silly talk
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| 2002年07月12日(金) |
嵐事情 ||||| 其の弐 |
「三蔵?……どこ行くんだ?三蔵」 気を抜くと見失ってしまいそうな後ろ姿は、見慣れたとは言えあまりに素っ気無い。普段から、身長差によるコンパスの違いはもとより生来の性格の違いも手伝って、二人の歩く速度にはかなりの差がある。加えて今日の三蔵は悟空のことを顧みようとしていない。それが近付いてくる嵐の……雨の気配のせいだということは、悟空にとって考えるまでもなく確固たる一つの事実として明らかなことだった。
ガン!……カン、カン、
寺中どこを歩いても、補強作業の音が喧しい。常日頃『静謐』なぞという言葉を愛用し暇さえあれば悟空を叱りに来る高僧も、穏やかさを存分に含めた笑みでもって作業をゆったりと眺めている。急ぎ足でその脇を通りすぎながら、悟空はその姿に理不尽さを覚えずにはいられなかった。 小走りの足は止めず、くん、と鼻を鳴らす。漂ってくる雨の匂い。回廊から眺め渡せる西の空を一瞬立ち止まって眺めた。その間も先へと進んでしまった三蔵の背に慌てて追いつき、言う。 「さんぞ、雨、もうすぐ来るぞ?」 三蔵は立ち止まりも、返事すらもしない。執務室から続く執拗なまでに長い回廊を、ただ黙々とわき目も振らず歩き続けていく。マジでどこに行く気なんだ、とひとりごちた悟空の目の前で、突然三蔵が沈んだ。 「……三蔵?」 気付けばそこは広い寺院の端の端とも言える場所で、回廊の隅、手摺の切れたくぼみにはまるようにして、壁に寄りかかり、外を向いて三蔵は腰を下ろしていた。運動不足が心配されるテの僧侶から見れば随分と長い距離を歩いたことになるが、三蔵も悟空もまさかこの程度の運動で音を上げるような柔な身体の作りはしていない。かと言ってただの暇つぶしのために三蔵がこんな外れまで来るとは思えないため、最初からここが目的地だったのだと推察される。 彼の意図を掴みかねて、悟空は黙って立ち尽くした。 雨の匂いは、もう誰にでもわかるほどに濃くなっていた。微かに響く雷の音。蒸し暑い、纏わりつくような空気が押し寄せてくる。悟空はただ三蔵を見つめた。補強作業の音ももう聞こえない。そんなにもここが外れた場所なのか、作業も終わるほど長い時間が経ったのか――― いたたまれなくなった悟空は、三蔵と背中合わせになるような格好でしゃがみ込んだ。三蔵に触れないぎりぎりのラインまで近付いてゆるく膝を抱え、彼の反応を窺う。 「…俺さ、雷、見たいんだけど」 いつの間に火を点けたのか、マルボロの煙を深く長く吐き出して、三蔵は応える。 「言っただろう、濡れ猿も焦げ猿も御免だ」 「ずっとここにいたら濡れも焦げもしねーって」 言うと同時に、思いきり三蔵の背中に体重を預ける。 「けど三蔵がそこに座ってたら、俺何も見えねーじゃん」 「知るか。てゆーか退け。立ってりゃ見える」 「ヤだ。三蔵だけ特等席なんてズリィ」 互いに引く気がないのは百どころか千も万も承知で、無言のままで争いを続ける。
嵐まであと一歩。緊迫した激しさを内に隠して演じきられた沈黙は、もうまもなく破られる。
========= キリトリ ========= キリトリ ========= キリトリ ========= キリトリ =========
・・・話進んでないじゃん。(爆)1回書くのに2時間弱かかる川原って一体・・・ひょっとして死ぬほど遅筆?うぁ。 もうしばらくお付き合い下さい。多くてもあと2回では終わらせないと場所がないですし。にしてもこの文体妙に気に入った・・・!(笑)
2002.07.16 22:55
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