今日やっとこれを。 「新たな影」は衝撃です。しかも、面白いです。 昨日書いたとおり、これはトールキンがLotRの続編として 書き出し、途中で放棄し、永遠に葬り去られたものです。 最初の書き出しは、ベレゴンドの息子にして、ベアギルの 弟、ボーラスの憂いからはじまります。時代はバラド・ドゥア 崩壊から105年後。人間の心は移ろいやすいもの。既に 放漫がまかり通る世になりはじめています。統治者は エレスサール王の息子エルダリオン。 ボーラスは100歳近い老齢。指輪戦争の無残さを 戒めとする世代の人々は世を去り、ボーラスは数少ない 戦争経験者です。 彼はエミン・アルネンの大河を臨む丘の中腹に建つ、 灰色の小さな家で暮らしており、息子ベレラッチ の友人であるサエロン(微妙な名前だ)と、庭のあずま屋 の下に座って話しています。 その中では彼が木や花の世話を愛する分別のある老人だと いうことがわかりますが、一方、サエロンという青年は、 聞く耳半分な薄情な(語弊ありかも)若者だということが 伝わってきます。ボーラスは、最近は根の深いところを 邪悪が流れている気がする、と話します。サエロンは、 万事順調。憂うことはないじゃないですか、そんな汚れた 木がどこにありますか。あなたの庭ですか、と言います。 若者の嘲りを敏感に感じ、ボーラスは用心深く否定します。 それからふたりの会話は、過去のことにさかのぼります。 子供の頃、サエロンは果実園に忍び込んでボーラスにひどく 叱られました、しかしそれは怒りからではなく、ボーラスは 少年だったサエロンを改心させる目的からでした。 というのも、サエロンは果物を食べるために盗んだのではなく、 まだ熟れていない果物を投げたり潰したりするために盗んで いたからでした。ボーラスは少年を家へ入れて諭しました。 「空腹から果実を盗んでしまうというのは男の子にはよく あることだ。けれど、まだ熟していない果実を投げたり 潰したりする目的で盗むのは、オークじみたことだぞ!」 回想するふたりですが、サエロンはあの時大きな屈辱を 感じたのだと告白します。彼は言います。 「それまでオークのことや、奴らがしたことを私は お話の中で聞いてはいましたが、何の興味も 持ちませんでした。けれど、あの一件以来、惨めな こそ泥は卒業しても、オークのことは頭を去りません でした。私の中で憎しみは増し、甘い報復のことも 考えました。よく友とオークの真似をして遊びましたが、 私たちは時々考えたものです。もし結託してあの庭の木を 切り倒してやれば、彼はきっとオークが本当に戻ってきたと 思うに違いない、と」 サエロンは話し終えると、笑いました。 ボーラスは驚きます。これまでも見縊られているような気が することはありましたが、その裏づけとなる言葉を聴かされたのです。 ボーラスは用心深く道理を説きますが、サエロンは聞きません。 彼は人間は野蛮であり、あなたの意見は高慢だと言います。 「木に人間がオークより善良だなどということがわかると 思いますか?」 話はどんどん不穏な方向へ流れてゆきます。ボーラスは もうこの話は打ち切りにしようと言いますが、サエロンは 今始まったばかりですよと言い募ります。 そして彼は潜めた声で言うのです。 「あなたはご存知ですか、ヘルモールという名を」 ボーラスは畏れに打たれ硬直します。彼に心当たり があることを見取りボーラスはある陰謀が進行している ことを匂わせます。 「ゴンドール全体を敵に回すにとり、数はまだ多くはない。 けれども数は増している。そのすべてが、エレスサール王崩御 の後に賛同したわけではない。そしていまや畏れる者はほとんど いない」 召集があるという恐ろしい話を聞き、ボーラスは「一体何の 召集だ? お前はそれに加担するつもりなのか」と尋ねます。 サエロンは言います。 「もしもっと知りたいのなら、今夜私と出かけましょう。 東の門の裏手のあなたの家で待っていますが、少なくとも 真っ暗になる前に私は出発しますから、あとはあなたの 意思次第です。私も、私の連れも皆、黒い衣装を身に纏って いるでしょう」 サエロンはそう言うと立ち去ります。 ボーラスは深慮に沈みます。彼の息子ベレラッチと サエロンは昔親しい仲でしたが、最近は滅多に会いません。 というのも、ベレラッチはペラルギア近くで海軍に所属して おり、ほとんど帰って来ません。ボーラスは息子に伝え聞いた ぺラルギアの話をサエロンに話したことを思い出しました。 ある不吉な出来事を。 エシアで、数人の水夫と艦隊の船が忽然と消えたというのです。 「彼らは気晴らしに出かけて、無用心のため溺れ死んだのだろう。 当然の報いだ。魚たちなら、泳ぎの苦手な者にとっては西岸 が危険だと知っているのに」 上官はそう言っていたとベレラッチは話していました。 ボーラスはサエロンに、南の方で仕事をしていてそのこと について何か聞いていないかと尋ねました。サエロンは言いました。 「ええ、聞いています。その上官の言い分もわからないでは ないが、彼らは泳ぎが苦手ではありませんでしたよ。それに 長いことあの岸辺には嵐が来ていません」 この意味ありげな箇所は結局は決着をみないので割愛しておきます。 ボーラスは黒いローブを着て約束した場所で待つことを 決心します。 彼がドアを開けると、中は真っ暗でしんと静まり返っています。 死の静寂です。彼は奇妙に感じながらも踏み込みます。呼びますが 返事はありません。家内に伸びる狭い廊下を進んでゆくと、 まるで暗闇が彼を包み込むようです。夕暮れの光も差し込んで いません。 突然、彼は臭いを嗅ぎつけました。彼が嗅ぎつけたのは かつての邪悪でした。そして、彼はそれがなんであるのか知って いたのです。 これが「新たな影」の概要であり、終わり方です。 ボーラスに何が迫っていたのかは永遠にわからなく なってしまいました。 随分省略しましたが、凄く興味深いことは確かです。 私としては内容もさることながら、ベレゴンドの息子、孫 という時点で震えるものがありますが。 他にも、ボーラスは大河の向こうの首都には 滅多に行かなくなっているという描写や、 平和ボケするご時世に、子供たちはオークごっこを して遊んでいるという面白い描写も。 トールキンは、孫のベレラッチを、ボーラスの 兄の名をとりベアギルにしようかとも思ったらしいです。 それだとまた嬉しいのですが、いずれにせよ没したか(笑)。 なんというかー、ここでもまたファラ様を思うとー。 眺めのよいエミン・アルネンの丘で大好きな近衛隊長と 寄り添ったのだわ。住まいはどうでしょ。お城の場合 中世の時代は城壁内で近衛隊長は暮らしたでしょうが、 エミン・アルネンって城建ってるんですか。後に建てた? そもそも近衛隊長ってずっと主君にへばりついてる ものなのか、城下町の自宅に帰宅するもんか、調べて みよう(笑)。 なんかとりとめもないな。
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