陸橋...東風

 

 

今日もとても空が青かった。 - 2010年08月11日(水)

繋ぎ止められなかった命があった。
私よりも若かったのに。
搬送された日から最期の瞬間まで、関わることができたけれど
失ったものは、とても大きい。

空は今日もとても青い。
あの子ももう一度、見たかっただろうなと思う。
ここ2日、本当にずっと働きづめだったので
私はあの子のために泣くことが無かった。

麻酔科部長によく解らんことで怒られて
疲れているのも相まって、一気にいろんなことが悲しくなった。

そしてあの子を思うと泣きたかった。

そうやって隠れて泣いているところを、尊敬している救急部長に見つかった。
隠そうとしたのだけど、時既に遅し。
結局理由を白状させられる羽目になった。

でも結果的に聞いてもらえて良かったし
多分私はその先生に聞いてもらいたかったんだろうな、と思った。
それにしても。
その先生は基本的に「優しい」という言葉からは無縁に感じられる人なのだが
結構私は接する機会が多いせいか、いろんな面が見えてきた。
無骨なのだけれど、実は常に見えない優しさがある。
全員のことを、見てないようで一番見ている。
そしてその分析はほぼ完璧だ。

多分これまで出会った医者の中で、最も信頼できる人だと思った。
こういう上司に出会えたことは、本当に幸運なことだと思う。


私があの子のことで泣いていたことを
多分理解してくれる男の先生は、この部長だけだろうと思う。
こういう病院で、一人の死に捕らわれてしまうことを
この先生は恐らく許してくれるようだ。

例え「それでは救急病院ではやっていけないよ」と言われても
死を悼む心を忘れてまで、私は医者でいるつもりはない。
改めてそう思った。


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