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2003年10月01日(水)
ダイエー王監督の孤独を救ったもの

スポーツニッポンの記事より。

【95年に福岡に赴いてから8年が過ぎた。63歳になった。選手と球団。大きな家族ができた。だが、01年12月11日には最愛の恭子夫人が他界。昨年12月には遺骨が盗まれた。開幕前。東京・円融寺の墓前で手を合わせた。「優勝するから見ていてくれよ」。東京遠征のたびに花を供えた。「形あるものはなくなってしまったが、魂はここにあるからね」。9月29日には一人で墓参りして千葉に入った。

 「父は何も言わない人なんです」。深い悲しみは二女の理恵さんにも隠した。寂しさから犬を飼おうとした。遠征で世話ができないために断念したが、その代わりに今年は5匹の金魚を飼った。水槽の中を泳ぐ金魚を眺めるときが唯一、素顔に戻れる時間だった。】

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 昨日リーグ優勝を決めた、福岡ダイエーホークス、王貞治監督についての記事です。
 プロ野球という華やかでスポットライトの当たる場所で活躍してきた王監督も、もう63歳。僕は、この記事を読んで、人間・王貞治の深い孤独を感じてしまったのです。
 別の新聞で読んだ記事なのですが、王監督は、ダイエーの監督に就任してから8年間、福岡での単身赴任生活をされています。
 一昨年に最愛の夫人が体調を崩された際には、ユニフォームを脱ぐことを考えたそうなのですが、そのとき、夫人に「あなたはの胴上げをもう一度見たい」と言われ、監督を続けることにしたのだとか。
 その奥様は一昨年の年末に亡くなられ、遺骨が盗まれるという信じられない事件に巻き込まれますた。しかし、今年、王監督はその「遺言」を果たされたわけですね。

 野球の監督というのは、「男なら誰でも一度はやってみたい仕事」なんて言われますが、実際は並大抵の苦労ではないようです。
 絶対的な権力を持っているかわりに、自分の意向がそのままチームに反映されるし、自分のちょっとした言動や好き嫌いで、選手はやる気を出したり失くしたりするし、ファンも一喜一憂。
 チームの調子が良いときは神様ですが、負けがこむとバッシングの嵐。
 そういえば、王監督も以前、まだダイエーが弱小球団だった時代には、「ヤメロ」とか騒がれて、ファンに生卵をぶつけられる事件もありました。今はもう、遠い昔話のような気がします。でも、本人は、きっとそのことを忘れてはいないでしょう。

 王監督は、親しい記者に「独り暮らしは寂しいから、何か動くものを部屋の中に置きたいんだ」と、飼っている金魚のことを話したそうです。
 遠征の多い職業ですから、さすがに犬は厳しかったのでしょう(というか、金魚でもだいじょうぶなのかちょっと心配)。

 僕も独り暮らしですから、王監督のそんな気持ち、なんとなくわかります。家に帰ったら、観る番組がなくてもとりあえずテレビを点けるのは、きっと「何か動くもの」を部屋の中に置きたいのだろうなあ、と。
 それは、CDやラジオを聴くのも同じこと。

 人間は、自分が思っているほど孤独には強くない。
 そして、自分を知らない周囲の人たちが賑やかになるほど、深まっていく孤独感というのもあるのかもしれませんね。

 家で金魚を見つめる王監督は、きっと、ひとりの63歳の男性の顔をされているんだろうなあ…
 
 とりあえず、1年間おつかれさまでした。
 あっ、まだ日本シリーズがあるのか。