- Daily *萌* -
DiaryINDEX|past|will


2006年03月19日(日) ブロークバックは真夜中に観ろ!

今日はやっと札幌でも解禁になったBBMを二回観てきました。
以前書いた私の感想にちょっとした訂正を加えたいと思います。以下、ラストシーンを含むネタバレです。



↓ネタバレ↓

四回目を観てとても感動的だと思ったのはアルマ・ジュニアの存在でした。彼女は父親っ子なんですよね。一般的に言えば不幸な家庭に育ったと言えるかもしれませんが、何かを背負っていてそのことを決して話そうとしない寡黙な父親をとても愛しています。キャシー(ケイシー)と三人で会った時のジュニアは家庭問題を抱えているために浮かない顔をした少し影のある少女でしたが、ラストでは晴れやかな笑顔を見せます。
前回の感想で、私は「ラストではイニスに変化の兆しが現れている」と書きましたが、これは少し楽観的過ぎる解釈だったかもしれません。
イニスは最初から一貫して与えられた仕事を黙々とこなす男でした。アルマや娘たちはそんな父親の実直さ、不器用さを呆れつつも愛していたんだと思います。だからこそ、ジャックが尋ねてきた時、普段は決して起こらない出来事=「イニスが仕事も家庭も放ったらかしにして急遽ジャック・ツイストとキャンプに行ってしまう」が起きて、アルマはショックを受けます。
ところがラストでも、イニスは娘のジュニアが結婚すると知って、仕事を休むことにします。これはどういうことなのか。
イニスはこの時、愛する娘から結婚話を聞かされて、「そのカートって奴は、お前のことを愛してるのか」と尋ねます。ジュニアは心底幸せそうな笑顔で、「ええ、彼は私を愛してるわ」とこたえます。この時のふたりの表情から伝わってくるのは、満ち足りた喜びです。イニスはジャックとの思い出を通して、愛がどういうものか、そして愛する人と一緒に暮らせるとしたら、それがどれほど素晴らしく、幸せなことかを知っています。彼は自分のせいで娘に不自由のない少女時代を送らせることができませんでしたが、アルマ・ジュニアは自分自身で愛を見つけて、今は輝かしい表情で彼の前に座っているわけです。イニスは自分の不幸な愛の体験を通してではありますが、娘にも「それ」が訪れ、彼女が幸福で満たされていると知り、父親としての喜びを静かに噛み締めます。彼は父親である自分に祝福されることは、彼女の人生においてかけがえのない喜びなのだと理解したんだろうと思います。つまりイニスが、これを機に変わるとか、もっと柔軟な姿勢を見せ始めるとかいったことではないんですよね。彼は今後も、実直で融通の利かない男のまま生きていくんだろうと思います。
だからこそ、ジュニアが帰った後でジャックと自分のシャツを見た時、彼の眼には涙が浮かんでいます。イニスはひそかに感動したんだと思います。娘が愛という本当の幸せを手に入れ、晴れやかな笑顔を見せてくれたことに。でも彼はああいう人間だから、自分の感情をとやかく分析したりはしません。クローゼットを開けてシャツを見た時、ただ何となく、ジュニアが見つけた愛のよろこびと、自分がかつて確かに見つけたが、失ってしまった愛のよろこびを重ね合わせて、胸を詰まらせたんだろうと思います。

観かえしてみると、つくづく泣ける話だ。この映画の勝因のひとつは、女性たちをしっかりと描いたことですよね。アルマもラリーンも素晴らしいけど、私はキャシーがすごくいいと思います。ラリーンやキャシーは特にですが、彼女たちは一般的に言うととても素敵な女性たちです。登場シーンのラリーンなんて恋をせずにはいられません。それでも男たちの心を捕まえておくことができなかった、彼らを満たすことができなかった、というのが哀しいですよね。

勝因といえばもうひとつは、この映画が決して「社会批判」に向わなかったことも大きかったと思います。それはなぜかといえば、この映画がカウボーイの映画だからです。イニスはタフで、寡黙で、シンプルなことを好む、ステレオタイプのカウボーイです。自分でどうすることもできなければ、ただ耐えるしかない、というのが彼の生き方です。つまりそれは、保守的な社会をなじり、不満をぶつける態度には決して結びつかないものです。ジャックにしたって社会への挑戦者ではありません。彼は確かに存在そのものが「反社会的」ではありましたが、都会のアジテーターのように周囲に考えを改めるよう迫るようなことは決してしなかったし、できなかった。それこそがこの映画が持つ悲劇性であるし、人の心を揺さぶった魅力でもあったんだろうと思います。そういう意味のバランス感覚においては、ひとつの狂いもありません。
そしてイニスが最初から最後まで、どの場面においても「男」であり続けたことも重要だったと思います。イニスはタフで勇ましいカウボーイで、男も惚れる男です。ただ一点、ジャックという男の尻を掘っているという欠点はありますが。だから観る側は考えさせられます。一体何がそんなに間違いだというのか? この欠点のために、イニスのような男がどんどん失っていき、「俺はクズで負け犬だ」と吐き捨てるに至るという不条理は、明らかな「社会批判」を展開するよりもはるかに多くのことを雄弁に語ります。

考えれば考えるほど、深い話です〜。ジャックはイニスの心が変わる時をずっと待ち続け、出会いから二十年経って、そろそろ限界だと感じ始めます。もしかするともっと前から、常に限界を感じていたのかもしれません。イニスはとっくに離婚も済ませてるのに一緒になろうとしない。事態は永遠に変わらないかもしれないという絶望の中で、イニスを愛し続けます。テキサスからはるばるワイオミングまで14時間の長距離ドライブを定期的に、16年間も続けるなんて、どんなに大変だろうか。イニスの離婚が成立して、二人の関係が進展するかもしれないという期待に胸を膨らませて会いに行ったら、「娘と過ごすから帰ってくれ」とあっさり言われるなんて、どんな気分だろう。それでもイニスも苦しんでいると知って、傷ついた彼に近寄って「すまない」と言いながら抱きしめるジャック。二十年間、ずたずたにされてきたのはむしろ彼の方だというのに、それでもまだあんなふうにイニスを抱きしめるわけだ。夫としてはあんまり優秀でもないところなんかも、すごくいいな、ジャック。


深夜だったこともあり、私以外は3人だけ。他の方は三列くらい前に座っていたのでほとんど貸切のような居心地の良さ。一回目は前の列に男性のペア、横にも男性ということで、なんだか集中できなかったんだよな〜これは私個人の問題なのですが。でも、ブロークバックを深夜に男性同士で観にくるなんて素敵です。深夜の3時頃にブロークバックを見終えて運転して帰るというのは、なかなかいいもんです。そしてリラックスして観た四回目が一番よかったです。

以前、邪念に捉われてM&Cを観た時に解釈の大きな間違いをした経験があったんですが、実はBbMも一回目、二回目観た時にピンと来なかった箇所があったんですよ。トレイラーを観すぎてたことによる弊害でした。
前回のBbMに関するレビューはあんまりよくなかった。今回書いたものの方がいい。それを言うなら、映画の感想は数日経つといつも酷いと思うのですが、ここに書く感想は私の備忘録的な性格が強いです。

ところで、原作の英語は難しいという話をしたところ、何箇所か翻訳家の米塚さんが訂正しているとの情報をいただきました。ベルさん、どうもありがとうございます。ちなみに、私が触れた箇所も訂正箇所に含まれていました。
http://www2.gol.com/users/yonezuka/

それから、Keithさんの情報ですが、現在AXNで放送されている(今日もあるらしい)番組で、ジャレッドのバンド30stmがちょこっとだけ特集されてるようです! ジャレたんも出てくるみたいですよ! 『bite plus』という番組で今夜は01:30から放送予定だそうです。Keithさん、ありがとうございます。

コメントもこちらから。私が旅の途中で撮っただいたいが欧米の風景写真が表示されます(地味に交換してます)




WEB拍手のレスはこちらから DiaryINDEX|back|new

RPSのきわどいのはマイピクに上げてます。気軽に申請してください。

変態の本性を晒しているアカ。slash ficレビューなども。Follow me now!

Not His Day (footballのID&PW制同人サイト)
RPS小説のページ。ID&パスがわからなくなったらこちらから再入室をどうぞ
ジン |MAIL |HomePage