水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2005年10月31日(月) 本多孝好『FIREFLY』

乳癌が再発して再入院した若い女性が、今回の依頼者。彼女に頼まれ、
勤めていた店に私物を取りに行ったことから、「僕」は彼女と1日限りの
デートをすることになり、病院を抜け出します。

タイトルの『FIREFLY』……蛍が登場するあたりから、本多孝好楢ではの
抑え気味なせつない世界にどっぷり。。本多ファンには、たまりません。



自分が死んだあと、誰かが思い出してくれるでしょうか……。
誰にも思い出してもらわなくていい、なんて強がりですよね。

死んだら、どうなるかわかりませんが、死んだら、長い安らぎの中に
入っていくのではないかと、、そんなふうに思います。
安らぎなら、それほど、怖くないでしょ?
知らない遠い国へ旅立つようなもの……でしょうか。

ひとりで生まれてきたんですから、死ぬときもひとり…
自分でも、あきれるほど強がりです。


2005年10月20日(木) 本多孝好『WISH』

死を前にした患者の願い事を何でもかなえてくれる仕事人だと思われて
いる「僕」。今回は、14歳の女の子の願いを聞いて、人探しです。
修学旅行先で知り合った大学生に、一緒に撮った写真を渡して、会いに
来て欲しいと伝えて欲しい……それが最後のお願い。

恋と呼べるほどの感情ではなくても、拙く、模糊とした感情を抱く彼女を
不憫に思う「僕」は、なんとか、大学生に会わせてあげようと奔走します。

なんて“いい人“なんでしょうか、僕。「MISSING」(双葉文庫)の『蝉の証』
に登場した僕も、いい人でした。普段なら、安易に使うのは躊躇われる
“優しい人”という言葉が素直に出てきます。同情だけでなく彼女のことを
思いやる僕の温かい気持ちが、こちらの胸にも真っ直ぐ向かってきます。

彼女が大学生に会いたかった本当の理由は──。せつない。。


もし、死を覚悟するようなことになったら、あなたは何を願うでしょうか。


2005年10月17日(月) 本多孝好『FACE』

文庫になったら読みたいと思っていた「MOMENT」。文庫になったら、
集英社文庫特別企画「MOMENT最後のお願い」大募集!ですって。

人生の最後に願いをかなえてもらえるとしたら、何をお願いしたいかを
300字内にまとめて応募すると、審査のうえ、1作品を本多孝好がその
願いをテーマに小説に書き下ろし+副賞10万円 だそうです。締切は
2005年11月30日消印有効、詳しくは集英社のサイトでどうぞ。
文庫本には応募ハガキがついてきます。

「MOMENT」は、病院で清掃員のアルバイトをする「僕」に、患者たちが
最後の願いを寄せてくる4話の連作短編集です。舞台は病院なのに、
末期患者がその胸の内を明けるのが、ドクターでもナースでもなく、
なぜ「僕」で、人は最後に何を思い、その願いはかなうのでしょうか。

最初の願い『FACE』──死を間近にした患者の願いをかなえてくれる
人がこの病院にいるという噂を「僕」に教えてくれた老人は、戦争中に
自分が殺した下士官の家族の暮らしぶりを見てきて欲しいと頼みます。

願いというより依頼は、途中から予想外の方向へ。
礼儀正しく慎重に言葉を選ぶ好青年の「僕」が強く印象づけられました。


2005年10月08日(土) 山田詠美『シャンプー』

短編集「姫君」(文春文庫)悼尾を飾る『シャンプー』、これもなかなか
良かったです。14歳の空(そら)ちゃんが語る離婚した両親のこと、隣の
クラスの智幸くんのこと、お父さんの新しい恋人のこと……うんうん頷き
ながら読んでいくうちに、空ちゃんがとても愛しく思えてくるんです。

中学生の空ちゃんの素直な気持ちは、子どもらしくもあり、大人でもあり。
ハッとさせられる言葉には、こちらもニヤリとしてしまいます。

さすが、詠美さま、鋭いです。
──過去をおだてているのよ──いつか、使いたいので覚えておきます。

──重荷なしで生きてくなんて、ぼくには出来ない──カッコいいー!

ふと、思ったんですけど、責任とか義務とかって、煩わしい反面、生きて
いく支えみたいなものなんです。誰かの重荷になるのも悪くないですよ。
受け止めてもらえるのなら。


2005年10月02日(日) 山田詠美『姫君』

表題作『姫君』、あとから、ほんわりきました。良かったですよ。

これもひとつの純愛ですか?高慢で女王様気取りの姫子と、定食屋で
働くまじめな摩周のお話です。ふたりの出会いは、食堂街の路地裏。
ゴミバケツを開けていたホームレスの姫子を摩周が連れて帰ったこと
からふたりの暮らしは始まります。

傍若無人な姫子の態度に摩周は腹を立てることもなく、それどころか、
痛めつけられるほどに嬉しそうな摩周。。。いじめ役といじめられ役に
徹するふたりは、恋人たちには見えなくても、もっと深いところで、強い
絆で結ばれていきます。そして、ラストは出会い以上に……。

支配しているようで、実は、支配されている関係に気づくとき、いろんな
ものが見えてくるのかもしれないですね。愛とか恋とかだけじゃなくて。

朧月夜の出会いから、季節はめぐり、再び春へ。さりげない描写の中に
暑さ寒さが自然に感じられて、ふたりの1年をそっと見守った感じです。


支配といえば、以前書いたような気もしますが、「別荘と愛人は大変だ」
と、誰かの本で読んだことがありました。支配しているつもりが、逆に
支配されてしまう。所有物に振り回されることになるということらしいです。
お持ちの方は、ご用心!


水野はるか |MAIL
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