メールの返事と広告の仕事をしつつ、夜はアレクサンダーの本を 読んだりしてますが、宦官バゴアスの登場と、彼とアレクサンダーの 関係のくだりを読んで、マケドニアの男たち、とりわけヘファイスティオン が不憫で不憫でならなくなりました。萌えながら悶えていましたー。 (今後しばらく英語表記を心がけます)。 宦官とはご存知、去勢され宮廷に使えた男たちのことを言いますが、 古代ギリシアやペルシアの時代から登場するのですね。ペルシアを征服した アレクサンダー、先代の王の支持者たちに降服を求めるのですが、 この時、降服してきた武将の一人が、美しい宦官を連れていたそう です。これがギリシア語も堪能なバイリンガルのバゴアスなのですが、 その容姿は美しく動作も優雅だったそうで、アレクサンダーはすっかり 恋に落ちてしまいます。彼はバゴアスのために、このペルシア人たちに 恩赦を与えることになるのですが、この出会い以来、 大王はバゴアスを寵愛し自分の傍に置いたそうです。私は今、 ロビン・レイン・フォックスの本を読んでいるのですが、作者自身が 「このバゴアスをヘファイスティオンがどう思っていたか、我々は 想像することしか出来ない」と書いています。 バゴアスは王が死ぬまで傍にいたそうなんですが、ほんとにこの美しい 男とヘファイスティオンの関係が気になります。ヘファイスティオンは、 一体彫刻が残っていますがとりわけ美貌だったということはないようで、 アレクサンダーが彼を愛したのはその容貌のためではなかったかもしれ ない、と言われています。そんなあたりがまた萌えて仕方ない。 なんてアレクサンダーとヘファエスティオンは萌えなんだろう。 この萌えの裏側にはこのような複雑な背景があります。 昨日の日記にも書いた通り、アレクサンダーはダレイオス王が死んだ 後、ペルシアを王としておさめることになります。有名な彼の理性の成せる業 というべきか、彼自身はペルシアを支配するために、やすやすと ペルシアの文化や風習に染まってゆきます。ペルシアの金銀財宝は 莫大で、宮廷も洗練されており、ペルシア統治という確固たる目的の ためとはいえ、大王はさぞイイ気分だったことでしょう。 しかし、もとはペルシアの征服はギリシア人にとって悲願でした。 クセルクセスというかつてのペルシア王がギリシアを征服し、ギリシア人 の神を冒涜するなどしたことは、ギリシアの父から子へ、子から孫へと 代々語り継がれていました。ギリシア同盟軍やマケドニアの男たちの 戦意を鼓舞し、彼らを率いてきたアレクサンダーは、自分の野望のために 巧みにそうしたギリシア人の気持ちを利用しました(彼自身も ペルシア征服はギリシア人の報復行為と主張して疑いませんでした)。 実際、ペルシアの国都スサでの虐殺や掠奪は凄くて、大王自身が 「こらこら、殺しすぎだ」と部下たちを諌めたほどだったとか。 しかし、政治手腕にも長けた大王は、この憎きペルシアをうまいこと 支配するためには、ペルシア人の協力は不可欠だと知っていたので、 このあとすぐにペルシア人たちを様々な形で重用します。 たとえば彼はペルシア語を話せなかったので、バイリンガルな者を大事 にしました。ペルシアの宮廷人や貴族、武将、政治家とうまくやるため に、やがてペルシアの衣装を見に着けていきます。 でも、このペルシアかぶれ、ペルシア贔屓はギリシア人にとっては 大いなる屈辱でした。とりわけ、アレクサンダーの出身国であり、 郷土愛が深いマケドニアの人間は、常々ギリシアの陣営内でも 地位が高く優位を保ってたので(マケドニアがギリシアの他の地域を 支配し、ギリシア同盟軍の中心となっていた)、王が洗練された者たち (ペルシア)に傾倒していくのは、たまらなかったに違いないんだ〜。 マケドニア人は、ギリシアの中でも田舎者とされてて、戦は強いが、 都会的でツンとしたアテネ人なんかには見縊られていたようです。 更に補足すると、大王とその幼馴染たちはというと、典型的なマケドニア人 とは違いました。彼らは貴族出身で、またまた複雑な理由で大王の父 フィリッポス二世の人質として宮廷で小姓を務めていました。 アテネやペルシアの文化人を家庭教師に迎え、当時の最先端に触れていた ので、王子をはじめ、マケドニアの中でも優雅で洗練された集団だったそうです。 でも、やっぱり彼らをはぐくんだのは、郷土愛と同胞との絆を重んずる マケドニアのホモホモした大地。生まれは隠せませぬ。 まあそんなわけで、大王のペルシアかぶれはマケドニアンにとっては 面白くないわけですが、さらにさらに、ペルシアと決定的に違う風習が 彼らをサディスティックにいたぶります。 というのは、人類皆兄弟、人間は皆同等だという思想を重んじた ギリシア人は、たとえ王といえど、跪いて手にキスをするよーなことは しませんでした。マケドニア式に王と挨拶を交わすなら、彼らは王の前に 立ち、王と肩を叩きあうといった行動に出たといいます。アレクサンダー にとって、彼の騎馬仲間(ヘタイロイ)は心を許せる同志だったはずです。 ところがペルシアにくるとこれが一変。ペルシア人は王を神の申し子と 信じ、最も高位の者でさえ滅多に王の顔を拝むことは出来なかったそうです。 王には様々な特権が与えられており、王と接触できるのはほんの一握りの 側近だけでした。この側近たちは、王がもし死ねば火葬場の周りで 殺され、共に埋められたそうです。たぶんこれを名誉とし死を受け入れる ことは、そのころにはたいした問題ではない境地にまで達していたことでしょう……。 「跪拝の礼」といって、王の足元に跪いて額を床に擦り付けるという 行い自体、許されている者も少なかったのです。 そこでだ、この長たらしい説明が何を意味しているかというと、 バゴアスの登場ですよ。王がうっとりして思わず自分のものにしたいと いう欲望に駆られるほどの美貌、洗練された知的な宮廷人ですよ。 でも何よりも、バゴアスはこうした美質以上に、ギリシア人にはどうしても 真似の出来ない特技を備えていたわけです。 まずはペルシア語。もともとアレクサンダーの配下にもペルシア語が 堪能なギリシア人がいましたが、バゴアスは宮廷人として言語に留まらず ペルシアの風習や文化を熟知していました。彼のような人物の協力は 世界征服を目指す大王には欠かせない存在でした(とはいえ、バゴアス が愛されたのは単純に美貌ゆえだろう、とも言われています)。 そして最強の切り札はペルシア風の王の扱い方を心得ていたことです。 バゴアスはアレクサンダーに対し跪き、彼を敬い、人間が出来うる限りの 従属の意を表す行動をとったことでしょう(笑)! 大王は美人ちゃんにフェラチオ以外でも跪いて貰えてイイ気分です(死)。 フェラチオして貰ってる間にイリアス読めたりしたらもっとイイ気分です。 マケドニアの猛者クレイトスあたりはさぞかしチンなしバゴアスを 絞め殺したい気分だったでしょう。プトレマイオスあたりは 毒殺計画くらい練ってたかもしれません。クラテロスはヘファイスティオン に「お前は気に食わなかったが、バゴアスよかいい」とか 言ったかもしれません。 さて、ヘファイスティオンはどうか。アレクサンダーがバゴアスと 出会った当時、きっと彼はまだガウガメラの戦で受けた腕の槍傷に 悩まされていたか、少なくとも完治していくばくも経っていなかった かと思います。これはカッリステネスなどが書き 残してることを思えば、そうとう深い傷だったはずです。そこで私が 最初に思ったことは、しばらく大王とのセックスはお預けだなと いうことでした。そしてまた思ったことはといえば、バゴアスと出会った 頃のアレクサンダー、サカッてたに違いなく。 大怪我をしてる間に、大王に自分より美人な男にうつつを抜かされた ヘファイスティオン。一時の気の迷いかと思いきや、どうやらそうとう のめりこんでるらしい……バゴアスへの寵愛は増すばかり。それもその はず、バゴアスの王へのへつらい方といったら、まさにペルシア人! これまた前の日記に書きましたが、個人としてもヘファイスティオンは 大王を崇拝し、常に大王の味方でした。でも、10代の前半に出会って以来の 幼馴染だったからこそ、媚び諂うことは出来なかったはず。それは二人 の関係を根底から覆す危険性を孕んでいます。ヘファイスティオン にしてみれば、王との接触の機会が減り、その間バゴアスが 王の臥所で添寝しているとなれば気が気ではなかったはず! でも出来ない……この苦悩を推し量るだけでもう胸も珍子もズキズキ。 「跪くバゴアスの隣に、同じように跪けば大王はまた私を見てくれる だろうか」「…出来ない。あの男の真似をして心変わりした王に縋りつく ことなど」なんて堂々巡りが彼の頭の中で展開されてたらどうしましょう! そんなヘファイスティオンに、マケドニアの同志クレイトスや プトレマイオスが、「お前にしか大王の乱心をとめることは出来ない。 どうかヘファイスティオン、古参の仲間が嘆いていると、 お前から大王に訴えてくれ。滑稽なペルシア人の真似事はもうやめて くれと」と袖を掴んで頼んだというようなことは、恐らく現実に起きた ことでしょう。…一説には、幼い頃から王(王子)の寵愛を受ける彼は、 仲間たちから嫉妬され孤独だった、とも言われています。こんな時ばかり 板ばさみになるヘファイスティオン。大王の存在は彼にとって 「大王>すべてのもの」、てな感じだけど、自分や仲間を差し置いて、 バゴアスとペルシアを取ったかのような大王に、あえて跪くのは、 ほとんどマゾヒズムの境地です。この時期の ヘファイスティオンの境地は考えれば考えるほどドラマティックです…。 いやきっと…何事も起きてないから、彼は何にせよ大王への愛を 優先したんでしょうが。 ロビン・レイン・フォックスが書いていますが、アレクサンドロスに 関するもっとも重要な部分は、知る術がないそうです。というのも彼に もっとも近しい者たちは、彼が「書かれたくない」と思っていた ようなことについては、まったく書き残していないのだそうです。 それゆえ、ヘファイスティオンやバゴアスという大王の人間性を 紐解く上で一番の手がかりとなりそうな人物は、いまだその多くが 推測の域を出ないのだそうです。 ところで、チンなしバゴアスをヘパイスティオンをないがしろにして 愛したアレクサンダー、チンがないとはいえやっぱ男が好きか。 このバゴアスですが、どうせ映画に出ないだろうと思ったら、 あ、いる! しかもまったく無名の役者のようです…。 端役だろうけど、なんだか楽しみになってきました。
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