄日テレ社長は同日の会見で謝罪するとともに、社内に調査委員会を設置することを明らかにした。しかし「会社は一切関与していないし指示もしていない」と説明した。】

〜〜〜〜〜〜〜

 「視聴率とは何か?」というのは、それぞれの立場によって違います。
 テレビを観ない人にとっては、単なる数字の羅列でしょうし、視聴者にとっては、ひとつの興味の対象でしょうし、テレビ局や製作会社にとっては、「すべて」であるわけです。

 辞書的な「視聴率」とは、「ビデオリサーチ社が選んだモニター家庭(無作為抽出)のうち、何%がその番組を観ているか?」という数字。
 だから、僕が家で好きな番組をどんなに観ても、それは視聴率には反映されません。

 毎日新聞の続報では、こんな記事がありました。
【視聴率の高低はスポット広告といわれる広告料金に反映され、テレビ局の収入に直結する。業界には「シャンパン理論」という法則がある。グラスをタワー状に積み上げてシャンパンを注ぐように、利益率の高いスポット広告はまず視聴率の高い局に集まり、その局のCM枠があふれると、次に視聴率の高い局に行く。それだけに「1%でも高く」が関係者の至上命令になっている。】

 ちなみに、600件中の4件は、視聴率に直すと0.67%です。
 微妙な数字、ではありますね。
 傍からみると、そのくらいの数字の違いはたいしたことないような気もするのですが、やっぱり「不公平」であることは間違いないでしょう。
 その0.67%だって、上記の「スポット理論」からすると、大きな違いを生んでくる場合もあるわけですし。
 一番になれば、まず美味しいところをお腹いっぱいになるまで食べられます。

 それにしても、現在でも「視聴率調査」の関東地区のモニター世帯が600件しかない、というのは、ちょっと驚きました。
 もちろん、この600件という数があれば、統計学的には有意である、ということでこの数字なのでしょうけど、今回のように意図的に操作しようとすると、簡単に操作することが可能な数字なのではないかと思われます。

 仮に、60件に1万円ずつ配って、計60万円で視聴率が10%上がるなら、テレビ局にとっては、CM料の上昇で十分にペイできる金額でしょう。
 ビデオリサーチも、「不正を察知して、昨年、モニター家庭を交代した」なんてコメントを出していますから、こういう不正の可能性は、予想の範囲内ではあったってことですよね。
 このインターネット時代で、調査の機械もそんなに高額ではなくなっているわけですから、ビデオリサーチ社も、もっとモニター世代を増やせばいいのになあ、
 今のところこの業界では、ニールセンの2000年の撤退以来独占企業ですから、企業努力が足りないような気もします。

 テレビ局や製作会社のフェアプレイ頼み、ではねえ…

 ところで、視聴者にとって、「視聴率」っていうのは、いったい何なのでしょうか?
 これだけいろいろな番組が世間に溢れていると、正直、どれを観たらいいのかわからなくなりませんか?
 CDやゲームを買いに行って、「売り上げベスト10」に入っていたり、「今、売れてます!」なんて書いてあれば、とりあえず、その商品に目がいきますよね。
 それを本当に買うかどうかはさておき、少なくとも、検討対象には入るわけです。
 「これ、売れてるってことは、いいのかな?」って。
 これだけモノが溢れていると、その他大勢の商品は、検討対象にすらならない場合が多いですから、「売れている」というのは、それだけで大きな宣伝材料になるんですよね。

 ネット社会になって、「視聴率」という情報は、とくに身近なものになったような気がします。以前は視聴率の情報なんて、ごく一部のものすごく視聴率が高い番組がスポーツ新聞などで話題になる程度だったのに、現在は、誰でも簡単に、民放の連続ドラマすべての視聴率の比較なんてことができるわけですから。
 視聴率が視聴率を生む時代。
 ヤフーで「3%!」なんて報道された某TBSのドラマ群なんて、それだけで「よっぽど面白くないんだろうなあ」という先入観を持たれること請け合いです。
 もちろん、僕のような一部の好事家は、「そんなに視聴率が低いドラマって、どんなにつまらないだろう?」とか興味を持って観てみたりもするわけですが。

 「視聴率が高い」と報道されるということは、みんなの共通の話題になりやすいというイメージを与えますから、さらにその番組には人が集まってくるわけです。
 もちろん、良い物には人が集まるはずですし、良心的なテレビ業界人だってたくさんいるはずなんですけど。

 もし、「3%」の某ドラマを「視聴率30%!」とか嘘をついてマスコミがこぞってとりあげたら、それだけでもけっこう観る人がいるのではないかと僕は思います。
 だから、あんまり数字だけに踊らされないように、気をつけないとね。
 しかし、全ての番組を自分の目で観てみるなんて、絶対にできっこないのはわかってるんだけど。
 まあ、少なくとも、「そんなに公正な数字ではない可能性がある」ということは頭に入れておくべきでしょう。

 実は、「番組をごらんの皆様にだけ、素敵なプレゼントが!」っていうのも、「視聴率操作」と言えなくもないんですけどね(実際に、番組でのプレゼント商品については制限が加えられてます)。
 今回の事件とは、対象が広く浅くなっているだけの違いで。

 そういえば、視聴率とサイトのアクセス数って、けっこう似た要素があるような気がします。
 数字が多いと送り手も受け手も安心する、とか。