即興詩置き場。

2004年03月30日(火) 卒業



卒業


三月になるとクラスメイトのほとんどが濡れていた
雨、と言ってもいいのかもしれない、粒子のような
猿、なのかもしれない本当は猿なのかもしれないね
と、語り合う口の中から粒が
             粘り気を伴った
                    皮膚の、
するするという音がする、ような気がする、最後の、
幾筋ものものもの

      (なめくじって英語で何て言ったっけ)

        痕跡が廊下に。痕跡が廊下の上に。
痕跡が廊下の皮膚の。痕跡、なのかもしれないねと、
語り合う君が代     (キリツしてセイショウ)

校門の外へ続く、あれはおそらく私たちなのだろう
いつまでも濡れたままの私たちのままでいて、
春には、新しい私たちと入れ替わって、





2004年03月28日(日) 44.バレンタイン




バレンタイン



あかいぬにあかいちょこれーと
くろいぬにくろいちょこれーと

あさぎりの
かげにかくれて
いぬたちがおどる

しろいぬにしろいちょこれーと
あおいぬにあおいちょこれーと

かおのただれた
おじいさん
ねっころがって
おきあがらない

ちゃいぬにちゃいろいちょこれーと
みどりいぬにみどりのちょこれーと





2004年03月15日(月) 43.遠浅



遠浅


大陸棚の向こうで誰かが手招きしている
見慣れない服を着て、砂っぽく笑っている
傍らには、けだものがいて、何か囁いている

規則正しい波の音が
回転する灯と溶け合っていく
灯が波の引き際のみを照らし
海は夜の中どこまでも引いていく
手招きは、罪の証だ
大陸棚の先、海溝の奥の
たくさんの死骸のことを考える
私はひとりだ
どこまでもひとりだ





2004年03月03日(水) 42.メモリーカード




メモリーカード



私たちは一葉の記憶装置だ
生い茂る木々の端で
保存することのうしろめたさを
知りながら連なっている

陽光が差すその瞬間に
私たちはいつも照れている
風の戯れに私たちは
くすぐったがり
疎ましがったり
ときには揺られながら
朽ちてゆく様に思いを馳せる

夜の私たちはとても忙しい
見えないものと
見えないことに怯えながら
ありのままをありのままに
捉えようとして失敗する
唇を噛む記憶だけが
保存されていく

葉脈と
不確かな茎を通して
私たちはつながっている
思い出を産み、浸り、
溺れていく姿を
私たちは共有する

保存することに疲れると
後を託し
自らを切り離す
形だけが朽ち
その他のすべてのものは
受け継がれていく





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