Journal
INDEX|back|next
| 2003年12月24日(水) |
たとえそれが幻想であっても。 |
●気がついたら、クリスマスイブだった。稽古場のケータリングにケーキが置いてあったり、帰り道、駅デパートの食品売り場から長い行列が外まではみ出していたり(ケーキと、洋総菜と、チキンの行列!)。みんな、クリスマスに思い入れがあると大変だなあ。 大学に入って、東京で一人暮らしを始めてから、ずっとこの業界にいるものだから、どうも社会の暦とずれてわたしは過ごしている。土日もないし、盆休み正月休みも特にないし、ゴールデンウィークとかクリスマスも同じこと。若くてあんまり仕事がない時は、そういう時はずっとバイトしてたしなあ……。 気が楽、といえばそう。でも。何やら世間から遠く離れているような寂しさを覚えなかったと言えば、嘘。若いときは、けっこう賑わいに背を向けてすねてた気がする。大体、何かを否定するってことは、何かに囚われているってことだから。 それもなあ、この年になってみれば、ずいぶん楽になっちゃって。かつてのヴィヴィッドな世間への反発みたいなものが、懐かしかったりもする今日この頃。 ●クリスマスイブだから、世間が穏やかで幸せかと言えば、ちーっともそんなことはなくって。なんだか満員電車の中はいつもより殺気だっていた気がする。降車客が降りきる前に、身体をがんがんぶつけて侵入してくる乗車客たち。鞄があたって、「ちっ!」と舌打ちしていく女の子。子供連れを前に眠ったふりする若いサラリーマン。 余裕がないのが、年末。 ついつい振り返ってしまうのが年末。 自殺者続発の、年末。 クリスマスである前に、今は年の瀬で、このはっきりしない、面倒な小さな国では、弱い人が余裕を持って暮らすことが難しい。 クリスマスっていう、共同幻想の日くらいは、一人でも多くの人の胸にぽっと灯の点る瞬間があって欲しいと、願ったりもする。

|