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2004年11月29日(月) 観客への失望とレビューその3

どうやら大王映画に徹底的にアディクトしてしまったらしく、
今日は堪えきれず、二度も見てしまった……。朝と深夜に!
そして二度とも泣いてしまいましたが、深夜はヘパイスティオンが
死んだシーンで笑いが起こったので、かなり傷つきました。
ハワイという、以前から嫌いなこの土地柄もあるんですが、
今回ばかりはまいったわ! アメリカ人に! 私はこの国の多様性
が大好きだし、多くの点で(政治や経済だけでなく、文化面でも)
世界をリードしていることに敬意を抱いてきましたが、今回のことで、
「この人たちは、一度自分たちで破壊したものを再建して、まるで
世界を変えたか新しいものを生み出したかのように振舞っている」
という気持ちがいっそう強まりました。
突き詰めていえば、これは彼らに歴史観が欠如しているせいでしょう。
ヨーロッパやアジアのように長い歴史のうえに成り立っている
国々は、混沌を受け入れることに慣れているのかもしれません。

アレクサンダーとヘパイスティオンのシーンでは必ずヒソヒソ話や
笑い声が聞こえます。映画を見たのでわかりますが、これはヨーロッパ
や日本ではありえないことです。彼らは何も笑われるような会話
や行動をとっていません。ましてや、ヘパイスティオンが死ぬシーン
はとても感動的です。でも彼らの一部は頭から受け付けないわけです。
ホモだ、つまりそれは俺たちとは関係のない連中のことだ、感情移入
できない類のことだ、と直ちに心を閉ざしてしまうことが出来るのです。
あるいは、ファンフォーラムにはこの映画をこき下ろす醜い書き込みが
横行しています。彼らの多くは、勇敢で強くてカッコいいアレクサンダー
像を、ホモまみれの泣き虫として映画にされたことに激怒しています。
彼らにとっては、小アジアの人々など顔がなくていいのです。あるいは
最悪の場合、フセインの顔をしていると一層ありがたい、といった
調子です。ようは自分たちのヒーローが世界を征服した、という事実
に酔いしれたいのです。もちろん、こうした人々は大王のファンでなんでも
ありません。彼がいつどんな環境で育ったかなど、どうでもいいのです。
だから、偉大なガウガメラの合戦の映像を見ても、英雄アレクサンダー
が馬に跨り二百人を殺し、敵の大将の首を討ち取るような偉業を成し遂げ
なかったこと、そもそも砂嵐のために阿鼻叫喚の混沌しか伝わらないこと
にいたく腹を立てているというわけです。

映画の出来よりも百倍、そのことに失望しました。
私はひそかに信じていました。たとえホモだろうと宗教や人種が違おうと、
本当にすてきな関係というのは、そんな枠を越えて人を感動させずには
おれないはずだ、と。けれど現実は違ったのです。現実には、彼らは
やっぱり、ホモだというだけで受け入れられず、あざ笑ったというわけ。

あるいは、映画の中でアレクサンダーは征服した土地の民と団結し、
彼らを自分たちギリシア人と同等だ、と言いますが、それに対して
部下たちは「同等だと? 俺たちが征服したこいつらが?
馬鹿を言うな、ギリシア人こそが一番優れているんだぞ!」と激怒します。
これには、オリバーの痛烈な皮肉が込められています。
この映画を「白人のヒーローがアジア人を征服しまくるゾクゾク感一杯の
アクションムービー」と期待していた人々は、自分たちの軽薄さを垣間見る
ことになります。
「オリバー・ストーンの政治的な思想が気に食わない」という理由で
批判している人がいるのは、このためかもしれません。
もちろん、こんな人たちは全員ではありません。

かつてホミサイドのペンブルトンが似たようなことを言ってましたが、
私は自分は白人ではないから、男ではないから、ゲイではないから、
古代の人間ではないから、という理由で相手に共感することが不可能
だなどとは思いません。それどころか、殺人犯の心理、子どもにいたずら
する快感だって、絶対に理解できない自分とはかけ離れた世界のこと、
などとは決して思いません。また、そんな自分の弱さや暗い部分を受け入れ
なければ、私たちと彼らの間の溝はどんどん深まり、まったく相容れない
存在同士となることを思うと、そっちの方がずっと怖いと思います。
だから確かに辛いけれども、そうした自分と向き合っていきたいと
思います。自分にすら正直になれない人生なんざまっぴらです。

でもそれが出来ない人間は、この映画を嫌うはずです。
アレクサンダーという二千年を経てなお英雄視される男の暗く冷たく
弱い部分、そして彼の行いは虐殺であり目的などたいしてありは
しないという事実を受け入れられないなら、この映画は見に行くべきでは
ありません。



ところで、今日はいくつも訂正があるのです!
あー私は何を見ていたんだか! その時はわかってても、あとでこの
日記に書く時点で忘れ去ったりもしていました。
まず、「今夜は傍にいてくれ」はちゃんと劇中にありました。
あんなにハッキリ、振り向いてまで言ってるのに、聞き逃してたというより
聞き流してました。
それと、ヘパがロクサネと大王の婚礼の夜に行うことですが、その時の
台詞は昨日書いたものとはずいぶん違いました。昨日書いたことは、
それより前の、バビロンでの会話部分でした(笑)。このバビロンの
シーンは本当に好き……。「今夜は傍に」もこのシーンです。
二人の会話がどんなに素敵か。
「私はどっちだ、ヘパイスティオン。弱いのか、神聖なのか」と言った
後で、アレクサンダーはヘパイスティオンの頬にそっと片手を添え、
「いいんだ、ひとつ確かなことは、私が信頼しているのはこの世でお前
だけだ。お前が必要だ。私が愛しているのは、お前だ。他の誰でもない」 

これは、その直前にスタテイラを王妃に受け入れることを宣言した
ことを受けています。
スタテイラが、すごくいいんです〜。ちゃんと、ヘパをアレクサンダー
と間違えて、大王に「心配するな、彼もまたアレクサンダーだから」の
台詞を言わせてます。

では婚礼の晩、ヘパが何を話してたかというと、実ははっきり聞こえ
ませんでした。ジャレの美貌としどろもどろの言葉に気を取られて、
どうしても聞けない。ひとつ確かなことは、大王がロクサネを妻に
迎えたのは、王として子どもを授かる必要があった、というのがはっきり
言わないまでも伝わってくるんですが、ヘパは眼にうっすら涙を溜めて、
i wish you a sonと言います。「息子が生まれるといいな」が無難な訳
だと思いますが、ヘパ受寄りの身としては、「お前の子どもが欲しかった
」
くらいやっちゃいたいところ。
自分が男で、どんなに愛し合っていても
子どもだけは作れないことを嘆いているともとれる!
この後で、どちらかがyou are great man..と言うんですが、
アレクサンダーでしょうか。寛大なヘパの気持ちに対しての発言か。
それともヘパの「お前は偉大な男だから」という発言なのか。
どちらもいいけど、前者を希望。

今こうしてタイプしてるだけで、涙が出てくるほどですよー。この映画、
私は好きだ。だってすべてのシーンが好きだもの〜。いや、老いた
プトレミーは除く。何度見ても、老いたプトレミーが若いプトレミーの
延長で描かれていたらと思えて悔しくて悔しくて。もし老プトレミー
があんなにベチャクチャ喋らなければ、私は自信を持ってこの映画を
名作と呼ぶのに。

今日は、頭の中でそろそろシーンの整理がついてきて、ふとした瞬間に
気がつくこともあり(たとえば檻の中のライオンはヘラクレスの象徴で、
大王がヘラクレスの偉業を越えたことを象徴していた)、意外なシーンで
感極まって泣きました。たぶん泣いてるの私だけだったろうな〜。
まずヘパとアレをずーっと見た後で、ロクサネとアレクサンダーの
初夜のシーンを見ると、ロクサネにうっとり感情移入しすぎてしまい、
そうなると悲しくて悲しくて。今はサントラのロクサネのテーマだけで
間違いなく泣けます。

海を越えてやってきた完全無欠の王、アレクサンダー。でも実際は
弱さも優しさも持っている男であり、ヘパイスティオンという部下以外
は眼に入らない男。自分に「子どもが欲しい」という男。最初は屈辱が
彼女を突き動かし、それが蔑みに変わり、最後に感情がたどり着いたのは、
私には憐れみに思えました。ロクサネはアレクサンダーの実態を知り、
力の均衡は崩れ、この男を憐れみながら、結局は愛を見出したのかも
しれない。肉体だけではなく、心も完全に組み敷かれたのかもしれない。
永遠にこの男は手に入らない、と知りながら。
それは、出番がほとんどないバゴアスやスタテイラにも共通しています。

映画でバゴアスは、クレイトス殺害後、腑抜けとなった大王の世話を
焼いてますが、彼の前でヘパイスティオンが大王を叱咤激励します。
バゴアスは、「二人の間には誰も入り込めない」と悟ったはずです。

腐女子的にはカサンドロスも。カサンドロスがロクサネを連れて
きたと考えると、すごくオイシイ。

ここからはかなりネタバレしてますのでご注意を。



もうひとつ、私がどうしても涙を堪えられないのは大王が「故郷へ帰る」
と発言するシーン。コリンの表情にはただただ涙が出ます。
あれは、大王が人間としての限界を悟った瞬間なんですよね。兵士たちの
狂喜乱舞、祝福に胸を焦がしながらも、胸は敗北感でいっぱいなんですよね。
その時、大王の眼に映る幻影には、誰がなんと言おうと、オリバーは
やってくれた、と思わされます。

ヘパイスティオンの死際の会話は胸が潰れます。あのシーンで笑う
奴なんて、やっぱりどうかしてる。自分たちの未来、子どもたちや
家族のこと、世界が変化していくこと、そして二人が一緒に老いること。
私たちは一緒に死ぬんだ、そういう運命のはずだ、と吐き捨てる大王。
神の子ならばなぜ運命を変えられないのか。彼の反応は憐れで
胸を打ちます。
でも何より胸を震わせるのは、ヘパイスティオンの
「私なしじゃ、お前が心配だよ」という台詞です。駄目だ、泣ける!
惜しいのは、「お前は、私自身から、私を救ってくれた」という
素晴らしい台詞の信頼性が低いこと。映画のヘパは、それほどのことは
しれませんー。

今日二度観て、若プトレミーは本当にいいと思った。クレイトスと
クラテロスも。もっとエリオット・コーワンのことは皆言及すべきだ。
エリオットのファンになっちゃいました。
クレイトス役のゲイリー・ストレッチに関しては、

Stretch, in particular, rocked in his big scene. A career is born there,
(抜きん出て、場面をさらったストレッチは、キャリアをスタートさせた)
などと言われています。クレイトスとフィリッポスが映画をさらってる
のは、間違いないです。もちろん、コリンも。
でも目立たないけど、ジョナサンやプトレミーもさらってますよー。
もちろん、ヘパも賞賛されています。

ああもう寝なくては。

コメントもこちらから。私が旅の途中で撮っただいたいが欧米の風景写真が表示されます(地味に交換してます)




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