連日連夜パーティだのクラブだの、日本にいる時は滅多に行かないところに行きまくっておりますが、今日は最高だった。やっとアリとカストロのゲイバーへ行きました。裸の女たちが踊るトランスセクシャルのバーだの男たちが一物を見せながらぶらぶらしてるセックスクラブだのなんてどうだっていい。私が来たかったのはここだ! カストロでも人気のバーを二件巡りましたが、ハーヴェイズ(多分ハーヴェイ・ミルクから取ったんだろう)とバッドプレイスだったかな。そもそも家の前の通りを道なりにまっすぐ来るとあの通りに出るのかって点がまず驚きでした。マガジンで調べてハーヴェイズは土曜の夜ドラッグクィーンのパーティがあることは知ってましたが、なんだかライブみたいで楽しかった。男たちがあんなに一体となって楽しげにしている姿を見るのは、気持ちがいいもんだ。私たち以外にも、ちらほら女性連れや夫婦の姿がありました。もちろんレズビアンも。お次のバッドプレイスは長い列。列の大半を占めてるのは男同士のカップルですが、男女や女女も。私はアリと一緒だったので、その中間というとこでしょうか。そこで起こった出来事はなかなか忘れられそうにない。私たちが並んでいると金髪の女性が話しかけてきました。少し話し合い、名前を名乗りあったりしてるうちに、彼女が連れの女の子を呼び寄せました。その子は明らかに何か渋ってる様子で、金髪の子を睨むようにしてました。私たちは写真を撮り合ったりしてたんですが、そのうち入口が近づき、IDなんかを用意してると、後ろの女の子が私に話しかけてきました。その時すぐに彼女がレズビアンだとわかったんですが、なんとも表現できないんですが、ビビビッときた。マニッシュすぎないレザージャケットと短めの髪で、すごく笑顔がきれいでした。中に入るとすさまじい混雑ぶりですぐに別れてしまいましたが、朝方マクドナルドを出てタクシーを待ってる時に酔いがさめ始めて気がついた。最初の女性の二人連れが私たちに話しかけてきたのは、フレンドリーだったからじゃない。並びたくなかったからだと。彼女たちは私たちの前に割り込んでバーに消えてゆきました。そのことをアリに言ったら、彼女はニヤリと笑って「私は知ってたわよ。賢いよね」と言ってました。私はなんだかがっかり。片割れが渋ってたのは、「こんなことすべきじゃない」ってサインだったわけだ。でもそれを思うと、後ろにいたレズビアンの女性は損得なしに私にあの情熱的な視線を向けてくれました。名前を名乗り、私の名前を尋ねました。こっちへ来て感じたことは、たくさんのゲイの男たちと話す機会があったけれど、彼らがどんなに親切でフレンドリーでも、その眼の中にある種の情熱の炎はない。セックスクラブで追っかけてくる男たちの眼の中には情熱はあっても、それは単にセックスがしたいからで、人間的なあたたかい感情とは程遠い。それがうざったくなくて居心地良くもあるんですが、今日彼女の眼の中に情熱的なものを見出して、とても胸が熱くなりました。もし誰かがあんな眼で見つめてくれるなら、相手が男か女なんて簡単にどうでもよくなりそうです。 さてバーですが、最高。もう最高。この場所で一番肝心なことは、なるべく男たちと眼を合わせないことです。一昨日会った素晴らしいトランスセクシャルの男性が言いました。「ゲイはゲイのもの、レズはレズのもの、トランスセクシャルはトランスセクシャルのものなのよ」と。なるほどその通りだ。一番印象に残ってるのは、トイレを出た時のこと。ダンスフロアから遠ざかったバスルームの横の暗い通路で、ふたりの男が情熱的なキスを交わしていました。一人がもう一人を壁に押し付け、何度も。BbMのイニスとジャックの再会のシーンみたいな。 私もハイテンションだったので、アリを後ろから抱きしめるようにして踊りました。 アリですが、今日でなぜ彼女がゲイバーが好きじゃないかとくとわかった! 理由は簡単。彼女が世界の中心になれないからです。今日もまたアリに関してはムカつくこと百回でした。だからゲイバーで彼女が男たちから求められてない姿を見るのは気分がよかった(笑)。つまり、カストロのゲイバーは、男が男を求める場所だということです。中には女がいることを面白く思っていない男もいると思いますが、そういう男は、アリに対しても素っ気無いんですよ。それがどれほど彼女にしてみれば屈辱的か。一歩カストロから外へ出ると彼女を求める男たちが溢れかえっているというのに、彼女が一番求めている類のハンサムで若い男たちは、彼女に見向きもしない! なんという皮肉! わっはっは! それじゃスラッシャーの私とかわらないじゃないか。だから彼女はばからしいセックスクラブだのトランスセクシャルバーに行くんですよ。だから今日またセックスクラブへ行った帰りに言ってやりました。「アリ、今日気付いたんだけど、カストロのゲイバーには最高の男たちが集まってるよ。それに比べたらあんたの好きなセックスクラブやトランスセクシャルバーに集まってくる男どもは、掃き溜めだね。年寄り、移民、醜男、みんなまともな女は相手にしない類の男ばかりだよ」とね! でも実際そうなんですよ。イースターの日は特別でしたが、今日なんか、クラブにはハンサムな男は一人もいなかった。そりゃそうだ、不自由してなければあんなとこに誰も来ない。売春婦を買う男にそうそう美男子がいないのと同じ。 ところで、一昨日アリとグラシアとマクドナルドに行った時、アリの友人の店員のトランスセクシャルの男性(仕事中は男性)と話しました。彼は素晴らしかった。グラシアさえ、私に「OMG,トランスセクシャルってどいつもこいつもアホタレだと思ってたわ……彼はスマート」と耳打ちしたほどです。彼の人生観、向上心について、アイデンティティについての話には胸打たれました。その時グラシアも、私は朝が来ると今日も戦いに行こう、と思う。今のクラスで黒人は私ひとりで、それを理由にカリカチュアで何人かの生徒がグループを代りたがったのを知っている。でも今では皆友達だ。リカルドやアンディも最初は私を典型的な黒人だと思って接してきたけれど、いつも自分の意見をしっかり述べて誠意を持って人と接することで、まわりは変わった、と話していました。グラシアは素晴らしい女性です。でも、とても保守的なキリスト原理主義者です。彼女に会えたことはこの旅の大きな収穫でした。クリスチャンとしての彼女の話を、彼女がどんなに高徳な人でも、鵜呑みにすることはできません。私には違う意見がある。彼女は毎日アリのために祈ってるといいます。アリが悪い行い、つまり同性愛から足を洗って女性を愛するようになるようにと。私は彼女に、「男同士の間に本当の愛は存在すると思うか」とたずねました。彼女は「存在しない」と言いました。同じことをアリに尋ねると、「絶対に存在する」と言っていました。グラシアの考えを、私は恐ろしいと思う。でもそれと同じくらい強く、彼女が素晴らしい女性であることは間違いないと思います。 こんな話をしていると、アリは顔を伏せて眼を涙で濡らしていました。私はこの街に小説を書くために来ました。でももしも私たち三人が言ったことを、ある日アリが理解し、心を入れ替え、バカな真似をやめて、一人前の女性に成長し、誇りを持って故郷の家族に会いに帰る日が来るとしたら、もちろんそれ以上に、素晴らしいドラマはありません。
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