即興詩置き場。

2004年04月28日(水) ライカ




ライカ



影と
影が
重なり合うので
夜でなくても
うずくまりながら

なにかしらの気配が
ぐるぐると周回する
忘れられたまま
中心もないのに

ライカ
私の声が聞こえますか
地球の影と重なり合うので
ここからは
君の姿が見えません
ライカ
そこは寒いですか
応えのない問いかけは
とても寒いです
ここは寒いです
ライカ
君のように
はぐれています






2004年04月27日(火) かぜ・こえ・かくれな



かぜ・こえ・かくれな


風が私の輪郭をなぞる
私は風によって顕れる
その刹那
私は世界だ

世界が終わるとも
声は続く
風の意志は続く
世界は風によって名付けられ
名は風に隠されている
声は名に隠されている

風の揺らぎで私も揺らぐが
私の名は揺らがない
名は風だけが知っている
名は風に隠されている
現象は輪郭に過ぎない
内実は輪郭の中にない

私は世界だ
世界の声は
とてもかすかだ






2004年04月14日(水) 兵隊さん観察日記




兵隊さん観察日記


○月○日
家に帰ると兵隊さんが押入れでもぞもぞしている。目が合うとピシッと敬礼しながら、「人道支援です」と言う。人道支援なら仕方ないのだろう。たぶん。兵隊さんは押入れでずっともぞもぞしていた。

○月○日
「一緒にご飯食べる?」と声をかけると、「ありがとうございます。しかし安全性をはかるため現地の食物は口にしないように命令されておりますので」と丁寧に断られる。少しムカつくが命令なら仕方ないのだろう。たぶん。2人分をもぞもぞ食べる。

○月○日
部屋中が水浸しになっている。兵隊さんがやったらしい。「給水」というそうだ。迷惑な話だ。しかしいったい、誰を人道支援してるんだろう。

○月○日
夜、近所で変な音がする。兵隊さんは押入れに閉じこもっている。

○月○日
兵隊さんは押入れに閉じこもったまま出てこない。昼間にも変な音が聞こえた。

○月○日
兵隊さんは押入れに閉じこもったまま出てこない。「どうしたの?」と聞くと、「命令ですので」と返ってくる。

○月○日
兵隊さんが押入れに閉じこもったまま出てこないのにも慣れた。ニュースでやってた。とうぶん出てこないらしい。

○月○日
押入れをノックすると、ノックが返ってくる。
いてもいなくても同じかもしれないと思う。
あんな狭い場所に閉じこもってたいへんだとも思う。


○月○日
知らない間にいなくなってるかもと思いながら寝る。
そしたら夢を見た。どんな夢かは書かない。




2004年04月01日(木) 私に名前を授けてください




私に名前を授けてください



夜の霧の街灯の脇から
ほんとうに小さなものたちが湧いている
きぃきぃと
ほんとうに小さな声を上げている

いられなくなったのだねと
手を差し伸べると
爪の先から入り込んで
なんだか悲しくなるのだけれど
それはたぶん
ほんとうではない
よくわからないことがときどき起こって
そのたびに何か欠けていくような気がするのだけれど
それは欠けていくのではなく
埋められていくのだろう

頭の中でふいに呼ばれて
どこを向いていいのかわからず
首を傾げてみる
どのような名で呼ばれたのか
いくら考えても思い出せないので
きぃきぃと
つぶやいてみる
ほんとうに
小さな声で




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