月の輪通信 日々の想い
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2004年08月17日(火) 初めてのアプコ

昨夜、帰省先から戻って、子供たちの就寝時間はかなり遅くなってしまったのだけれど、今朝はアプコが早朝出勤。
朝、8時45分からの短期のスイミングスクールの初日なのだ。
グダグダと一向に起きてこない雑魚寝の子どもたちの中から、寝ぼけ眼のアプコをピックアップ。
とりあえず、朝ごはんを食べさせて、ブンと車に乗せる。
それでもなんとなくぼーっと寝ぼけ顔のアプコ。
初体験スイミングスクール、大丈夫か。

今日行くスイミングスクールは、アプコのお友達のTちゃんが普段通っているスクール。本当はアプコもTちゃんと一緒に通常のスイミングを習いたいらしいのだが、送り迎えの時間的余裕がないのと経済的理由で通わせていない。それでも小学校に上がる前に、水に顔をつける事くらいは・・・と、とりあえず短期教室で様子を見る。最近はスイミングに通っている子がとても多くて、小学校の授業のプールでも「顔漬けレベル」からだとちょっとしんどいのだ。

水着のアプコを先生に預け、親はガラス越しに参観。体操とシャワーを終えて、2人の女の先生に連れられて7,8人の園児が入ってくる。
プールの水面にカラフルなボールをたくさん浮かせて、先生の持っているかごに集めるというような、簡単な水慣らしから教室が始まった。
初めてのプール、初めての先生に硬い表情のアプコ、気まじめに言われたことだけはこなしているが、楽しいんだか楽しくないんだか、外から見ている分には見当もつかない。
そういえばアプコ、幼稚園の先生以外の先生に付いて習い事をするのも初体験、緊張するのも当たり前なんだな。
上の3人を育てて、幼児期の成長過程を経験してきた私にとっては、なんでもないことがアプコにとっては初体験。このスイミングスクールだって、上の子達を何度も通わせた私にとっては知っている場所だけど、アプコにとっては始めての場所、初めての人、初めての経験なのだ。

一時間あまりのレッスンを終えて、出てきたアプコは妙に無口だった。
「面白かった?」と聞いても、フンフン頷くばかりで返事が出ない。
さては凹んだかなと、顔色を伺いながらスクールを出たが、駐車場で車に乗るなり、
「おかあさん!今日、初めて、ワニさん泳ぎができたよ!」
とぱっと表情が明るくなった。
「女の先生、面白かったよ。泣いてる子ももいたけどアタシは平気だったよ。帰るとき、バスタオルが見つからなくて遅くなったよ。名前書いといてね。明日も来る?明日も同じ先生?ああ、おなかすいた・・・・」
堰を切ったように喋る、喋る。ハイテンションでまくし立てる。
とりあえずとても楽しかったようだ。どうやら、スクールの建物の中では、まだ、緊張が続いていたらしい。

今日の昼ご飯は焼きそばがいいというので、帰りにスーパーで焼きそばの麺と豚肉を買って帰る。
うちの中では母の不在をいい事に、ついさっきまで寝倒していたらしい子ども達。朝ごはんも食べたんだか食べなかったんだか、ダラダラとけだるい空気が流れている。
朝からアプコと一仕事終えてきた母は、ばたばたとみなを急き立て、朝、やりそこなった家事を大急ぎでやっつけ、昼ごはんに取り掛かる。
「朝ごはん、遅かったから、お昼ご飯は軽くていいよ。」というので、トーストやサラダで簡単に済ませちゃおう。
「アプコ、おいで、お昼だよ。おなかすいたね。」
と、アプコを呼ぶと、あらら、べそをかいてる。
「・・・・焼そばっていったのに。」
はぁ、忘れておりました。
いつもなら、「いいから、パンにしといてよ。」というところだけれど、あんまりアプコが凹んでいるので、面倒だけど1人分だけ焼そばを作る事にする。どうせならと、コンロの前に踏み台を置いて、アプコに焼そばの麺を開けさせ、フライパンの中へ入れさせる。ジュージュー熱い焼そばを緊張した面持ちでかき混ぜるアプコ。
出来上がった焼そばはお肉もキャベツも入らない超シンプルなものだったが、アプコ大満足で完食。たちまちゴキゲンも直ってしまった。

夜になって、アプコ、母の耳にこそっと耳打ち。
「あのな、今日はアタシ、『はじめて』ばっかりの日やったで。
ワニさん泳ぎ、初めてやろ?それから、火、使うお料理も始めてやろ?
明日も、いっぱい『はじめて』があるかなぁ。」

スイミングも焼きそばも、母にとっては何でもない、いつもの日常の一こま。上の子達ですでに経験した既知のことに過ぎない。
けれども、末っ子姫の6歳のアプコにとっては、はじめての冒険、はじめての快挙なんだなぁ。
どきどきしたり、わくわくしたり、口数が減るほど緊張したり・・・。
そんなふうにいつも新しい今日を生きているアプコのまぶしさ。
そしてまた、明日の「はじめて」を期待して、胸躍らせながら眠りに付くアプコのたくましさ。
子どもの持つパワーは、本当に頼もしいと思う。
当たり前の日常の繰り返しに倦むことなく、些細な「はじめて」にこころ躍らせる柔軟な感性。
そのおすそ分けをもらって、母の日常もまた、楽しい。
「はじめてのアプコ」を見つけて喜ぶ今日の私もまた、「はじめての母」の感性を持ちたいと思う。


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